「CM認知を押し上げるタレント・キャラクターのチカラ」後編 〜クリエイティブカルテのご紹介vol.8 蓄積データ分析篇〜
こんにちは。
前編では大人になったちびまる子ちゃんの実写化されたダイハツミラトコット「狭い道編」を取り上げて、この国民的キャラクターの広告認知を押し上げるパワーの凄さをご紹介しました。では、一般的にタレントやキャラクターの印象の強さは、どのくらい広告認知を高めるチカラがあるのでしょうか。
後編では、これまでに蓄積した調査データを動員して定量化を試みてみました。
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クリエイティブカルテの評価指標について
クリエイティブカルテRは2016年4月から開始した弊社の自主調査(オムニバス)です。弊社にはCMカルテRという1980年代から続く留置質問紙法を使ったCM調査がありますが、クリエイティブカルテRは対象者に動画を視聴して評価いただく点が大きな違いです。これまでに1600素材以上の評価データが蓄積されています。
評価レポートはざっくり下記のような構成になっています。
図表1.評価レポートのレイアウト構成
大きくは3つに分かれ、広告到達状況、イメージ評価、総合評価があります。イメージ評価の中に印象要素としてタレント・キャラクターを含む6項目、表現の受容性評価として11項目、メッセージの受容性として6項目聴取しています。
広告認知へのタレント・キャラクターの印象の影響度を把握するには、比較対象が必要です。そこで、イメージ評価項目を利用することにしました。もちろん、広告認知の影響を推し量るのに出稿量は絶対外せない要因なので、あわせて分析します。
分析手段について
広告認知に対するイメージ評価項目の影響度を把握するには、一般的に回帰分析の手法がとられます。しかし、イメージ項目の間には普通、相関の高い項目があります。これが原因で影響を喰い合って、本来プラスの効果であるはずなのにマイナスになってしまうことがあるので、分析にはひと工夫必要です。筆者はこのような場合の対処として、これまで実務では4つくらいの方法をとってきました。
①ステップワイズ回帰
統計基準に従い変数選択しながら回帰を繰り返し、目的変数に影響のある変数だけを残すやり方。
②主成分回帰
相関のない主要な成分にデータ縮約してから回帰を行い、その結果を項目の影響度に戻すやり方。
③正則化回帰
影響度を見積もる際、過度にならないよう罰則を設けて推定するやり方。
④アンサンブル学習
項目やレコードをサンプリングしてモデルを多数作り、合議制によって予測値を決めるやり方。
③や④は統計モデルというより機械学習の手法に位置づけられ、近年は①や②の方法は廃れている印象があります。今回は④の方法の中で人気の高いランダムフォレストという手法で、広告認知へのタレント・キャラクターの印象の影響の大きさを量りたいと思います。この手法をとると、(場合によって)項目間の非線形な関係性が観察できます。つまり、実務的に興味を引く結果が得られるからです。
ランダムフォレストの手法説明については、現在非常に分かりやすく説明されたサイトが豊富にあるので省きます。
タレント・キャラクターの重要度(分析結果)
ランダムフォレストは統計モデルのように項目の影響度にあたる係数を得ることはできませんが、次のようなやり方で目的変数に対する重要度を推し量る仕組みがあります。それは、データから重要度を測りたい項目のレコードをランダムに並べ替えることで、元々のモデルの予測精度からどのくらい悪くなったかを計算して定義するというものです。(つまり、『予測値の当てはまりが悪くなるということは、その項目が予測に重要だからだ。』という考えです。)
その方法で各イメージ評価項目の重要度を把握したものが下記になります。
図表2.広告認知率の予測に対する重要度
比較項目の中でタレントやキャラクターの印象度は、広告認知率を予測する為にGRPの次に影響のある項目として上がっていて、とても重要なのだと分かります。上位には他にセリフ・ナレーションや話の流れ・ストーリーなど『印象要素』が並んでいます。これはどういうイメージにせよ何かフックになる要素が認知を高めるには大事で、その中でも特にタレントやキャラクターは注目を引くファクターだということでしょう。
タレント・キャラクターの印象度が広告認知に与える影響の定量化
では具体的に、タレント・キャラクターの印象度がどのくらい広告認知率に影響があるのか、シミュレーションによって把握してみました。下記は、タレント・キャラクターの印象度を0〜100%で変化させた場合の広告認知率の予測値の変化をGRPの程度別に見たものです。(その他の項目は平均値を代入しています。)
図表3.広告認知率のシミュレーション
(タレント・キャラクター印象度の実測値の分布)
タレント・キャラクターの印象度は20%を超えた辺りから広告認知に効果を表し始めるようです。そして、80%辺りまで効果が表れています。そしてGRPが少ない場合、特にタレント・キャラクターのチカラが広告認知率に効果的のようです。例えば出稿が250GRPのとき、印象度が20%で広告認知率の予測値は24.6%、80%では予測値は37.2%になり、実に12〜13%も広告認知率を押し上げます。GRPが増えるとその分、広告認知率は高くなり、タレント・キャラクターのチカラの恩恵は見えづらくなります。
以上、タレントやキャラクターの印象度がCMの認知効率に大きな影響を持っていることをお伝えしました。タレントやキャラクターばかりが目立つとそれはそれで、商品の魅力の伝達に失敗してしまいますが、視聴者に気づかれてこそCMは効果を発揮します。
前編で取り上げたミラトコットのCMのタレント・キャラクター印象度は70%と非常に高いスコアでした。更に、このCMの商品・サービスの印象度はノーム値より高い位置にありました(前編図表2を参照)。まる子だけが目立つことなく、おっちょこちょいでドジなまる子が狭い道で対向車をかわしている場面を描くことで、商品の印象も残すことに成功していると言えます。つまり、タレントやキャラクターの魅力と商品をうまく関係付けできると、その広告は総合的に高い評価に繋がることでしょう。
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