SDGs広告に必要な視点と消費者の心をつかむ伝え方【Part2】SDGsの取り組みを広告する際のクリエイティブのポイント
【全体の趣旨】
・今後、持続可能な社会の実現に向かい、消費市場に影響のある社会規範の形成が見込まれる。
よって、企業は積極的にSDGsの取り組みをアピールし、社会課題に関係づけることが重要になる。
・SDGs広告には社会課題と企業を関係づける社会的な誓約、啓発、提唱などの役割がある。
・SDGs広告の役割を明確に定めることは、表現力を規定し、企業への支持を高める要因となる。
普段の広告とは異なる、SDGs広告が担う3つの役割
松尾 前回の続きとして、企業がSDGsの取り組みを広告する際のクリエイティブのポイントを教えてください。一体、普段の広告と何が異なるのでしょうか。
青島 普段の広告では、「広告」が「ブランド」に機能します。一方、企業のSDGs広告は、「社会貢献」を伝えることが重要です。つまり、「広告」と「ブランド」の間に「社会貢献」が入ります(図表1)。消費者と「社会課題に関する価値観」を共有し、長期的な関係性を築くことが目標になる広告ですね。
青島 例えば、アサヒスーパードライの広告には、いつも"挑戦精神"という高い精神価値を感じますが、これは社会課題とは関係づけられていないですよね。
松尾 普段の広告の役割の中には、「消費者の心の中にブランドを育てる」という役割があると思いますが、企業のSDGs広告も役割は同じなのでしょうか。
青島 企業のSDGs広告においても、最終的な目標にはブランドへの貢献が求められます。ただし、普段の広告とは異なる3つの役割があると思います。それは、社会的な誓約、啓発、提唱です。具体的には下記のようなメッセージでしょうか(図表2)。
松尾 SDGs広告の役割を明確にすると、CMや動画制作の時の指針になりそうですね。それぞれ、どんなクリエイティブのポイントがあるでしょうか。
SDGs広告クリエイティブのポイント
①「社会的な誓約」のポイント
青島 社会的な誓約の場合は、「企業がSDGsに真剣に取り組んでいることが伝わるようにする」ということです。ポイントをあげると、下記のようなことです。
松尾 出演者の魅力は、商品やサービスが対象の場合には自然とプラスに働きやすいですが、SDGs広告の場合は異なる可能性があるのですね。
青島 そうですね。社会課題が対象の場合、企業の誓約が伝わらないと、企業が深刻な問題を利用しようとしている感じになるので注意が必要です。また、いくら出演者が描こうとしている社会的なテーマに合っていても、企業と社会的なテーマに関連がみられなければ、その出演者が約束しているだけに見えてしまいます。そのため、企業が約束していることが明確に伝わることが重要です。
②「社会的な啓発」のポイント
松尾 社会的な啓発の場合はどうでしょうか。
青島 社会的な啓発の場合は、「視聴者に責任感や義務感を誘発させようとしない」ことでしょうか。ポイントをあげると、下記のようなことです。
松尾 啓発させようとする場合、出来る限り宣伝臭さを除きたいと考えてしまい、公共広告のようなアプローチが好まれそうです。
青島 宣伝臭が強いと「企業の自己満足」を高めてしまうかもしれませんが、全く宣伝臭をさせないのも逆効果です。例えばACジャパンは公共の意識を高めることを目的にしているので、その訴求も受け入れられやすい。しかし、視聴者は企業の広告であると認識するので、広告の要素がないと違和感を覚え、疑ってみてしまうようです。
松尾 啓発の場合、SDGsの意識を高めるメッセージは反発がありそうで怖い気もします。だから、暗示的な表現が好まれるのでしょうか。
青島 SDGsを感じさせる映像表現で印象的・抽象的に呼びかけるCMは散見されますね。しかしその場合、視聴者はその内容を理解できないか、具体的なメッセージがない分、感情だけ刺激されている感じがして、反発を受けやすいです。
松尾 私の好きなファッションのCMはそういう表現が多いのですが、普段のCMと異なるようですね。
青島 スタイリッシュな表現は、現実との乖離から不自然さや誇張を感じさせ、ネガ反応を招く場合があります。啓発的なメッセージを発しながら、「あんなおしゃれをしてみたい」とか、欲望を喚起される感じがして違和感があるのかもしれません。
松尾 だから、理性的なアプローチもしっかり入れて、具体的なメッセージを発し、アクションを描いた方がよいのですね。
③「社会的な提唱」のポイント
青島 社会的な提唱の場合は、「提唱することが解決できるテーマの必要性を説く」ことです。ポイントをあげると、下記のようなことです。
青島 提唱すること(技術など)の分かりやすさが大事で、消費者が身近に感じる事象に例えられると良いと思います。また、様々な人の賛同を得るには、客観的なデータや事実を提示すると良いでしょう。
松尾 企業のSDGs広告はオールターゲットで訴求されるケースが多いですね。様々な考え方がある中で賛同を得るには、客観的な訴求が好ましいのですね。情熱的なメッセージを送り過ぎないというのも同様ですね。楽観的な未来を描くCMも散見されますが、根拠が感じられなかった場合、否定的に感じる人が必ずいますよね。
青島 まさにその通りです。あと、大企業ほど社会貢献するのは当たり前という意識があるので、自信たっぷりに語られると自画自賛に思われてしまいがちです。
松尾 有名企業ほど注意した方がいいポイントですね。「リスクや問題点を具体的に指摘し解消できると訴求する」というポイントは、パート1で話したSoup Stock Tokyoの事例で言えば、赤ちゃん連れを受け入れることで発生する問題点を指摘し、それは解消できると訴求するということですね。
青島 はい。SDGsの観点では、まだ理解されていないことが多く、皆が意外に思う問題点を指摘できると、「なるほど」と感嘆してもらえることは沢山あるように思います。
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