パーソナルデータを適正に活用する世の中になることへの取り組み
欧州で「GDPR」(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)が、2018年5月25日に施行されました。GDPRは欧州経済地域内のすべての個人(市民と居住者)に関連する個人情報を保護することを目的に、情報の保護と権利保護、取り扱いの保護、法の整備を行う規則です。
日本にいると自分自身の生活にどのような関係があるのかは、ピンと来ないのではないかと思います。欧州経済地域内の住民の個人情報保護が目的ですが、グローバル企業であるGoogleやFacebook、Twitter社などは共通したルールで対応するために、このGDPRをベースに対応していくことを進めています。
最近、グローバルなインターネットサービスを利用していると、下記のような画面が表示された経験をされた方もいらっしゃるかと思います。個人情報保護に関する法整備とあわせて、個人に対してプライバシーの取り扱いを改定したり、サービス提供者は預かった個人情報の取り扱い方を、詳細に設定するようにユーザーに求めたりといったことが行われています。インターネット上のサービスにおいて、個人情報は、厳重に管理され、本人の許可なく、プライバシーポリシーや、利用規約で定義した目的以外への利用は禁止されています。
パーソナルデータ利活用の兆し
パーソナルデータは、個人情報と同じものと思われがちですが、大まかには個人識別性のない情報も含まれることが、個人情報との違いです。インターネットの閲覧履歴や、インターネットを利用して何かを購入した履歴、位置情報など、匿名化されたデジタルデータもパーソナルデータです。一方、個人情報は、総務省によると「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により個人を識別できるもの」と定義されています。
私たち調査会社は、調査にお答え頂く方々に、個人の情報を正しく取り扱うことをお伝えし、個人が特定できない形式で、アンケート結果を集計して、調査結果という形でお客さまに提供しています。
しかしながら、前述のように、個人情報の法規制は厳しくなる一方、サービス利用の中で、パーソナルデータをサービス提供者に預けることで、サービス対価を受けることが一般的になってきています。たとえば、あるサービスにメールアドレスなどを登録することで他のサービスと連携できたり、性別や年齢のデータを預けることで自分にあったサービスが受けられたり、そもそもパーソナルデータを渡すことでサービスを無料で利用できたりします。
皆さんも、身に覚えがありませんか。たとえば、無料で利用できるサービスは、GoogleやFacebookがその代表例です。
現代において、サービスを受けるには、金銭という対価を支払うか、パーソナルデータを対価として支払うかの大きく二択になってきていると言われます。
ただし、パーソナルデータを提供することで自分自身へのサービスが無料になったり、より良くなることに対して、納得できることが大事です。
今後サービスを享受する個人は、パーソナルデータをサービス提供者に預けることが増えていくことが想定されます。
この際に、預けたパーソナルデータが、他のサービス提供者に渡ることも出てきます。たとえば、広告配信事業社やリコメンドサービスの提供社がわかりやすい一例かもしれません。(下図はある生活者の一日で、インターネットを利用する中で、パーソナルデータを外部に提供されている例です)
しかしながら、パーソナルデータの利活用が正しく進むためには、個人一人ひとりが、自身のパーソナルデータを正しく管理していく環境やツールが必要であり、更には管理しているパーソナルデータを、サービス利用者が適切に利用できる環境が合わせて整備される必要があります。
これらはパーソナルセキュリティや、情報銀行と言われる仕組みで、政府や多くの事業社が研究を続けています。
そういった背景から、当社もさまざまな視点でパーソナルデータ利活用の研究を行うべく、今年5月23日に「株式会社DataSign」(以下、DataSign社)と共同研究を実施することをプレスリリースいたしました。
DataSign社のPDSサービス:「paspit」について
目標は、個人向け情報管理ツールのアプリケーションプラットフォーム
DataSign社が提供する「paspit」は、個人起点で自らのパーソナルデータを一元管理でき、企業は必要なデータを安心して収集できるサービスを開発しています。このサービスは、「paspit」「DataSignFE」(※)といったアプリケーションを利用したプラットフォームにて提供されます(下図は同社が目指すパーソナルデータのエコシステム)。
現在、パーソナルデータは、企業ごとに個別に収集され、企業間で行動履歴や購買履歴データの連携が行われていますが、この過程に生活者は主体的に関わることができていません。生活者はPDSを利用することで、安心して各企業のサービスを利用できるようになり、PDSに蓄積される行動履歴・購買履歴等のパーソナルデータを自分で管理することで、どのようなデータがどこに流れているか把握できるようになります。企業がパーソナルデータを利用したいときには、企業側から生活者にオファーを出し、生活者がメリットを把握した上でデータを提供し、企業はそれらのデータを活用することが可能になります。
研究テーマ① 調査視点での活用
調査会社から見て、一般の方々がパーソナルデータを提供できるプラットフォームが構築された上で、クライアントの企業がアンケートの調査結果だけでなく、個人が提供しているパーソナルデータを利活用できることは、有益であると考えます。
調査会社は、アンケートに回答して頂けるモニターを募集し、適切に管理する業務が義務付けられていますが、このプラットフォームはそれらの業務代行をしてくれるとも言えます。
下図のように現在の調査方法が、将来的に集められるデータ、および許諾方法が変わる可能性について、利活用の方法を研究していくことを目的としています。
研究テーマ② データマーケット視点での活用
個人と企業、および企業と企業のデータマーケットができることも想定されます。パーソナルデータを預けることで個人が対価を得ることが可能となり、またデータを保有する企業が同マーケットを介して、個人やサービス会社へデータを提供できる可能性もあると考えています。
下図は、個人がパーソナルデータを預けることで、なんらかのインセンティブを受けつつ、企業はその情報を販売・提供、もしくは他データプロバイダとの組み合わせで、サービスを開発していく将来像を図にしました。
一度、自分のインターネット利用において、どのような情報が事業社に提供されているか。また、その結果、得られている対価(サービス)について、把握しようとしてみるのも今後のデータマーケットへの展望を持つ一助となるかもしれません。