「Piggy Back」と 「Cookie Sync」、その特徴と違いって何?今さら聞けない!基本の『キ』
日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。
皆さんも、毎日のように各社から発信されるニュースで最新情報をキャッチアップしたり、実務上デジタルマーケティングに関わることも多いかと思います。
このコーナーでは、皆さんがニュースや業務で触れるデジタルマーケティングに関する多くのサービスで頻繁に目にする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ない「単語」や「仕組み」について、初心者にもわかりやすく説明していきます。
記事に関連するサービスはこちら 【VR LINC】 |
※本記事をお読みいただく前に※
〜以下の単語が分からない!という方はコチラを先にお読みいただくことをオススメします〜
■Cookieとは?
■タグとは?
■1st party cookie と3rd party cookieの違い
そもそも、データ連携とは
当社では、「VR LINC」というソリューションサービスを提供しております。以下が、このサービスを一言で表現したものです。
「データ連携」もしくは「結合」「Sync(シンク)」といったワードは、ここ数年で急激に各所から聞こえるようになったフレーズです。「連携」という単語から想像できるように、「データ連携」は一般的に2つ以上のデータのかたまりを"くっつける"ことを意味します。 この"くっつける"際にポイントとなるのが、「のりしろ」を決めることです。ここで言うのりしろとは、2つ以上あるデータをくっつけるために共通で存在するものをさします。
たとえば下記の例でいうと、ビデオリサーチのモニター会員データベースと、全国の特産フルーツを専門で取り扱う通販サイト「みかんショッピング」の会員データベースの2つのデータベースに共通して存在する「risakoVR@video.co.jp」(架空のアドレスです)というメールアドレスは、りさ子さんという女性固有のものです。このメールアドレスを「のりしろ」とし、2つのデータベースの情報を"くっつける"ことで、りさ子さんに関する情報量を増やすことができます。
「のりしろ」によく使われるもの
前述の例では「メールアドレス」をのりしろとして2つのデータベースを"連携"させました。2つのDB上ではそれぞれ同意を得たうえで「メールアドレス」を取得しているはずですが、これを連携させて2つのDBのデータを照合する事は、実際は改めてりさ子さん本人への同意が必要となるため、容易ではありません。
こういった理由から、データ連携を行う際には、
CookieID(Cookieにつける任意のID)や広告ID(アプリでの広告配信用ID)などの「ID」が利用されることが多くなっています。
この中でも、異なる「CookieID」同士を結び付けて、2つのデータベースを"連携"させることを、「Cookie連携」と呼びます。
Cookie連携方法には「Piggy Back 」と「Cookie Sync 」がある
Cookie連携には、 「Piggy Back(ピギーバック)」 と「Cookie Sync(クッキーシンク)」の2つの手法があります。
2つの違いは、一言で述べると『Cookieを連携させる際の"やりとり"の経路』の違いです。
この違いを理解する前に、まずは「Piggy Back(ピギーバック)」と 「Cookie Sync(クッキーシンク)」それぞれの仕組みを学んでいきましょう。
まずは、「Piggy Back」から説明していきます。
Piggy Backのやり方
ここからは、イメージしやすいように以下の2社が保有するデータを連携させると仮定します。
【STEP①】 CookieIDを収集する"場所"を決め、タグを設置する
まず最初に、「のりしろ」となる2種類のCookieIDを収集する"場所"を決めます。
ここで大事なのは、「Cookie」の役割です。要点をおさらいしておきましょう。
今回の例で言うと、「みかんショッピングのトップページ」や「商品ページ」もしくは「モニターマイページ」に該当者がアクセスすることで、Cookieを発行し、CookieIDを付与することができますね。どちらのページを選んでもPiggy Back自体は実施できますが今回は、「みかんショッピングの通販トップページ」をCookieIDを収集する"場所"とします。
<ちなみに:よりよい取得"場所"はどちら?>
よりよいほうを、となると、一般に以下の要素を加味することが多いです。
■そのサイトへの普段の訪問者数がより多いほう ・・・訪問者が多いほど、取得できるCookieID数が増える=より多くデータ連携ができるため
■Piggy Backに使用するタグを設置しやすいほう ・・・サイトによっては、Piggy Backに使用するタグを貼ることがサイト仕様上難しかったり、時間がかかるなどの事情を抱えている場合があるため
取得する"場所"が決まったら、そこにPiggy Backに使用するタグを設置します。
「タグ」の役割についても、要点をおさらいしておきましょう。
「みかんショッピング」にビデオリサーチが設置するタグが出す"命令"は、大きく分けると2つです。
1で登場する"透明な"画像とは、文字通り色のない、人間には見えない画像を意味します。大きさは1×1ピクセルと非常に小さく、「ダミー画像」と呼ばれることが多いです。
なぜ人間には見えない画像を表示させるのでしょうか。それは、ビデオリサーチにもCookieを発行させるためです。前述の通り、Cookieは、ブラウザ上でサイトや広告を表示させたときに、そのサイトや広告の管理者から発行される仕組みになっています。この人間には見えない画像を、「みかんショッピング」にビデオリサーチが出稿した架空の広告だ、と考えると分かりやすいですね。
ここまでで事前準備は完了です。つづいて【STEP②】では、実際にCookieIDを収集していきます。
【STEP②】 CookieIDを該当者から取得する
例えばりさ子さんという女性が自宅PCから「みかんショッピング」のトップページにアクセスしたとき、ブラウザの裏側で起こっていることをまとめると以下のようになります。
1.〜5.の各フェーズをもう少し細かく見ていきます。
りさ子さんが「みかんを買いたいな」と思い、自宅のPCでブラウザを開き「みかんショッピング」のトップページにアクセスすると、ブラウザ上には普段どおり、「みかんショッピング」の商品が選べるトップページ画面が表示されます。
みかんショッピングのトップページがブラウザに表示されると、同サイトの管理者であるみかんショッピング社からCookieが発行され、ブラウザに送付されます。このCookieには、任意のIDとして『1234』というCookieIDが付与されています。
「みかんショッピング」のトップページがブラウザ上に表示されていく中で、同ページに設置されたPiggy Back用のタグも読み込まれます。このタグには、【STEP①】で説明した以下2つの"命令"が記載されています。
この2つの命令が、ブラウザからビデオリサーチに「実行しなさい」と伝えられます。
ビデオリサーチはまず、命令1に従い、「みかんショッピング」に小さい透明な画像=人間には見えない画像を表示させるために、画像ファイルをブラウザに送信します。画像を送ることでビデオリサーチでもブラウザに対し、Cookieを発行することが可能になったので、『あいう』という任意のCookieIDもあわせて作ることができます。
5.が最も大事なポイントです。
ビデオリサーチは、2.においてみかんショッピング社が発行した『1234』というCookieIDを、みかんショッピング社からではなく、りさ子さんの自宅PCのブラウザからタグの命令によって、3.のタイミングで手に入れます。そして、4.のタイミングで自分(ビデオリサーチ)が発行した『あいう』というCookieIDは、『1234』というCookieIDと同一人物であるとイコールで結んだ上で記録し、保管します。
このように、2社のCookieIDが同一人物だとまとめておく場所をマッピングテーブルと呼び、まとめておくことで、たとえば2社間でこんなデータのやり取りができるようになります。
■みかんショッピング >「うちのCookieIDが『1234』の人は、御社のモニター情報では子供がいることになっていますか?」
■ビデオリサーチ >「うちのCookieIDでいうと『あいう』の人ですね。はい、子供がいることになっています。中学生のお子さんが1人、小学生のお子さんが1人の計2人です。」
これで、CookieIDを通して、2社のデータの"連携"が完了しました。
●マッピングテーブルで2社のCookieIDを紐付けることで、データが"連携"される
なお、注意しなければいけないのは、ここでいう"同一人物"とは正確には"同一ブラウザ"を意味します(Cookieはブラウザ単位で発行されるため)たとえばりさ子さんが、自宅PCのブラウザと私物のスマホのブラウザの両方から「みかんショッピング」にアクセスした場合は、マッピングテーブルにはCookieIDが2セット作成されます。
また、1.〜5.の流れの通り、Piggy Backは、CookieIDの収集場所と決めたウェブページ(今回の例でいうと「みかんショッピング」トップページ)にCookieを連携させたい人がアクセスしてくれないと実現できません。 1日で会員全員がアクセスするウェブページは世の中にそうそうありませんので、 Piggy Backを行う際には、「1ヶ月間」「3ヶ月間」など期間を長めに設ける、もしくは「常時」行うなど、一定以上の実施期間が必要になってきます。
Cookie Syncのやり方
つづいて、CookieSyncのやり方を具体的にみていきましょう。Piggy Back同様、みかんショッピング社の会員とビデオリサーチのアンケートモニターを"連携"させると仮定します。
【STEP①】 みかんショッピング社のサーバーとビデオリサーチ社のサーバーの"信頼関係を構築"する
まず最初に、連携したいみかんショッピング社とビデオリサーチ社の2社間で、「のりしろ」となる2種類のCookieIDをやり取りするための仕組みを作ります。
具体的には、両社のデータを管理しているサーバー同士が、「2社でCookie Syncをするときには、こういう手順に従って、このフォーマットで、この場所にデータを送る」と言ったルールを決めて信頼関係を構築し、Cookie Syncが始まったときに問題なくサーバーが動いてくれるかを確認しておきます。
ここまでで事前準備は完了です。つづいて【STEP②】では、実際にCookieIDを収集していきます。
【STEP②】 CookieIDを該当者から取得する
例えばりさ子さんという女性が自宅PCから「みかんショッピング」のトップページにアクセスしたとき、ブラウザの裏側で起こっていることをまとめると以下のようになります。
【画像をクリックで拡大】
Piggy Backとの違いは?
さて、先ほどのPiggy Backとはどこがどう異なるのでしょうか?
もう少しシンプルな図に起こすと以下のようになります。
ポイントとなるのは、図で言う「3」です。Piggy Back、Cookie Syncいずれもやっていることは「みかんショッピング社のCookieID:1234」をビデオリサーチに共有するという同じ行動ですが、この行動を実施する主語が異なります。
では、Cookie Syncにおける、1.〜5.の各フェーズをもう少し細かく見ていきましょう。
りさ子さんが「みかんを買いたいな」と思い、自宅のPCでブラウザを開き「みかんショッピング」のトップページにアクセスすると、ブラウザ上には普段どおり、「みかんショッピング」の商品が選べるトップページ画面が表示されます。
みかんショッピングのトップページがブラウザに表示されると、同サイトの管理者であるみかんショッピング社からCookieが発行され、ブラウザに送付されます。このCookieには、任意のIDとして『1234』というCookieIDが付与されています。
【STEP①】で予め設定しておいた2社間のサーバーでのやり取り"ルール"に従い、みかんショッピング社からビデオリサーチに対して、自社が振ったCookieID『1234』をお知らせするとともに、ダミー画像も発行しておくようにと伝えられます。
ビデオリサーチは、みかんショッピング社(のサーバー)からの連絡に従い、ダミー画像と自社のCookieを発行し、りさ子さんのブラウザに送ります。これにより、ビデオリサーチでも任意のCookieID『あいう』を発行できました。
1.~4.までで両社のCookieID『1234』と『あいう』が集まったので、ビデオリサーチは、この2つがりさ子さんのブラウザに振られたIDであることをマッピングテーブルに記録しておきます。
これでCookie Syncが完了しました。
Piggy BackとCookie Syncの違いをまとめると
これまでに出てきた2つの相違点をつなげると、以下のようになります。
Piggy BackとCookie Sync、どっちがよく使われる?
Piggy BackとCookie Syncは、Cookie連携させるためのやり方は異なるものの、最終的にみかんショッピングとビデオリサーチのCookieを連携させるという"ゴール"は変わりありません。
ですが、Cookie連携の手法としては「Cookie Sync」よりも「Piggy Back」が使われることのほうが圧倒的に多く、世の中のCookie連携のほとんどが「Piggy Back」によるものといっても過言ではありません。
なぜなのでしょうか?
前述の通り、Cookie Syncの場合、【STEP①】でサーバー間の設定や仕組みづくりが必要になります。これは、それぞれお互いにサーバーという機械をいじることになりますので、専門的な技術が必要なのはもちろんのこと、お互いにまったく同じ仕様・構造のサーバーを使っていることはまずありませんので、異なる2つのサーバーが上手くやり取りできるようにするための調整をしなくてはならないため、時間も費用もかかってきます。
一方でPiggy Backの場合は、特定のサイト(ページ)にタグを設置するという準備のみで済みます。Piggy Back用のタグは言ってしまえば単なる「命令文」なので、多くの企業で汎用的に使え、設置も時間をかけずに行うことができます。つまり、Cookie Syncに比べ、Piggy Backのほうが手間無く、そして費用も安く済むのです。
ですが、世の中に流れるニュースやデジタルマーケティング関係者内でのやりとりでは「Cookie Sync」というフレーズは頻繁に聞くものの、「Piggy Back」は聞いたことがない、という方も多いかもしれません。
実は、企業や人によっては、「Cookie連携」そのものを「Cookie Sync」とひとくくりに呼ぶことも多いのです。言い換えれば、手法名称としては「Piggy Back」で行っているCookie連携が、世間的には「Cookie Sync」という名称で呼ばれがち、ということになります。ややこしいですね。
「私はPiggy Back/Cookie Syncされたくない!」という人がいたら?
りさ子さんをはじめとするモニターの皆さんの中には、「みかんショッピング」で商品を購入した情報とモニターとしての会員情報を紐付けられるのはイヤだ!と思う方もいらっしゃるかもしれません。そういった方の希望にこたえるために、通常Piggy BackやCookie Syncを実施するウェブページには、「私は『みかんショッピング』とのデータ連携を希望しません」の意思表示であるオプトアウトができるページ(へのリンク)が用意されています。
いかがでしたか?
Piggy BackやCookie Syncの仕組みは、一見すると難解なように見えますが、1つ1つの工程はそこまで難しいものではなく、一度覚えてしまえば今後の皆さんのデジタルマーケティングに関連する業務がきっと、よりスムーズに進められるようになることでしょう。本記事をじっくりお読み頂き、ぜひご自身の知識として身につけていただければ幸いです。
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・Cookieとは?
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