高校生の生活行動パターンからクラスターを作る 〜ウェブ調査データへのソーシャル・シークエンス分析適用の試み〜
ひと研究所では、「ソーシャル・シークエンス分析」を用いて、生活者の生活行動とメディア利用実態の研究を進めています。その中で、テレビやネット動画を中心とした映像コンテンツやメディアを考える上では、高校生の生活行動が大きな転換点であることがわかってきました。
その一方で、「高校生」といっても実際は様々な生活パターン(部活やアルバイト、受験など)があるにもかかわらず、総じて「高校生」と括られて論じられてしまうことも多いという問題もあります。
そこで今回、ウェブ調査で高校生を対象に簡易的な生活行動調査を行い、「ソーシャル・シークエンス分析」を適用して、映像コンテンツ・メディア利用の中心となる自宅内の生活行動・メディア利用のパターン分類をし、高校生の生活が一様でないことをデータから示す試みを実施しました。
これによって、生活行動・メディア利用に基づいたターゲティングが今まで以上に精緻に行えるようになります。その結果をご紹介します。
●ソーシャル・シークエンス分析とは
シークエンスとは、"連なったデータ"の事を指します。例えば、MCR/exの日記形式の生活行動データから、生活者ひとりひとりの日常生活行動やメディア接触行動が時系列に並んだ「シークエンスデータ」を作成します。
そのシークエンスデータを用いて、生活行動を俯瞰したグラフで可視化したり、クラスター分析で行動の類型化したりできるのが「ソーシャル・シークエンス分析」です。
【参考】
●2018年7月25日 ビデオリサーチ プレスリリース
日常生活行動やメディア接触行動の包括的なクラスタリングが可能に
〜「MCR/exデータ」を活用した「ソーシャル・シークエンス分析」サービスの提供を開始〜
●電通との共同研究 「 MCR / ex 」とシークエンスでみる生活行動と
メディア利用の中の「 動画視聴 」(最新分析)
今回、MCR/exの日記形式の生活行動データではなく、新規でウェブ調査を実施し、その中で、簡易的な生活行動調査を行って得られたデータを用いて、生活行動を類型化する試みをしました。
具体的には、関東と関西の高校生1,130名へ実施したウェブ調査で、夕方の自宅内の生活行動を30分刻みで聴取する質問を入れました(図1)。
図1 高校生への自宅内生活行動調査
まず、得られた調査回答を加工して、シークエンスの形に変形しました。それぞれの行動は、重複行動も考慮して、最終的に32の行動に集約しました。それを集計したものが図2です。
※全体 1,130名(男子高校生=323s, 女子高校生=807s)
※縦軸は、各時間帯での行動の発生割合(シェア)を示す。横軸は30分刻みで17時〜24時。
全体で見ると、17時〜20時にかけて帰宅し、食事や勉強だけでなく、様々なメディアに接触している様子がうかがわれます。その一方で、それぞれの生活行動・メディア利用がすべての時間帯に網羅的に発生しており、特徴をつかみにくい状況でもあります。
そこで、シークエンスデータを元に、個人間のパターンの類似性を計算して、そのスコアを用いてクラスター分析を実施しました。その結果、特徴的な7つのパターンに分けることができました(図3、図4)。
図4 高校生の自宅内生活パターンの男女別構成比
それぞれのクラスター(生活パターン)は次のように解釈できます。
●CL1 夕食後勉強&息抜きタイプ
19時頃に帰宅し食事をとった後に、勉強やメディアを利用する。全体の4分の1を占める、高校生の典型的な生活パターンの一つ。
●CL2 多メディア専念利用タイプ
17時の時点では8割が帰宅しており、在宅中は様々な行動を様々な時間に行い、また、メディアは専念利用が目立つ。全体の3分の1を占める高校生の典型的な生活パターンの一つ。
●CL3 ネットメディア・ゲーム同時並行タイプ
17時の時点では8割が帰宅しており、テレビ以外のメディアを同時に複数利用している時間が極めて多い。動画視聴、SNS、パソコン・タブレット、ゲームの複数同時利用を常にしている高校生。
●CL4 夜間帰宅タイプ
20時を過ぎてようやく帰宅し始める。部活動やアルバイト率が高く、それらによって帰宅が遅くなっている忙しい高校生。
●CL5 勉強集中タイプ
17時時点で既に帰宅しており、多くの時間を勉強に割いている。ほとんどが3年生であり、受験生や勉強に非常に熱心な高校生の生活パターン。
●CL6 早寝タイプ
22時には8割が既に就寝している特徴的な生活パターン。ただし、朝の生活行動データを確認しても、必ずしも極端に早起きではないため「早寝早起き」とは言えない。
●CL7 現代のテレビっ子タイプ
在宅中はテレビのリアルタイム視聴をしながらSNSを利用している時間がかなりの割合を占めている、現代のテレビっ子。
このように、「高校生」といっても、部活やアルバイト、受験などの要因や、本人のメディア利用の嗜好性の違いで様々なパターンに分けることができました。
図2で示した全体の集計グラフから読み取れる「高校生像」と、詳細なパターン分けをして読み取れる「高校生像」は大きく違っているかと思います。同じ属性であっても、生活パターンが異なることをきちんと把握・分類できることが「ソーシャル・シークエンス分析」のメリットです。
そうすることで、例えば"高校生のテレビ視聴"を掘り下げるという目的においては、メディアの偏りが少なくボリュームの多いCL1やCL2をターゲットとしてさらなる分析をする、など効率的な進め方ができます。
さらに、簡易的な日記式調査をウェブ調査で行った場合でも、ソーシャル・シークエンス分析で示唆に富んだ分析結果が得られることもわかりました。今後、このような生活行動調査の項目を様々なウェブ調査に組み込むことで、ソーシャル・シークエンス分析の応用範囲を広げることができると考えられます。
今回の分析結果の詳細は、3月22日(金)に産業能率大学で行われる無料公開セミナーとネットワーキングイベント「AgeMi!マーケ!2030」の研究報告セッションにてご紹介予定です。ご興味がある方は是非ご参加いただければ幸いです。【イベントのお申し込みはこちらの「お問い合わせ」から】
【調査概要】
調査対象者: 高校生
サンプル数 : 男性 323名、女性 517名(合計 1,130名)
調査エリア : 関東(東京、神奈川、千葉、埼玉)
関西(大阪、京都、兵庫、奈良、三重、滋賀、和歌山)
調査方法 : インターネット調査
調査時期 : 2018年10月12日(金)〜14日(日)
※本調査は、産業能率大学 経営学部 小々馬ゼミ、SHIBUYA109 lab.、日テレラボ、
ビデオリサーチひと研究所の共同調査として実施されたものです。
【本稿に関連したイベント概要】
次世代のメディアとマーケティングがここから始まる!
『AgeMi!マーケ!2030』〜2030年メディアと若者の関係は?〜
ひと研究所・渡辺は、セッション③「高校生の自宅内メディア利用の実像」(15:10‐15:40)に登壇いたします。
開催日時: 3月22日(金)午後1時より午後6時
会 場 : 産業能率大学 自由が丘キャンパス IVYホール
主 催 : 産業能率大学 経営学部 小々馬ゼミ AgeMi!マーケ!2030事務局
後 援 : 公益社団法人 日本マーケティング協会
協 力 : SHIBUYA109lab. ビデオリサーチ ひと研究所 日テレラボ
詳しい情報・お問い合わせは下記をご参照ください。
https://pando.life/agemi2030