VR(バーチャルリアリティ)がほしい人って、どんな人?
1.はじめに
皆さまはバーチャルリアリティ(Virtual Reality:以下VR)という言葉をご存知でしょうか。2012年に"Oculus DK1"が登場し、2016年の消費者向けVRデバイスである"PlaystationVR"が発売されたことを皮切りに、VRという言葉をメディアで耳にする機会は増えました。
2018年現在でもVRデバイスはさらなる進化を続けており、5月1日にはより携帯性に優れたデバイス"Oculus Go"が発売されました。今後はこのようなハードウェアの進歩だけでなく、コンテンツの開発も進み、市場が拡大していくことが予想されます。そんなVRを「買いたい!」と思っている人はどんな人たちなのでしょうか。そんな人たちにリーチするには、どうすればよいのでしょうか。今回はこの点について、ACR/exのデータを用いて考えてみようと思います。
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2.VRデバイスを購入したい人はどんな人?
前提として、まずはVR機器についての認知状況を、性年齢別に示しました(図1参照)。全体では30%以下とあまり認知されていない一方で、20〜34才の男性においては半数近くの人がVRを認知していることがうかがえます。
【図1】 性年代別の「VR機器」に対する認知率
次に、「VR機器」について「購入意向者」と「購入非意向者」を比較すべく、ACR/exの2018年(1-3月調査, 5348名)でそのボリュームを確認すると、購入意向者は3.6%、購入非意向者は96.4%と未だ購入意向者は全体の中ではごく少数であることがうかがえます。
ではその、購入意向者の概要をつかむため、性別や年齢を見ていきましょう。【図2】に、購入意向者の性年代別の内訳を示しました。購入意向者は特に20〜34才男性、35〜49歳男性の割合が高くなっており、この2つの年齢層だけで全体の約6割を占めています。
【図2】 VR購入意向者の「性年代」
次に、購入意向者の特性をさらに詳しく見ていきましょう。当社・ひと研究所では、生活者が情報を収集し、商品を選択する基準となる「考え方のクセ(情報×選択 セグメント)」を6パターンに分類しています[※1]。では、購入意向者はどのような「考え方のクセ」を持っているのでしょうか。
【図3】情報×選択 セグメント
【図4】は、購入意向者と購入非意向者が「情報×選択 セグメント」の各セグメントに含まれる割合を現したものです。購入意向者は購入非意向者に比べて、特に「トレンドフリーク」の割合が高くなっています。トレンドフリークの特徴は、以下のとおりです。
・直感や感性を重視して選択する
・新しいものや流行に敏感で情報収集を怠らない
・発信意欲も強く、話題を振りまく
VRの購入意向者のうちトレンドフリークの割合が最も高いことは、「流行に敏感」であるという特性からも納得のいく結果です。また、トレンドフリークが実際に購入した際、積極的に発信し、周囲の人のVRへの認知も高まっていくということが考えられるでしょう。
【図4】 VR購入意向者の「情報×選択セグメント」
では、購入意向者を特徴づけるのは、「トレンドフリークである」ということだけでしょうか。その他の項目の集計結果も踏まえると、ただ「トレンドフリークである」だけではない購入意向者の特性が見えてきました。
【図5】は同じく当社・ひと研究所が生活者の広告の表現要素の嗜好性を分類した「表現嗜好セグメント」について、購入意向者と購入非意向者について集計した図です。
購入意向者は非購入意向者に比べて機能実証派が高く、トレンドフリークに見られる特性の「直感や感性だけで選択する」だけでなく、購入しようとするものの機能性を検討した上で商品を選択するといった特性が見られます。このような機能性重視の特性は、同じくACR/exデータのうち、購買特性を質問した「機能や性能がよいモノを選ぶ」といった質問項目に「あてはまる」と回答した人の割合にも現れています(購入意向者:89.1%に対し、購入非意向者:74.4%)。
【図5】 VR購入意向者の「表現嗜好セグメント」
以上をまとめると、VR購入意向者は、
積極的に情報収集や発信を行い
流行のものだけでなく機能性も重視して製品を選択する
ような人であるということが見えてきます。
3.どんなメディア利用をしている?
次に、VR購入意向者がどのようなメディアに接触しているのかを知るため、 【図6】に、購入意向者が「毎日接触するメディア」を示しました。「スマートフォン」、「パソコン」からのネットへの接触が顕著で、購入意向者のほうが購入非意向者よりも高いという結果が得られました。また、同じネットへの接触でも、「携帯型」、「据え置き型」問わず「ゲーム機」からの接触について、購入意向者が購入非意向者よりも高いという結果が得られており、購入意向者は日ごろからゲーム機にも触れている人であるということがうかがわれます。
以上から、購入意向者のメディア利用について、購入非意向者に比べて「パソコン」、「スマートフォン」、「ゲーム機」からインターネットを利用している人が多い、ということが分かりました。
【図6】 VR購入意向者が「毎日接触するメディア」
4.どんなコンテンツに触れている?
では、購入意向者はインターネットでどのようなコンテンツを見ているのでしょうか。
【図7】は購入意向者が直近1年間で「利用している/加入した」と回答したサービスの中でも差が顕著な項目を示したものです。特にネット利用と関わりの深い項目として、「動画配信サービス」「ネットの動画配信サービス」が挙げられます。こうした動画への接触に着目して、さらに「日常的な動画接触」を調べてみました。
【図7】 VR購入意向者が「1年間に利用したサービス」
【図8】 VR購入意向者が「自由な時間」に動画視聴する割合
【図8】は、「自由な時間のすごし方」について、「動画」と解答した購入意向者の割合を示したものです。購入意向者と購入非意向者の差は顕著で、すべての曜日において購入意向者のほうが、「自由な時間に動画視聴する」人の割合が高いという結果になりました。
以上より、購入意向者は非購入意向者よりも「パソコン」や「スマホ」などを用いて、インターネット上の動画サービスを利用する傾向にあるということがわかりました。
5.まとめ
今回のコラムでは、VRを購入したい人がどのような人か、ということを当社ACR/ex調査のデータを用いて考察しました。
その結果、VR購入意向者は、
商品選択では流行だけでなく機能性も重視し
パソコンやスマホ、ゲーム機からネットを介して動画をよく見る人
といった人物像であるということが把握できました。
繰り返しになりますが、VR購入意向者はまだまだ全体の3.5%程度と少なく、実際に所有していると回答している人は全体の1.7%とさらに少ないといった実情にあります。しかし、Oculus Japanの設立に尽力した、国内におけるVRの第一人者である近藤義仁氏(通称GOROman氏、現XVI Inc. 代表)はその著書の中で、
「VRなんてそのうちすぐ消えてなくなるよ」
「だって使うのが当たり前になるからさ」
とVRの普及を予言しています[※2]。また、Oculus Goのようなハードウェアだけでなく、AniCastなど個人レベルでVRコンテンツを作成できるシステムも登場し[※3]、今後VRの市場はより拡大していくことが予想されます。
VRの市場には、まだまだ未知の可能性が潜んでいます。少しでも多くの方に関わっていただくことで、VR市場全体がより盛り上がっていく、といった未来を一人のVRユーザーとして切に願うばかりです。
【使用データ】
本稿では、「ACR/ex」2018年1-3月データ(関東地区)を使用いたしました。
【参考文献、参考ページ】
[※1]株式会社ビデオリサーチひと研究所. マインド・ホールを突破せよ. ダイヤモンド社. 初版. 2015, 209p.
[※2]GOROman. ミライのつくり方 2020-2045 僕がVRに賭けるわけ. 星海社. 初版. 2018, 253p.
[※3]XVI Inc. "バーチャルキャラクター配信システム「AniCast」プレスリリース". http://www.xvi.co.jp/news/anicast/.
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