鹿児島のテレビ「てゲてゲ」(生放送)が人気!ローカル探訪 「南日本放送」
※本記事は2015年6月発売のSynapseに掲載されたものです。
1953年にラジオ南日本として開局したラテ兼営局。2010年5月からスタートした平日ゴールデンの生放送番組「てゲてゲ」は、鹿児島地域とコミュニティをマニアックに探る鹿児島賛歌生バラエティで、生放送内でツイッターの反響もリアルタイムで表示している(毎週月曜日19:00~19:55)
鹿児島随一の人気情報バラエティを支えた元プロデューサーにお話を聞きました!
てげてげ、とは南九州の方言で、適当・いい加減の意味。「生放送なのに、普通にお茶の間感覚でしゃべってます。完全に素のままというか。てゲてゲというタイトル通り、いい意味でユルくやらせてもらってます(笑)」(MC・野口たくおさん) 3月まで『てゲてゲ』の番組Pをつとめてきた切通啓一郎さん(4月より編成部長)は言う。
「30年以上続く『ど〜んと鹿児島(水曜19:00〜)』などをはじめとした他番組がいい数字をとってくれてるので、『てゲてゲ』では思いきった冒険ができてるんです。トーンとしてはゆるさを前面に出しながらも、企画の深さにはこだわっています。
安易にグルメに走ることなく、様々な企画にチャレンジし続ける一方で、ヒット企画が生まれた場合も、それをやりすぎて視聴者の飽きがこないように、2カ月に1回程度におさえ、常に多様な企画をまわしていくようにしているんです」
例えば先月、『てゲてゲ』の歴代最高視聴率(21・6%)を叩き出した特集の内容は、鹿児島の特定エリアを徹底取材するヒット企画『ディープ探検!』シリーズ。鹿児島市西田地区を特集したその回では、昔の地図を出して西田の歴史を紹介したり、西田女子会を定期的に開催するという西田大好き女子に地域を実際に紹介してもらい、さらには彼女でさえも知らなかった西田の歴史を番組と一緒に探った。
他には、地域の小・中学校のあるあるネタを取り上げつつ、スタジオにはゲストとして鹿児島出身の演歌歌手・西田あいさんを"西田つながり"で招く企画も。ネタはディープであっても様々な層が見続けたくなるような切り口を幾重にも張り巡らし、飽きさせない。 だが切り口に限らず、以前から様々な創意工夫をしながら番組づくりに取り組んできた。
「5年前の番組スタート時から、"どうせやるならなんでも面白がろうよ!"と、番組終了後に毎分視聴率を壁に貼りだすようにしたんです。数字が悪かった回の担当には少しかわいそうだけど、何が良くて何が悪かったのかを、個人の中にため込むのではなく、みんなで楽しみながら考えられるようにしたかったんです。
そうすることで切磋琢磨と情報共有がいいバランスでできるようになりました。それを続けて分かったのは、『自分たち自身が現場で驚き、楽しみながらつくった部分こそ、数字が良い』ということ。自分たちの楽しい気持ちが視聴者にも伝わるんですよね」(切通さん)
報道畑出身の社長が熱く語る!
これからの激動の時代、ローカル局が生き残る道とは?
代表取締役社長
中村 耕治さん
2006年6月より現職に就任。
入社以来、報道畑を歩む。
部長には「自部署を7割、他部署を3割」
「今を7割、未来を3割」と言い続けて、
社内が部署の垣根を超えて、つながるように促し続けている
社是は「ふるさとたっぷり」。鹿児島で生き残っていく覚悟の現れだ。「当社は、鹿児島でNHKさんよりも公共的になろうと考えています。メディア環境激変の真っ只中で、ローカル局が生き残っていくには、キー局や衛星メディアではできないことをやるべきで、必然的に徹底的に地域へ根を生やすことになる」 それに伴い、自社制作比率も上昇している。
「それ自体が目的なのではなく、あくまでも地域に徹底的に根ざそうとした結果なんです。ただ、番組のつくり手は、G帯であろうと、朝帯であろうと、夕方であろうと同じようにつくりますよね。これは自分がつくるものには魂を込めようとする制作者の性さがみたいなものです。
でも、これからの時代、限られた制作費でつくり続けていくためには、見ている人の数を考慮して、時間帯ごとの文法をよく考えなければいけない。例えばG帯の番組なら、週に1回の外食くらいの感覚でつくるけど、16時台なら毎日のおやつくらいの感覚で。極端な話、打ち合わせナシというくらいのラフさがほしいとよく言うんです。
そういうつくり方の部分は、まだまだ突き詰めていかなければいけないことのひとつです」 他はどんなことが重要になるのだろうか。「よく社内で"ネットワークをつくり、ネットワークでつくる"と申し上げています。これは、東京キー局を中心とした縦のネットワークではなく、地域内における横のネットワークのことです。
鹿児島県内には今、地元新聞やCATV、コミュニティFM、ミニコミ誌など30以上のメディアがあります。これらのメディアと互いに協力しあってつくっていこうということ。例えば、『あまみFM』の方に、朝帯では当社のラジオ番組に出てもらい、夕方ではテレビ番組にも出てもらうということをやっています。
そうすれば、当社の番組を視聴してくださってる方々は、あまみの情報に触れることができますし、あまみFMと当社は互いに、地域情報を共有・交換しあえて、みんながハッピーなんです。他にも、個人として話題や情報を提供してくださる"MBCふるさと特派員"が、今県内に200人以上おられて、そういう方々とも連携して番組をつくっています。お題目ではなく具体的に地域に根ざし、地域内ネットワークを進化させ、"ふるさとたっぷり"をさらに推進していきます」
ラジオ・テレビと長きにわたり制作を担当。名物P が、この4 月から編成へ!
編成部長
切通啓一郎さん
1994年入社。
ラジオの制作を6年、テレビを14年間担当後、現職。
2004年よりほぼ独力でつくり続けた深夜番組「mixx(ミックス)」は、自身が番組Pを務めた「てゲてゲ」に発展した。
編成は、これまでの制作とはまた違う畑で大変ですか?
「当社の編成はテレビ以外にもラジオやHP、データ放送なども担当するなか、それらを陰で支えてくれる多くの人たちの存在を改めて知って、日々感謝しながら仕事をしています」
どんなことを心がけてます?
「ディレクター時代、社長からは『アナーキーな番組を!』と言われ、今は『アナーキーな編成を!』と言われてます(笑)。深夜番組『mixx』では毎週制作費5万の制約下で、企画・撮影・編集をほぼ一人でやったことも。今度は編成で、常識にとらわれずワクワクするコンテンツを生み出したいですね」