VR映像の作り方よりも伝え方が重要!「これからのニュースは、時間の枠を超えて新たな空間を作り届ける役割を担う」 フジテレビ 清水俊宏さん vol.3

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VR映像の作り方よりも伝え方が重要!「これからのニュースは、時間の枠を超えて新たな空間を作り届ける役割を担う」 フジテレビ 清水俊宏さん vol.3

フジテレビ ニュースコンテンツ プロジェクトリーダー 清水 俊宏氏


前回の記事はこちら(vol.2)

一度流したものを再編集して短尺動画やテキストにまでしてWebでリユースしようという放送局は今なお、なかなかないですよね。

放送業界の中には『テレビをやるだけで精一杯だ』という人がたくさんいます。そう考えてしまうと、地上波で流したものをデジタル上で二次利用する際も、アナウンサーがしゃべり始めたところから終わったところまでを切り取ればOKとなってしまう。

でも、それはテレビがメインという発想なんですよね。実は今までだって、テレビで流したものをDVDにする時は特典映像をつけたり、映画をテレビで放送するときはディレクターズカットでテレビに最適なサイズにしたり、そういうことを地道にやってきたにもかかわらず、なぜかWeb上で見てもらう場合は『大変だから、テレビでやったことをそのまま流せばいいんだ』という方向に行ってしまう。

実際にテレビとデジタルでは、ユーザー行動が全然違う。もちろんできることには限界があるけれど、少し工夫するだけで見る人が大きく増えるのであればやらなければならない。テレビで放送したものをそのまま二次利用して、『やっぱりテレビの人ってテレビしかできないんだね』と思われるよりも、テレビという最高のコンテンツを持っているからこそ、デジタルでもこんなことまでできる! ということを見せたいんです。〝二次利用〟なんて情けないことを言わないで、一次利用のレベルに引き上げる。

総理大臣の横でマイクを持ってインタビューして、映像を撮って、その周りの秘書官にまで取材をかけて原稿を書く......というのは、放送業界以外のプレイヤーにはなかなかできることじゃない。そういったテレビだからこそできる部分をデジタルにも最適化していけば、そこにどういうユーザー層がいるのかというデータがすごく見えてくるし、どうやればこの人たちに放送を見てもらえるのか、分かってくるはずなんです。

発展途上のVR映像に付加価値をつけることができるのはテレビマン

それでも、まだテレビ局のこれまでの文脈に乗っかっているだけなので、さらに新しいものを取り入れていかないとメディアとしての成長はないと思っています。そこで積極的に取り入れているものの一つがVRです。少しずつですが、VRへ取り組むことで分かってきたのは、二次元のテレビとは伝え方を変えるべきだということです。

〝伝え方を変えるべき〟とは、具体的にはどういうことでしょうか?

例えば、高さ16.5mの津波災害のニュースで、その高さを伝える場合、テレビならビルの静止画像にラインを引いて16.5mと書くだけでした。ただ、この16.5mというのは、165mと書いても、1650mと書いても、テレビ画面上での高さの表現の仕方は同じなんです。一方、VRで私が取材した際には、実際の現地映像の16.5m部分に青い目印を引いて『津波はあの高さまできました』とリポートしました。そうするとVR映像を見ている人は実際に首を傾けて16.5mの高さまで見上げることになるんです。

165mなら、当然首の角度が変わる。体感でニュースが分かるってこういうことか、と。伝え方が違うし、視聴者の体験そのものが違うと感じています。これまでの日本国内のVR取材もカメラだけ置いて『熊本の地震です。どうぞご覧下さい』というのが多かった。見た瞬間はその惨状が伝わるのですが、それだけなんです。ただ建物が崩壊しているということしか伝わらない。

でもここで、『見てください、あそこには壊れていない建物がありますよね。なぜなら、実は平成に耐震補強をした場所で...』と解説が入ることによって、VR映像に付加価値をつけることができる。これは報道の記者が、テレビマンこそがやるべき仕事なんです。僕らの仕事は映像を撮って流すのではなく、映像に意味をつけて出すこと。それができる報道というのはすごくやりがいのある分野だと思います。VRは映像の作り方は分かってきたものの、伝え方についてはまだまだ発展途上ですね。

テレビ局が作る面白いコンテンツだからこそ本質的な情報を伝えられる

最近では、『北斗の拳イチゴ味フキカエニュース』という北斗の拳の登場人物たちが、難しいニュースを吹き替えで教えてくれるというサービスを始めました。

例えば、経済連携協定(EPA)のチーズの関税はどうなるのか?とか。絶対にケンシロウたちが言うわけないことを説明してもらうんです。今までのテレビや報道という概念の中では、ニュースと『北斗の拳』がつながることは、なかったと思うんです。それをWebメディアで展開することで、それを面白いと思ってくれたある歌手の方がリツイートしてくださって、そのファンの若い方が見てくれるというような現象が起きました。

テレビ放送のニュース視聴者に10〜20代の若者は多いとは言えませんが、北斗の拳や歌手のおかげで彼らと直接つながれて、本質的な情報を届けられるんです。これは、制作者冥利に尽きますね。『北斗の拳』は一例に過ぎませんが、このような取り組みをしていくことで、テレビ放送の24時間という時間の枠を超えてコンテンツを届けていくことができると感じています。

以前、清水さんが取材されたABCニュースのエグゼクティブ・プロデューサーであるドーラン氏が「ニュースに金を払おうというユーザーはほとんどいない」と語っておられました。そこで今後のホウドウキョクについてですが、マネタイズ面に関してはどのようにお考えでしょうか?

(vol.4)に続く


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