「配信で地元ならではの情報をデリバリーする」ネット動画配信サービス「Chuun」中京テレビ 林 義人さん vol.2
中京テレビ 編成局インターネット事業部 林 義人氏
報告書の中で、最も反響があったのは?
放送と配信をどうビジネスとしてマネタイズしているのか、という点に社内でも注目が集まりました。日本でも広告取引新指標『P+C7』が始まりますが、アメリカでは当時C3またはC7が主流。つまり番組ではなくCМ視聴率を3日間までタイムシフト視聴も含め視聴率にカウントするという形で取引され、同時配信に関してもプログラマティックにCМを挿入するということが、欧米ではすでに始まっていました。
かつ画面にタッチするとサイトへ遷移するインタラクティブなCMも配信されていました。他にも地上波で消化し切れないCMを、配信の方で消化して交換するといった内容へも反響は大きかったですね。
林氏が海外単独行研修制度を利用して視察に行った、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどのテレビ事情をまとめた報告書。現在の中京テレビのネット配信事業の指針となっている。
中京テレビ独自のインターネット動画配信サービス『Chuun』が2016年9月24日にスタートしました。林さんはこちらにも深く関与しておられますが、まずはその経緯についてお聞かせください。
2015年の夏前頃だったでしょうか。『太田上田』という番組を地上波でやることになったんです。その時に、何かこの番組で面白いことはやれないか、という相談を編成部と制作部から受けて、配信をやってみようと提案したのがきっかけです。
作り手の観点からすると、ゴールデンタイムを彩る豪華な二人(爆笑問題・太田光さん、くりぃむしちゅー・上田晋也さん)が毎日深夜3分のミニ番組を、それもローカル局でやっているって面白いじゃないですか。だからこれをローカル局から配信したら、もっと面白くなるんじゃないかということで。そこから突貫工事でアプリを作って、15年の8月から配信開始。とりあえずトライアルで始めたのが中京テレビの見逃し配信の始まりです。
すべてがゼロからの構築ネット配信はミニ放送局
その経験で得た学びはどんなことでしょうか?
思ったより手間がかかるということですね(苦笑)。ある意味、一つのミニ放送局を作るようなものですから。番組を作って配信用にデータを変換し、内容面でもデータ欠損がないかということも含めてチェックしないといけない。ただ、1番組からのスタートだったこともあり、過剰な負荷はなく、知見を貯めていけたのではないかと思います。
その頃には、キー局で日本テレビが先鞭をつけると他局も追随して続々と見逃し配信が始まっていました。でも、ローカル局は絶対的に番組の数が少ない。そんな中で、どうやって総合プラットフォームとしてやっていけばいいのか、かなり悩みました。
一方で、『太田上田』を配信したからには次のステップにいきたいという想いもある。そこで、コンテンツの少なさを逆手に取ることにしたんです。当社の地上波番組は視聴率も求められる。だからこそあまり数字にしばられず、もっと自由に作れる場があってもいいんじゃないかと。見逃し配信もやるけど、配信用のオリジナル番組も立ち上げていく。
中京テレビの放送は4チャンネルなので、『Chuun』オリジナルで制作した動画の配信は4チャンネル手前の3.9チャンネル、地上波で放送した番組を事後で配信する見逃し配信は4.1チャンネルという言葉遊びでコンセプトを当時の編成局長に相談しながら考え出しました。
実際に動き出す前に、役員会でのプレゼンと、社長、副社長には何回も説明に行きました。プレゼンのたびに宿題が出るので、それに対する回答を用意するということを繰り返して、私としても常に手探りでしたね。『太田上田』は非常にシンプルな動画配信だったので、アプリも含めて既製品を少しカスタマイズしただけでしたが、中京テレビが総合プロデュースする配信プラットフォームとなると、ゼロからの構築になります。
あれもやらなければとか、これも入れなければとか、いろいろとやらなければいけないことが出てきます。例えば配信サーバーをどこにするのか、裏側のCMSの仕組みも設計しなきゃいけないとか、そういう類の話です。当時はもう何から手を付ければいいのか、分からない状態でした。
その上、オリジナルコンテンツも作りますなんて言ったものだから、制作をやったことがない私は完全に暗中模索という状態でしたね(笑)
開発時に特に留意されたことやローンチするまでにご苦労された点、工夫された点などを教えてください。