【鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】〜 仕事における三種の神器 〜

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【鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】〜 仕事における三種の神器 〜

【鈴木おさむ のWHAT’S ON TV ? 】 第5回

僕が以前、構成で参加していた番組に『ほこ×たて』という番組がありました。最後はやらせ問題で悲しい終わり方をしてしまったのですが。

プロデューサーから最初に企画の相談をされたときに、「そんなことが出来たら、そりゃおもしろいだろうけど」と思いました。

今まで放送作家をやってきて25年以上たちましたが、企画書の方がおもしろかったことなんて山のようにある。実際に企画を詰めていったら、どんどん「普通」になっていく。

だけど『ほこ×たて』の時には、企画書の段階で「最強の金属vs最強のドリル」って書いてあった。極まれに、そのおもしろすぎる企画書を、そのまんま、もしくはそれ以上の形で映像にする人たちがいる。

お互いの企業が対決して勝ち負けがついてしまうテレビのバラエティー企画に出演することを、どうやって口説いたのか詳しくは分からないが、結局は「粘り」と「根性」なのかもしれない。

その二つに加えて、一つの企画を形にしていく時に、そのチームに「同じ言語」を持っている人たちがいないととてつもなく苦労することになる。自分がイメージしていることと相手のそれが違うと、がっかりする結果になる。何回か会議を重ねると、お互いの想像していたものに大きなズレが出来る。

先日、とあるネットサイトの編集の仕事があった。担当者はかなりの気合いでそれを成功させたいと語っていたが、ネットサイトは山ほどある。その中で成功させるには、よっぽどのオリジナリティーを持っていないと成功しないだろう。

そのサイトに、本についてのコーナーがあったので、打ち合わせで「直木賞・芥川賞作家が選んだおもしろい漫画総選挙」を出来るだけ多くの作家にアンケートを取って、発表できないか?という話になった。ランキングにして一位を発表したいと。こんなことを言ってはなんだが、かなり売れっ子の作家さんは取材を申し込むだけで大変だが、賞を取った人の中にもそのハードルを下げてくれる人もいる。作家の個人個人のネームよりも、集団としての意味があると思って話した。打ち合わせの時には「おもしろいですね~」と言われたのだが、後になって「あの企画、実はやってるんですよー」と言われた。聞いてみると、一人の作家が、おもしろい漫画をチョイスして発表しているというのだ。

ここです。ここなんです。一人の作家が選んだのは、あくまでも個人の意見。普通。どこでもやってる。僕の中では、「何人もの直木賞・芥川賞作家が選んだ」ことが大事なんです。なのに、これを「同じ」と思われてしまうこと。このしんどさ。そして、結局「何人もの作家さんに取材できない」と言われた。そこを頑張らないと!と思ったが。

こういうことに小さくガッカリする。やはり「同じ言語」を持つ人じゃないと、結果、傷つくことになる。

それに「突破力」「根性」のあるチームと仕事をしてしまうと、やはり比べてしまう。それを当たり前だと思いこんでしまうのもいけないが。

ネットメディアの仕事をする時こそ、その「突破力」と「根性」が必要であることに気づいていない人、大手に勤めている人に結構いるんだよな。

(了)

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