AIアナウンサー 「ナナコ」の導入に各ラジオ局が興味津々!【 ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】〜 ラジオってこんなにおもしろい! AI活用の可能性と、ラジオの進化論 〜

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AIアナウンサー 「ナナコ」の導入に各ラジオ局が興味津々!【 ラジオ レコメンダー

ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO 第10回

当メディア「Synapse」でも人気連載コーナー【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】を執筆していただいている、やきそばかおる さん。毎回ラジオへの深い造詣と愛情で、今聴くべきラジオ番組をご紹介いただいています。今回の対談では、ラジオ 業界にも浸透しつつあるAI活用の実際と見えている課題について語っていただきました。最後には、10代に聴いてほしいラジオ番組もご紹介。ラジオ 愛あふれるトークをお楽しみください。

AI活用の第一段階は、放送内容のタグ付けとデータベース化

―ラジオ でAIの活用が始まっていますが、最近の動向で目新しいものがあれば教えてください。

昨年はJ-WAVEの『INNOVATION WORLD』でAIアシスタントTommyが起用されたり、TBSラジオ『AI時代のラジオ 好奇心プラス』ではどっち君が活躍したり、今年の夏からはKBCラジオの『居酒屋清子』でAIスピーカーを使った取り組みを始められたりと、いろいろな種まきがあります。

『居酒屋清子』はAmazonのAIスピーカー「echo」のアレクサ・スキルを使って、女将の清子さんと話ができるというもの。まだ活用法としては模索中の感もありますが、過去の放送の傑作選を聴けるというのはとてもユニーク。この先発展させて、しゃべっている内容をタグ付けし、キーワード検索のようにラジオ音声を検索できればもっと面白くなりそう。例えば『居酒屋清子』で「イカの一夜干しがおいしいお店について、しゃべっている音声が欲しい」と思ったときに、検索できるといった感じで。

今年の夏に起きた水害で、広島では夜通し生放送の報道特別番組を組んでいました。2014年にも大きな水害があり「あのときはこんなことがあった」とか、過去の放送を検索できれば紐解くことができるわけです。更に部分的な抽出ができれば、ある地区のレポートとか、欲しい部分だけ抽出できる。何日間断水した、停電したということもわかって、今後、情報を伝えるための参考になると思います。

今、「書き起こしサイト」を運営しているラジオ局がたくさんあります。TOKYO FMやJ-WAVE、ニッポン放送のほか、名古屋のCBCラジオなども追随しています。番組の内容やゲストを記事として出して、radiko.jpに誘導してPRするためのものだったんですが、今後はAIと融合するための手段として、書き起こしサイトのテキストが活用できる日が来るのではないかと思っています。

radiko.jpで聴ける過去の放送の中で、あるアーティストが出た部分を聴きたいとなったときに、その部分だけの検索はできません。そのアーティストが出る番組を丸ごと聴く必要があります。そこで、書き起こしサイトの文章と音声をリンクさせて、AIスピーカーで「○○というアーティストの部分を聴かせて」と要求することができるようになるのではと期待しています。これが可能になれば、アーティストがどの番組に出ているかわからなくても、ポンと聴きたい部分にたどり着ける。もちろん、番組全体を聴いてもらうことが理想ですが、ラジオの中でAIを活用して、ラジオを聴くきっかけにつながると思います。

やきそばかおる

AIを使った番組作りのアイデア

―なるほど。アーカイブ機能がAI<活用の第一段階のイメージですね。第二段階はどうお考えですか?

なかなか想像するのは難しいところですが...。

遊びの一例として、先日、BSSラジオ(山陰放送)のワイド番組『午後はドキドキ!』で、AIスピーカーを使って遊んでみよう、という企画をやっていました。その番組ではAIスピーカーに質問したいことをリスナーに募集していたんです。「カエルの鳴きマネを聴かせて」ってスピーカーに話しかけたら、本当のカエルの鳴き声を再生していましたが、「よくわかりません」って返される質問も多かったんです(笑)。このときは盛り上がっていたのですが、生放送で実施すると何をしゃべるか分からないというリスクがあります。しかし、これから先、もっといろいろな活用の仕方ができるのではないかと思います。

―SNS活用についてはいかがでしょうか?

放送中にツイッター上で話題になった部分を"瞬間最高聴取者数"のような形で番組内で取り上げる、といったこともいいのではと個人的には思っています。「全国的にはこの部分、ある県ではこの部分が反響ありました」という感じです。

また、他の地区の ラジオ で反響があった話題がわかると、他の地区のおもしろいラジオ番組を知るきっかけにもなりますね。今までは自分で探すしかありませんでした。それを機械がやってくれるイメージです。もちろん、刺激的なものばかり話題になってしまう危うさもありますが。

とにかく、AIとラジオの関係って今はまだ「なんだこれ?」という手探り段階だと思いますね。


AIは現場の人手不足を救えるか?

―他にもAIを ラジオ で活用する方法はありますか?

西日本豪雨のとき、RCCラジオ(中国放送)、RSKラジオ(山陽放送)、南海放送などは災害に関する情報を逐一伝えていた一方、放送地域にある川が氾濫するような状況であっても、24時で放送を終了してしまうラジオ局もありました。

「いざというときはラジオを聴きましょう」と訴えているものの、このような状態では「 ラジオ なんて役に立たない」ということになってしまうのではないでしょうか。

ラジオの現場に人が少ないとはいえ、エフエム和歌山(Banana FM)のAIアナウンサー「ナナコ」みたいなシステムがあったら、もう少し違ったかもしれません。

―ラジオ業界の人手不足は深刻なんですね。

そうです。他にも某ローカルFM局で10代向けの番組を担当しているパーソナリティーは、「とにかく人手が足りない」とおっしゃっていました。「本当はもっとたくさんの学校にインタビューに行きたいけれど、別の仕事ができなくなってしまうから行ける数が限られてしまう。せめて、もう1人スタッフがいればメールの仕分けやスタジオ業務をやってもらえるのに」と。

やきそばかおる

―メールの仕分けなんかはAIを活用できそうですが?

災害が発生した際、ラジオ局には情報がSNSやメールなどがたくさん寄せられ、スタッフがどんどんチェックしていきますが、その情報の真偽を確かめる術がないこともネックになっているといいます。

また、SNSに上がった写真は、それが過去のものだったり、コラージュしている写真だったりしても判断ができない。そこで、メーカーが写真の真偽をAIの技術で検証できるようなシステムの構築を進めています。その写真が別のところで撮ったものじゃないか、過去のデータと照合したりして。

ラジオ・テレビ関係なく、放送局が災害専用アドレスみたいなのを開設し、それを警察とかにも連結させたり、情報の検証をAIと一緒にやったりといった仕組みがあればいいのではないかと思います。ひとつの番組で、2、3人のスタッフでやってもキリがありませんから...。

―放送局の人手不足というのは、どの局にも共通した大きい課題なのでしょうか?

ローカル局の人手不足の話や予算削減の話と繋がっている話だと思いますが、ラジオカーも廃止したラジオ局もあります。とあるローカル局は、以前は3台持っていたのですが、20年ほど前に手放してしまいました。ラジオカーを使わなくなってからは、ワイド番組を聴いていても、奥行きがない気がして、何か物足りなくなってしまいました...。

前回もお話しましたが、西日本災害が起きてしばらくの間、RCCラジオのラジオカーは避難所やボランティア関係者を訪ねてくまなく巡回して毎日レポートしていました。ラジオカーのレポーターの皆さんも大変だと思いますが、リスナーにとっては心強いと思います。

―やはりラジオカーの機動力や速報性は魅力ですよね?

TBCラジオ(東北放送)の『ロジャー大葉のラジオな気分』という番組でのこと。仙台にある老舗洋菓子店が店を畳むことになって、最後の営業日にラジオカーで向かって、そのお店から中継をしていました。お客さんにインタビューをしていると、そのラジオを聴いて閉店を知ったという人が集まってきて、そのお客さんにも話を聞いていました。

こういうことは人手がないとできないんですよね。人手が足りないと、スタジオと店を電話でつないで話を聞いて終わりになっちゃう。こうした中継ができるのは理想だと思います。


AIが出来ること、人間にしか出来ないこと

―慎重になりつつもAIを導入する流れは確かに存在すると思うのですが、現状のAI活用の課題を教えていただけますか?

先ほどちょっとご紹介したエフエム和歌山(Banana FM)のAIアナウンサー「ナナコ」は、災害情報などのテキストで入力されたものを読み上げることができます。また、CBCラジオで導入されている、バーチャルアナウンサー「沢村碧」は、イントネーションも自然で滑らかなので驚きますが、AIが怖いのは、常識が通用しないところ。「空気を読む」といったことは、今の時点ではできないそうです。

たとえば、「これは言っちゃダメ」っていう判断をするのは人間。放送禁止用語のようなものは登録しておけばいいのですが、「この表現はちょっとストレートすぎるな」みたいなのはAIには難しい。例えば、殺人事件のニュースを事細かに説明されると引いちゃうじゃないですか。人間なら「殴られました」で止めておくところを、AIだと「殴られて、血が出て肉が飛び散って...」みたいなところまで伝えてしまって、「そんな残酷な表現をするなんて」といった具合になることも考えられます。現在は、伝える情報の取捨選択を人間がする必要があります。

―「ナナコ」はいろんなラジオ局が視察に訪れているそうですね。

コミュニティFM局がAIアナウンサーを導入したという点で、いろんな局が興味を持っています。番組にAIが出てくると、生放送で何をしゃべりだすかわからないから使いにくいと言いましたが、選曲とか、人の手間がかかっているところを代わってあげるといったような裏方の仕事だと活用しやすいのかもしれません。放送に乗らないところで、サポートしてくれます。

J-WAVEの『INNOVATION WORLD』ではIBM Watsonを活用し、リスナーからの「○○な楽曲教えて」という漠然としたリクエストに応えて選曲をする「漠リク」を行なっています。先ほどの人手不足の話と関係しますが、地方局だと選曲するにも人的リソースの確保が難しい。そこをAIに任せてしまうのはひとつの手段だと思います。

―確かにAIは選曲などの裏方作業に向いていそうですね。

以前、ピーター・バラカンさんがとあるインタビューで「今の日本のラジオは、知っている曲しかかけていない。理想は知らない曲が7割、知っている曲が3割なのに、逆になっている」とおっしゃっていました。確かに、ラジオ局を変えても、同じような曲がかかっていることはあります。たとえば、「今月、この放送局で1回もかかっていない曲を教えて」とか、「この1年間、どこのラジオ局でもかかっていない曲」をAIがピックアップできるようになると面白いかもしれません。

ただ、あまりAI任せにしていると、人間の技術、人間の勘という部分が継承されなくなってしまうのも事実。知識や経験が継承ができなくなってしまうのはもったいないですね。


若者に ラジオ を聴いてもらうには

―では選曲はAIに置き換わっていくのでしょうか?

すべての選曲作業を置き換えてしまうと、味気なくなってしまう可能性があるので、あくまでも部分的に活用するのが良いと思います。現在、 ラジオ のライバルのひとつが音楽配信サービスです。若い子は「音楽聴くならそっちでいいじゃん」ってなってしまいます。

ラジオ の良さは曲紹介の仕方や、「この人が選んだ、みんなの知らない曲」といった感じで、音楽に付加価値をつけられることだと思います。

音楽配信サービスとの差別化という意味では、最近はレコードをかけるラジオ局が増えています。自分で買ってきたレコードをかけたり、レアなレコードを集めている人が注目されたり。レコードの音をそのままかけて、ノイズもそのまま流す。それは音楽配信サービスにはなくて、若い人には新鮮に感じるようです。

― ラジオ なりの"味"をつけるということですね。

そうですね。あくまでも一案ですが、音楽に詳しい人に放送局のレコード室を見てもらって、価値があるものなどのタグ付けをするのはいかがでしょうか。それをデータ化しておけば音楽に詳しくない人でも活用できると思います。中にはレコードを処分してしまうラジオ局もあるそうで、それはもったいない...。

AIをラジオに活用するには、膨大なデータが必要になりますが、そのデータを作るのはキュレーターといわれるような人間。今は何をデータにして、どういう人間をキュレーターにすべきか、ということを吟味する段階なのかもしれません。

―確かに、音楽や雑誌も過去のアーカイブに価値がありますよね。今がその仕込みをやっておくタイミングなのでしょうね。

テレビや映画はタイトルや出演者などでは検索できるけど、「誰が何をするシーン」といった検索はできません。今後、検索すると映像がポンと出てくる時代になるかもしれませんね。ラジオでも検索キーワードで番組の特定の部分を取り出せるようになるとか。「◯◯さんが◯◯の話をしてるところ」とか。深夜番組ファンのリスナーのなかには、ある番組でどんな話をしていたか、Twitterで分かりやすくツイートしている人がいます。

重要なのは、できるだけ大盤振る舞いでやること。動画配信サービスなんかもそうですが「セコイな」って思われたら勝負できません。Netflixに流れてしまうかも...。

ラジオの場合、若い子に「ラジオ聴きましょう」って言っても、まず受信機を持っていません。受信機を渡したとしても、ザーザーと音が入っていると、もう聴いてくれなくなる。建物の中では受信できないとなると、「ダメじゃん」と思われてしまいます。

あくまでも理想ですが、radiko.jpも、せめて自分が住んでいるブロック(北海道&東北、関東、北陸...など)は無料で聴けると、より浸透するんでしょうけどねぇ。

―そこまで環境が整わないと、動画配信サービスと同じ土俵には上がれないというわけですね。

radiko.jpもプレミアムに入りたいけど月額350円も払えないという10代の子が多いのも事実です。ただ、子どもが親に「ラジオを聴きたいから350円くれ」と言っても、親がラジオを聴かない人だとOKしてくれないと思います。10代に人気のアーティストが東京のラジオ番組に出ると知ったものの350円が払えないから「無料で聴ける3分間だけ聴く」という話を聴いたこともあります。

10代にラジオを聴かせるのが難しいのは、親がラジオを聴いてこなかったということも要因の一つです。特にradiko.jpが登場する前の2000年から2010年は、ラジオにとってとても厳しい時代でした。どんどん聴かれなくなっていって、この時期にラジオを聴いていなかったのが今の20代。この世代は大人になった今もラジオを聴きません。親にラジオを聴く習慣がないと、その子どもも聴かない可能性があります。

これが30〜40代だと課金してでも聴いてるんですよね。40~50代の方は喜んでradiko.jpを使ってくれる。4世代によってすごく差があります。

―ラジオを聴かない世代にラジオを聴いてもらうために、他にクリアすべき課題はありますか?

「ラジオはダサくてもいい」という考え方を薄めること。「ラジオはノスタルジックなもの」という40~50代のイメージが、若い世代がラジオを聴く上での壁になっている気がします。ラジオは自由なもののはずなのに、考えに柔軟性がなくて「ラジオとはこうあるべき」という考えが強すぎると、新しいものは生まれにくいと思われます。

やきそばかおる

ラジオ の"多様性"を伝えたい

―やきそばさんが今、注目しているラジオ番組について教えていただけませんか?

ニッポン放送はユーチューバーのゲーム実況者を起用した番組を作っています。「ゲーム実況者わくわくバンド」っていうゲーム実況のチームです。最近は再びユーチューバーが注目されつつあり、ユーチューバーを紹介したムック本も発売されています。新しい領域で話題になっている人たちをラジオでどう使っていくか、未知数ではありますが、楽しみです。

あとは、沖縄のRBCiラジオ『動画配信型才能発掘バラエティ にんきもんラジオ』。若手のお笑い芸人ハイアップローが動画配信をしながら放送しています。2018年4月に始まったばかりで、まだまだ試行錯誤といったところですが、今後が楽しみです。

この2番組はアナウンサーでもアーティストでもないけれど、一部の熱心なファンがいる「インフルエンサー」がパーソナリティーを務めているのがおもしろいです。

また、これらの番組とは方向性が違いますが、Date fm(エフエム仙台)の『響鳴乱舞!仙台 DATE-MON』は、伊達政宗とその家臣が番組を進行しているというのがユニーク。CBCラジオの『名古屋おもてなし武将隊 戦国音絵巻』には織田信長、前田慶次らが出演。作りこみがすごいです。

―radiko.jpの話で出た、若い人にどう聴いてもらえるかという課題に挑む感じがありますね。

ラジオ番組は多様性があるのに「 ラジオ =深夜番組」「 ラジオ =声優さんの番組」とか「受験生がこっそり聴くもの」といったイメージが強いのも確か。すると、そこに興味がない人に引っかからない可能性があります。ラジオ には色々な番組があるということを知ってもらうことも大事だと思います。ステレオタイプとの戦いです。

福山雅治さんは、「サラリーマン時代に営業車の ラジオ で流れていた『吉田照美のやる気MANMAN!』を聴いているうちにハマってしまった」というお話をされていました。Mr.Childrenの桜井和寿さんもそういう人のひとり。

ラジオのアピールポイントは「ラジオの醸し出す空気感がおもしろい」というところ。そのあたりをアピールできたら、ラジオに縁がなかった人にも、もっと選んでもらえるメディアになるのではないかと思います。

例えば「FM802をつけたらいつでも楽しい音楽が流れている」といった空気作り。そういう点をもっとアピールしたいですよね。

―やきそばさんのように、ラジオをここまで聴きこんでいる人はなかなかいません。おすすめできる範囲が限られてしまっているんでしょうね。

いろいろな番組があるのに、そこを伝えないですよね。私が「沖縄の番組、おもしろいですよ」って言うと、同業者のライターさんも「そうらしいですね」ってなるんですけれど、実際には聴いていないことも。ラジオを聴いてくれる人を増やしていくには、ラジオの多様性をみんなに知ってもらわなければと思っています。

10代におすすめのラジオ番組はコレ!

―やきそばかおる さんが作成された「「10代も楽しめるラジオ番組 分布図」があるのですが...これ、すごいですね!

<画像をクリックで拡大>

10代向けの番組を紹介するときも先ほどの話じゃないですが、TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』とか、文化放送の『レコメン!』は知ってるけど「それ以外は知らない」と言われてしまうことがあります。

いくつかご紹介すると、まずはInterFM897の『TOKYO DANCE PARK』。これはダンスキッズのための生ワイド番組。ダンスにピッタリな曲を中心にかけています。ゲストに10代のダンサーを呼んだり、海外に行ったときに役立つダンス関連の英語を教えたりして、夢を持たせてくれる番組です。出演する子どもたちが、少し緊張しているところは微笑ましいです。

FM FUKUOKAの夕方のワイド番組『Hyper Night Program GOW!!(ガウ)』には、「クロちゃんのホームルーム」という小学生限定の投稿コーナーがあります。小学生がその日の出来事を投稿するコーナーで、投稿内容が紹介されなくても名前だけは必ず呼ばれます。学校の出席確認みたいな感じで。夜の7時45分からの放送で、家族で夜ご飯を食べながら聴けます。ラジオと小学生との接点をうまく作っています。

FMとやまの『西村まさ彦のドラマチックな課外授業』もいいですね。富山県内の中学生限定で出演者を募ってラジオドラマに挑戦する番組で、演出はアノ、西村まさ彦さん。素敵な番組です。

BSSラジオの『JAZZ PARK』はさらに挑戦的。ジャズが好きな一般の人に番組を任せてしまっています。鳥取大学医学部ジャズ研究会の男性3人が出演した回が特に面白いんです。3人ともジャズに詳しいのなんのって。同世代の子が聴いたら「スゴイ!」って思うかもしれません。知識だけでなく、しゃべりもしっかりしています。一般の人がなかなかしゃべれませんよ。3人でワイワイやっていて自由です。

ちなみに、この番組はアナウンサー的な人もいません。事前にディレクターが出演者と打ち合わせをして番組進行をコントロールしているそうです。たとえば、こうした内容の番組を自分たちでネット配信すると、話が取っ散らかる可能性があるし、なによりも著作権の問題で曲が流せない。その点、ラジオはディレクターが整えてくれることもあり、ちゃんとカタチになります。

最後に、これは絶対ハズせないのがK-mix(静岡エフエム放送)の『FOOO NIGHT ピンソバ』。バカボン鬼塚さんと高橋茉奈アナウンサーが週4回放送している番組で、公開スタジオから放送しているのですが、常時10~20人ぐらいの常連リスナーの方が見に来てるんです。ところが、高橋さんは敢えて後ろ姿しか見えない配置に座ってるのがポイント。たまに振り向いて手を振るぐらい。その距離感がちょうどいいんです。「常連が集まるカーショップは潰れる」という言葉がありますが、距離が近すぎるとうまくいかない危険性があります。

この番組はバカボンさんの手綱捌きによるところが大きくて、選曲にしても「他の番組ではかからない、"耳心地"が良いものをかけよう」とコンセプトを決めて、バカボンさんご自身で曲を選んでいます。

先日、『ピンソバ』が、ビアホールで公開生放送のイベントをやったのですが、数千円のチケットがあっという間に売り切れていました。

それに、この前、radiko.jpで「インタビューしてほしいラジオ番組のパーソナリティー」のアンケートをとったところ、ローカル番組では圧倒的に『ピンソバ』の二人が1位。リスナーは"静岡ローカル"という意識があまりないのかもしれません。ちなみに、バカボンさんは「(K-mixがある)浜松はラジオの首都」とおっしゃっています。

こうした盛り上がりを、東京の人はあまり把握していない気がするのがちょっと残念。

radiko.jpに掲載したインタビューで、バカボンさんが教えてくれた「番組がヒットするコツ」、「高橋さんを起用した理由」について明かしています。全国で10代向けの番組を作っている人におすすめです。

―それは、先ほどおっしゃった"多様性の話"につながっていきますよね。

「日本民間放送年鑑」という刊行物があって、全国の放送局の動きをまとめたものが毎年出版されています。2017年版のラジオの欄は私が書かせていただきました。北海道から沖縄までいろんな番組があることを、みっちりと書きましたよ。

よく、聴取率などのデータの数字を列挙して「ラジオがピンチ」といった話が雑誌やネットの記事に載っていることがありますが、エンターテイメントはイメージが大事。映画やドラマだって「この作品は大コケ!」なんて書かれたら、「これから観よう」と思っていた人は作品に触れる前に離れていってしまいます。

ラジオに関して面白いことはたくさんあるので、これからもラジオにプラスになることを、たくさん発信していきたいです!

やきそばかおる

―やきそばかおる さんのラジオ愛に触れることができて、こちらも思わず熱っぽくなってしまいました。本日はありがとうございました!

(了)

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