1986年テレビ視聴率の動向(80年代の変化) テレビ調査白書
※本記事は1987年に発行したVRDigestに掲載されたものです。
1986年のテレビ視聴率の動向がまとまりましたのでその内容を抜粋して紹介します。
総世帯視聴率の動向
8地区年間平均総世帯視聴率の推移(6時〜24時)〜地区間のテレビ視聴量が均等化〜
テレビ視聴時間が1日1世帯当り8時間というのは依然としてテレビはよくみられていると言えよう。1日1世帯当りの視聴時間を地区別にみると、前年とくらべて減少しているのが関東、札幌、仙台の3地区で逆に増加しているのが関西、名古屋、広島の3地区である。これは、もともとテレビ視聴量の多い3地区が減少し、もともと少い3地区が増加していることになり、'86年と'85年の比較でみると、地区間のテレビ視聴量の均等化傾向がみられたと言えよう。
各地区別の視聴動向はつぎのようになっている。
<関東地区>
1979年以降の総世帯視聴率の動向は、週平均でみると'82年の42.8%が最低で、'84年に45.5%とピークを迎える。しかし以後減少傾向がつづき、'86年は44.4%となっている。これを世帯視聴時間に換算すると8時間ちょうどで、前年にくらベ8分の減少である。
曜日別にみると、世帯視聴時間の減少は平日平均で前年比10分、土曜日は8分、日曜日は4分それぞれ減っている。
<関西地区>
週平均でみると、関東地区がピークだった'84年が関西地区では最低となっている。'86年は41.8%で世帯視聴時間は7時間31分に達し、前年比15分の増加である。関東地区と逆の傾向を示しており、'84年では1時間近くあった世帯視聴時間の差は、'86年では30分に縮まった。
曜日別では、平日平均で前年比15分、土曜日16分、日曜日13分、それぞれ増加している。
<名古屋地区>
調査システムを変更しだ80年4月から、84年までは、週平均視聴率は41%台で推移してきたが、'85年42.4%、'86年43.3%と増加傾向を示してきている。
曜日別でみても、増加傾向が表れており、平日平均で前年比12分増、土曜日5分増、日曜日6分増となっている。平日の増加が他の曜日の2倍に達しているのが注目される。
<北部九州・札幌・仙台地区>
北部九州と仙台地区は'84年4月から、札幌地区は'84年10月から複数テレビ調査となった。しかし3地区とも、'86年は'85年にくらべて視聴率はやゝ減少している。
<広島地区>
'85年4月から複数テレビ調査が開始されたため、'84年にくらべ'85年は大巾な総世帯視聴率の上昇がみられた。さらに'86年は前年にくらべ週平均で視聴時間が8分ふえた。曜日別の視聴時間
の差が大きいのが広島地区の特徴で、平日平均の視聴時間が7時間13分なのに対し、土曜日ほ7時間27分、日曜日は8時間9分となっており、平日と日曜日の差は56分にも達している。
<静岡地区>
'84年10月から、機械式複数テレビ調査が開始された。'85年と'86年をくらべてみると、平日、土曜日、日曜日ともに大きな変化はみられない。
全日(6時〜24時)平均総世帯視聴率の季節変化
関東地区では、5月、6月が低く1〜3月が高いという傾向は、' 86年も変らない。視聴率が最も低い6月は42.8%、最も高い3月は46.9%でその差は4.1%である。'85年の最も低かった5月と最も高かった3月の視聴率の差は5.3%で'86年は1%以上差がちぢまったことになる。'86年はまた、1〜3月、8〜9月の視聴率が前年にくらべ低下していることとあいまって、年間の視聴率が平準化の傾向にあるといえよう。
関西地区は関東地区とくらべて世帯視聴時間が'84年には1時間近く少なかったが、'86年にはその差が30分にまで締まった。これは1月から7月にかけての視聴率の伸びによるところが大きい。
名古屋地区でも関西地区と同じように'86年は'85年とくらべると1月から7月にかけて視聴の増加がみられる。とくに4月から7月にかけての増加は'84年とくらべると際立っている。
'86年全体の特徴は、関西・名古屋地区を除いて、総世帯視聴率は前年並みか、やや減少の傾向にあることだ。月別に総世帯視聴率を追ってみると、各地区とも年平均とくらべて高い月が減少、低い月が増加する傾向を示しており、年間でみた視聴率の平準化傾向が全国的にみられると言えるだろう。
テレビ視聴の変化と傾向
テレビ視聴量H・M・Lの推移 〜関東地区〜
関東地区の6〜24時の1世帯1日当たりの視聴時間は'84年の8時間11分をピークに'85年8時間8分、'86年は8時間0分と減少傾向にある。ここでは'82年と'86年のそれぞれ5月と11月について、全局、全放送時間帯の同時異局を含む世帯延べ視聴時間量での比較を試みてみた。
なお、1日当り平均で11時間以上視聴している世帯をテレビ視聴ヘビー世帯、6〜11時間をミドル世帯、6時間未満をライト世帯と規定した。
① テレビ視聴ヘビー世帯増加
'82年と'86年の視聴時間の分布を比較すると、テレビ視聴ヘビー世欝が増加し、ライト世帯は減少している。1世帯当りの延べ視聴時間をみると'82年5月の7時間39分に対し'86年5月は8時間27分、11月も'82年の8時間20分が'86年は8時間41分に増加している。また、全放送時間帯で同時異局を含む延べ視聴時間と6〜24時の視聴時間の差、即ち、深夜視聴とサブテレビの稼働による視聴分数についても'82年5月の26分に対し'86年5月は38分、'82年11月の32分に対し'86年11月は4Q分と増えている。これはテレビ視聴の時間帯分散傾向とテレビのパーソナル視聴の進行を裏づけるデータと言える。
② テレビ視聴量H・M・L世帯のプロフィール
テレビを1日当たり11時間以上見ているヘビー視聴世帯は家族人数が4〜5人で子供がいる世帯というのが標準である。これは、幼児・小学生・中学生・高校生・主婦・世帯主・高齢者がそれぞれの視聴行動を行なったり、番組によってファミリー視聴を楽しむ3世代もしくは複数の子供のいる世帯と考えられる。
6〜11時間のテレビ視聴ミドル世帯は家族人数が3−4人であるという特徴しか伺えないが、家庭内が2世代か、子供が1人という世帯か。
6時間未満のライト世帯は家族人数が3人以下、24歳以上の家族しかいない世帯が多い。また、専業主婦がいないためか昼間のテレビ視聴が少ないと考えられる世帯が多い。
平均家族人数が3人という時代であり、子供の特性や、主婦年令の高低は視聴時間量とはあまり関係がなく、むしろ3世代か2世代の家庭が同居しているかどうか、子供の人数が多いか少ないかが、テレビ視聴時間量を左右すると思われる。すなわちヘビー世帯の特徴は複数世代の同居、子供の人数の多さにあると言えるし、ライト世帯は24歳以上の人だけがつくる世帯に集中しており、選択視聴を楽しんでいることが伺える。
番組種目別にみた夜間18時以降の視聴傾向
・ますます増える深夜放送
年間の平均放送終了時刻をみると、関東地区は'82年が午前1時、'84年が1時50分、そして'86年は午前2時10分にまでのびた。関西地区でも午前1時57分にまでのびている。0〜2時の週平均総世帯視聴率も'84年以降10%という深夜としては高いレベルで推移しており、とくに関西地区の'86年は16.6%にまで達している。
・報道番組は放送量・視聴分数ともに増加
'82年と、86年を比較すると報道番組の放送分数は関東地区で1日当たり平均で153分、関西地区でも119分の増加になっている。また報道番組全体の平均視聴率は放送分数が大幅に増えたにもかかわらず、関東地区は'82年と同レベル、関西地区にいたっては'82年を上廻る視聴率を示している。これは民放各局の報道番組の見直し作業が反映された結果であろう。
・一般劇は放送量は減少じているが視聴率は好調
関東、関西地区ともに'82年以降一般劇の放送分数は減り続けているが、種目別の平均世帯視聴率は'82年、'84年と横バイであったが86年には上昇に転じた。一般劇の放送が重なる番組編成が少なくなったこと、また、時間帯毎にテレビセットの前に座れる確率の高いターゲットを意識した番組づくりが功を奏してきているのであろう。
(テレビ・ラジオ調査部)