Synapse海外調査部発!激動するインドのテレビ業界 〜インドのアニメ番組を知る3つのポイント! 「2億7千万人の子供」「子供向けから大人」「OTT」〜
2億7,000万人の子供がいるインドには、現在20のアニメチャンネルが存在すると言われています。今後、ネットの普及でさらに加速するとみられるアニメコンテンツの浸透についてSynapse海外調査部では、インド・アニメ時代を予感!さっそく業界関係者に取材を敢行しました。
今回は、Netflixで初のインドアニメとして知られ、アジア・中東・北米に6~11歳の年齢層で人気のアニメ『Mighty Little Bheem』の制作会社Green Gold Animation社の副社長のBharath Laxmipatiさんに話を伺ってきました。
インドのオリジナルアニメキャラクターを数多く制作し、Over the Top(OTT)を利用したオリジナルコンテンツを国内外へ配信する事業にも積極的に取り組んでいる同社。日本と異なる様相を呈するインドのアニメ番組とは?
Green Gold Animation社のBharath Laxmipatiさん
子供の人口がアニメ産業を後押し
─ これまでの経歴と現在の役職をお聞かせください。
もともとのバックグラウンドはITでした。海外で育ったこともあり、アニメ業界という新興市場で働くのに興味を持ち、そこに関わろうと思いました。業界ではクリエイターと創業者と知り合い、メディア制作は非常におもしろいと感じました。
現在はGreen Gold Animation社で複数の役職を兼任しており、主に海外へのコンテンツセールスを担当しています。Green Gold Animation社には従業員は800人ほどおり、若年層が300人ほどを占めています。若年層のワーカーは、アニメの消費者でもあるので、非常に重要な存在です。彼らの声がイノベーションとデマンドにつながります。
Green Gold Animation社のアニメキャラクター
─ なぜインドでアニメが人気となっているのですか?
インドには2億7000万人のこどもがいますので、子供の存在が大きなインパクトをもたらしています。また、TVを保有する世帯も増えています。人数としては2億人ほどですので、こちらもアニメ業界にとっては非常に重要です。今のインドには、20近くのアニメチャンネルが存在しています。
─ 御社の『Mighty Little Bheem』を視聴しましたが、とてもかわいいキャラクターですね。会話がほとんどなかったので、乳幼児を含む子供たちが理解できる内容になっています。
はい、当社ではNetflixでこのプログラムを世界中へ配信しています。日本、ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカでは既に人気となっています。人気が出る理由はストーリーテリングです。
小さな子供でも簡単に理解できるストーリーとなっており、インド文化にも触れ、音楽や演出も工夫しています。このような背景もあり、世界中で評価されています。
Mighty Little Bheem
OTTでインドのローカルコンテンツが求められる時代
─ 日本発のアニメである『ポケットモンスター』のインド人視聴者は5,700万人、その半分が子供というデータがあるそうです。しかし、御社のキャラクターは6,000万人の子供達から支持を得ているとお聞きしました。インドで人気となるアニメキャラクターについてはどう感じますか?
インドでは古くからハリウッドアニメーションが受け入れられていましたが、日本のアニメも人気がありました。特に1970年代の日本のアニメは、家族の在り方などのストーリーがインドの生活様式に似ていたことが要因です。
しかし、近年の日本のアニメは変わってきました。子供向けだけでなく成人向けのアニメもありますよね。その点では昔と異なります。
当社のアニメーションスタジオは2004年に始まりました。当時は海外からアニメのプログラムを購入することが多く、それ自体は容易でしたが、現在ではNetflixがインドのローカルコンテンツを求めているため、その制作作業が多忙を極めている状態です。
─ インドでは、アニメは子供が見るものであり、大人になるとアニメを見ずに映画を見るようになると聞きましたが、実態としてはそうなのでしょうか?
アニメには子供向けと成人向けの2種類があります。例えば、『Shrek(シュレック)』は内容が複雑なダイアログで構成されているので、大人向けとなっています。そのような大人向けのアニメはまだインドにはありませんので、実際に放映されるようになったら大人の間でもアニメの人気が出るのではないかと思います。
─ インドのアニメ業界の将来についてはどのようにお考えですか?最近ではOTTプラットフォームを通じて国内外へコンテンツを配信できるようになりました。また、インドではモバイルユーザーが激増しているので、都市部だけでなく、近い将来にはインド全域でアニメのコンテンツを楽しめるようになるかもしれません。
現在、インドにはスマートフォンを使用する6億人のモバイルユーザーがおり、その中には子供達も含まれます。一つの潮流としては、OTTプラットフォーム上のコンテンツが消費されやすいものとなっているということです。
例えば、子供が『Might Little Bheem』の1話分の番組を20分間見ている間に、お母さんは夕食を作ることができます。将来はそれが一般的になっていくかもしれないですね。
─ 本日はありがとうございました。
<了>