【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】〜第5回 長寿番組になるには〜

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【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】〜第5回 長寿番組になるには〜

【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】 第5回 <毎週金曜更新>

「サザエさん」「笑点」「徹子の部屋」。言わずと知れた長寿番組の代表格。「笑っていいとも!」が終了する際は、それはそれは寂しいものでしたが、これら長寿番組の共通点の一つはテーマ音楽があること。特に上記のそれは個性的で、その音が聞こえると番組を想起せずにはいられません。

「吉本新喜劇」のおなじみのテーマ音楽。あの「ほんわかぱっぱ」というユニークなトランペットの音色を耳にするとたちまち新喜劇モードになります。笑う準備が整う、ある意味、魔法。

ちなみにあれはオリジナル・ソングではなく、1950年代のジャズの曲。番組開始当初、ディレクターさんがそれを使用したのがきっかけで今日に至るわけですが、曲名こそ知らなくとも、この曲がかかるとパブロフの犬のように反応してしまう、凄まじい神選曲と言えます。


映像コンテンツだからと言って、音楽が単なる添え物だと思っていたら大間違い。人は視覚情報よりも、聴覚による情報の方が強く刺激されます。たとえば、楽しげな光景でも悲しい音楽を流したら、それは悲しい状況として捉えられるように。では、はっきり言いましょう。視聴者は、映像を観ているようで、音を聴いています。そう、「サザエさん」は30分のミュージック・クリップ。

最近で言うと、出川哲郎さんの「充電旅」は、曲に"語って"もらうなど、巧みに音楽を使用しているので、ロード・ムービーのように感じます。毎日ないし毎週決まった時間帯に耳にする音。これが視聴者には心地よく、生活リズムに組み込まれるのです。曜日変更はあまり望ましくないのは、こういった観点からも言えます。

あの頃の写真を見て懐かしむこともありますが、よく聴いていた音楽を耳にした時に「あの頃」が蘇る感覚はまさに、耳からの情報が脳に直結していることを意味しています。

「オレたちひょうきん族」の「ウィリアム・テル序曲」を耳にすると体中に笑いの電流が流れました。「笑っていいとも!」の「ウキウキウォッチング」でお昼休みを実感し、「火曜サスペンス」のテーマに、お茶の間はサスペンス色に染まりました。それくらい、我々は音に支配されています。


もちろん、音楽だけではありません。出演者の声も大事。アニメでも、キャラクターのビジュアルよりも、声優さんが変わる方が違和感は大きいでしょう。ビジュアルの違いは次第に受け入れられますが、慣れ親しんだ声が変わると、まるで違うアニメになってしまったかと錯覚するくらい違和感を払拭できません。

ディズニーランドが無音だったらどうでしょう。音楽なしで夢の国には誘われないかもしれません。それくらい、人は音によって感情や気分が左右されます。ある演出家は、舞台の出来を目を瞑って確認するそうです。音だけで判断する。面白いかどうかではなく、いい音楽かどうか。


長寿番組、それはスタンダード・ナンバー。視聴者は観ているようで、聴いている。番組全体を音楽としてアプローチすれば、いつしか視聴者の生活に組み込まれるでしょう。

そしてもう一つ、長寿番組になる秘訣、それは次回お話したいと思います。

<了>

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