【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】 コントは作品になる
【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】第25回
志村けんさんが亡くなられたことは非常に残念でなりません。
亡くなられてから追悼番組がいくつか放送されていました。フジテレビのゴールデンタイムで放送されたのは、志村さんの『バカ殿』や『だいじょうぶだぁ』などの名作コント番組。スタジオにはドリフのメンバーやコントを一緒に演じた盟友たち。
放送される前に僕は「亡くなられてそんなに時間もたってないのに、笑えるわけないよ」と思っていた。コロナが想像していたよりも危険で、これから日本もとんでもないことになってしまうかもと不安が大きくなっていたのもある。
家に帰り、妻と息子がいて、テレビがたまたまついていた。志村けんさんの追悼番組が流れる。志村さんが亡くなった悲しい思いが沸き上がる。だが、コントが始まると、そこにいたのは、志村けんではなく、バカ殿であり、変なおじさんであり、志村さんが演じたキャラの数々。思わず笑い始めてしまった。妻も笑うし、なにより、志村けんさんのコントを見たことのない4歳の息子が爆笑し始めた。
志村けんさんがコントにこだわり続けた理由。コントだと、それは作品になる。古くなることはないのだと。ワインのように年がたつほど価値の出るものもある。
そのコントを見ていて、志村けんさんが数日前に、しかもコロナで亡くなるという悲しい現実を忘れてしまうってすごいことだなと思った。特に研ナオコさんと演じた「赤マムシ~~」のコントは大爆笑したし、それがツイッターのトレンドに入るってすごいことだなと。
志村さんの残したコントたちは、今後、沢山の人を笑わせていくのだろう。
で、そのコントを見ていてハっとしたことがある。いしのようこさんと二人で演じているコントで、セットの中に動物がどんどん出てくるものがあった。最初は猫から始まり、ロバになり、最後には象が出る。僕も過去、自分の書いたコントで象を出したことがあったが、出演料がめちゃくちゃ高い。他の番組では虎を出したこともある。これもめちゃくちゃ高い。
コントのセットの中に象が出てきたのを見て、気づく。「この頃のバラエティー、予算あったんだな~」と。たかだか数分のコントの為に、おそらく100万円以上はするであろう象を出演させていたのだから。しかもセットもあるし、コント一本にいくらかけていたのか?
最近、色んな局で過去の映像が放送されることが多いので、それを見ていて度々思う。「昔は本当にバラエティーってお金がかかってたんだな、もうこういうものをテレビで作ることはないのかな」とか。そして、コント番組って本当になくなったんだなと。
あの日、志村けんさんのコントにより、コロナに怯える不安を一瞬でも忘れることが出来た人って多いはずだ。コントって凄い。笑うって凄い。あのようなコントがこれからまた作られる日を願う。それは地上波なのか、それとも・・・。
<了>