【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】製作自体も異例な「鬼滅の刃」
【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】第29回
劇場版「鬼滅の刃」がとんでもないヒットをしているが、今回この映画は、テレビに大きな革命を起こしたと思っている。
というのも、元々「鬼滅の刃」は週刊少年ジャンプで連載→アニメ化という"黄金の方程式"で制作されたのだが、「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」とは違う。今までの大ヒットジャンプアニメと言えば、テレビ局とタッグを組んで制作されることが多かった。だから映画になる時も、アニメを放送していた局が製作委員会のトップに立ち制作していることがほとんどだ。
だが「鬼滅の刃」は違う。アニメの製作を見ると、「アニプレックス」と「集英社」、「ufotable」になっている。テレビ局の名前は入っていない。
単行本の第一巻から第七巻までの物語を映像化したアニメ「鬼滅の刃」は、2019年4月から9月までTOKYO MXほかにて放送された。
ちなみに、僕は今年「八王子ゾンビーズ」というドラマを作ったのですが、製作委員会でお金を出して制作して、TOKYO MXの放送枠を買わせていただき放送した。この場合、MXで放送しながら、動画配信サービスで並行して配信することも出来た。
アニメを制作して、最初のアウトプットをTOKYO MXで放送するパターンでヒットしたもの、結構ありますよね。
アニメ「鬼滅の刃」がすごいのは、ネットで調べたところ、より多くの視聴者に見てもらえるよう、放送局・配信各社と調整を繰り返し、テレビ局、加えて動画配信サービスに関してもできる限り声をかけ、約20社と契約したらしいのです。
最初に日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京に声をかけたかどうかはわからないですが・・・もし声を掛けられたところがあるとしたら、今頃後悔してるのではないだろうか。
色々な局、配信会社と「契約」したわけであって、一緒に製作をしたわけではない。ここが大きなポイントで。
「鬼滅の刃」が世の中で流行り始めてから、テレビなどではパロディーをやったり、そのことを取り上げたりするテレビ局が増えていった。
今までだと、例えばフジテレビで放送されているアニメを他局が、日本テレビで放送されているアニメを他局が、そのアニメを扱うことに消極的なことが多かった。そりゃそうだ。だけど、「鬼滅の刃」にはそれがない。
だからテレビ局、各局が色々な形で取り上げたことで、より多くの層に届いたはずだ。
そして一番驚いたのは、劇場公開のタイミングで、フジテレビのゴールデンタイムで、「鬼滅の刃」のアニメが放送された。すでに放送されたものを再編集して放送したのである。
結果、視聴率がとても良かったし、この放送が劇場公開をさらに盛り上げたのは間違いない。
この成功をみて、もっとこういうパターンが増えて欲しいと思う。例えば、ネットで配信されている番組や、人気YouTuberがこれまでに配信した動画のテレビ放映権を、テレビ局が購入して、再編集してまとめて放送したり。そんなことが起きるかもしれない。
制作費が減っていく中、こういうパターンで両者が笑顔になれる放送形態が、この「鬼滅の刃」によって生まれていったらワクワクするなと思います。
<了>