〜サンピラーなど北海道の風景の海外番販に挑む!〜2016年TIFFCOM

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〜サンピラーなど北海道の風景の海外番販に挑む!〜2016年TIFFCOM

株式会社a 取締役社長 林 健嗣 (はやし けんじ)

有限会社デジタルコンテンツ CEO/Filmmaker 山﨑 一(やまざき はじめ)


─ お二人の簡単なご経歴を教えてください。まず林さんからお願いします。

僕はもともと札幌テレビにいて、制作現場に40年くらいいました。作ってない番組はないくらいで、『どさんこワイド』の3代目プロデューサーも務めていました。札幌テレビを退社後、海外向けの番組をつくって販売する会社を立ち上げました。共同制作を目的に活動しているのですが、そのためにも制作者の方が重要な存在です。それで山﨑さんと一緒に共同制作をしているんです。

山﨑:私は大学卒業後に、ゲームのソフトウェアをつくる会社に就職しました。その後、北海道にUターンして、印刷会社でコマーシャルとかプロモーション映像制作とか担当していました。独立したのは15年前。独立するときに、ただ受託でプロモーションをするんじゃなくて、自社の柱がひとつ欲しいと考えていました。

もともと旅行好きでいろんなところ行くのですが、当時個人でビデオカメラを持って撮影している人間はいなかったので、写真家とは違うアプローチで風景を撮れるかなと思っていました。そういう考えを大事にしながら、プロモーションや番組のお仕事をしている中で、林さんにお声がけしていただいて、自分の考えをベースとした番組を作るようになっていきました。

山﨑さんと出会った当時、私はまだ札幌テレビにいたのですが、一人でコツコツすばらしい映像を撮っている人がいることを知りました。でも彼がCMを作ったり、彼のライブラリ映像が使われたとしても、彼の名前は一切出てこない。

賞をとっても彼の名前じゃなく、局の名前が出たりする。でも制作者にとって自分でやった!という実感や成長を実感できることは凄く重要なことなんです。今、我々が活動しているマーケットはそういう実感が持てるいい場所だと感じています。

─ 山﨑さんの撮る映像はどういう種類のものが多いのでしょうか。

彼は"光の柱"と呼ばれる光の現象のサンピラー(太陽柱)をずっと撮り続けているんです。その"光の柱"は北海道でも1年に数回しか見ることができない特殊な自然現象です。それを撮るためだけに早朝五時には起きて(夏は三時ですが)、まだ真っ暗で何もカメラにうつっていない中で、その光の現象が現れるまでじーっと待ち続けるんです。

だから彼と付き合ってると私の体が持ちません(笑)。でも、そういう映像撮るのって、普通のテレビ局ではコスト的のことを考えたら、なかなか撮れないんですよね。

山﨑ちょうど日の出のときに太陽の下に氷の柱ができるんです。なかなか見られないですね。

マイナス23度くらいの中で待ち続けて、その一瞬を彼が撮るんです。もう『サンピラーを取る男』っていう名前の彼のドキュメンタリー撮りたい位です。そこには今のテレビが忘れちゃったことがあるように思います。テレビ局の人に彼の映像見せると、そんな時間かけて撮られたら俺ら勝てないよ、ってなると思いますね。

─ 今はどんな作品を販売されているんでしょうか?

彼の息子と北海道の風景を映している作品です。たまに、ここは話したほうがいいよとアドバイスしたりはしますが、基本的には演出はほとんどしないですね。この作品のファーストシリーズは香港の放送局に売れていて、12月に放送されます。他にも、台湾とかサウジアラビアからもお呼びがかかっています。内容が教育的であるということと画が綺麗ってことが、声をかけていただている理由です。

─ 今回のTIFFCOMのようなマーケットにはいつも出展されているのですか?

山﨑はじめて参加しました。実際に参加してみると、バイヤーの方々がどういうものを求めているのかがよくわかりますね。

こういうマーケットに制作者が出るのは非常にいいことですよね。海外のマーケッターからの反応を直接感じられる。彼にそれを体感してもらいたいと思って、今回連れて来ました。

─ 林さんは、今回どのような気持ちでこの場に向き合っておられるのでしょうか。

僕はこのマーケットでコンテンツを売るだけじゃなくて、実際に映像を見てもらって、相手の反応を見ています。日本人の方は、『いつ作るの?』『何分もの?』と聞いてきますが、海外の方は映像を見た後に、まず素朴な感想を言ってくれます。この作品だったら2時間だったらいいんじゃないとか、お金出すから作ってよ、とか。ここは売るためだけの場じゃなく、投資家を募る場でもあるんです。僕の考え方は、行政4分の1、自分4分の1、企業が4分の1、残りがここ。海外からバイヤーに投資してもらうことで、バジェットが大体決まる。支援して欲しい金額の2分の1が行政と企業からいただけていたら、残りの額は大体見えてくるので、こういうところに来るとおのずと目標額は決まってきますね。

─ 海外番販をやってこられた中で、今お感じになられてる課題はなんでしょうか?

販売単価が下がっているのはしんどいです。たとえば、普通は30分の番組って大体5万が相場と言われているのですが、その金額より物凄く安く売っている方がいるそうです。1本当たりは安くても、500本持っていれば、すごい金額になる。でも持っている作品本数が少ない人たちからすると、その相場感になると困るんです。ダビングするだけでも時間がかかりますし、その他、配送したり色々と手間・コストがかかりますので。。。4Kも同様ですね。最初のころは1分1万円くらいだったのですが。今年のMIP(※注釈1)では1分5,000円になってました。4K作品が増えたからっていうのと横並びで風景ばかりの作品だから、という理由ですけどね。

─ 価格の下落はどうすれば食い止められますか?

4Kに関しては、これからは綺麗なだけではなく、面白さを追求しなければいけないですね。そのためには、ストーリー性も必要となってきます。でも、そうしていけば価格が下がらないだろうと思っています。ちなみに山﨑さんの自宅にはスタジオがありますけど、4Kは全部彼のスタジオで編集できちゃうんです。

山﨑ずっと機材にお金をつぎ込み続けています。今度は8Kに投資をするつもりです。

今後は山﨑さんと、短編映画やドラマで活躍する北海道の若手映像監督の山口くんという制作者がいるんですが、二人を組ませて番組をつくりたいと思っています。日本の放送ではできないけど、札幌映像機構さんにも応援してもらいながら、海外のアート的な祭典に出していこうと。そういうコラボも面白いじゃないですか。

(※1)MIP:正式名称はMIPCOM。カンヌで行われる国際番組見本市

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