【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】「教育」と「笑い」
【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】第36回
20年ほど前、僕が構成作家として参加していた人気バラエティー番組で起きた話。
番組で作った架空のキャラクターがいて、結構人気があった。仮にAという名前にしよう。
ある日、一般の家庭の父親からプロデューサーのもとに手紙が届いた。
そのお父さんはAと同じ苗字で、それが理由で娘がいじめられている、と。プロデューサーは番組の演出家に相談したが、たった一人のそういう苦情で人気企画をやめるのはおかしいという話になった。が、そのお父さんから何度か電話がかかってきたため、プロデューサーがお願いして、演出家が直接お父さんと話した。
電話を終えた演出家は会議でみんなに頭を下げて言った。
「お父さんの話を聞いた以上、もうやめます。みんなごめん。だけど、今後二度と、こういうやめ方はしたくない」と言った。
さあ、これが今だったらどうなっていたか?
あの頃はSNSなんてなかった。視聴者がどう思っているか、視聴率という結果以外は、作り手に届く方法はあまりなかった。今だったらSNSなどで、視聴者の思いが簡単に届く時代だ。
僕は明治学院大学でメディアの授業をしている。先日の授業で、150人近くいる生徒に、「なんで、こんなにコンプライアンスが厳しくなったのか、考えてみよう」という宿題を出した。
結果をみてみると、やはり「SNSの発達」と書いてる人がかなり多く、個人の思いが沢山の人に簡単に届くようになったからだと。例えば、先ほどの20年前の番組の問題。今だとしたら、その父親がSNSでそのことを書いたら、あっという間に世間に伝わり、大きな声となることだろう。
一人の意見が、簡単に一万人の声に変わってしまう。それがSNSのすごいところ。
大学生の意見の中で、「自分がSNSで何かを書く時に、それも誰かに見られているのだと思って意識している。だから本当に自分が思ったことをそのまんま書くのではなく、不特定多数の人に見られていると思って書いてしてしまう」というのもあった。そういう人は多くいて、それが結果的に、コンプライアンスが厳しい時代になる一つの要因となるのではないか、と。確かにね。
そして、一番興味深かった意見。これはSNSのことではなく、道徳教育のこと。
自分たちが学校で受けてきた教育が、昔の人達とかなり違うと。いじめや、貧困、身体的なことに対しての偏見などに関して、すごく「教育」されてきたから、「笑えない」ことが多いのだと。この意見の人も結構いて、かなり納得してしまった。
作ってる側からすると、若い人たちがそういう笑いに触れてないだけで、見たらきっと笑ってくれる、と思っている人も多いかもしれない。だけど、受けてきた「教育」が違うということは、僕たちの時代におもしろいと思っていたことは「おもしろく感じない」のだ。
だから、見たらおもしろいとか、いつかわかってくれるとか、そういう気持ちは捨てるべきなのだと、とても深く勉強になりました。
<了>
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