【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】人生を変えたラジオとの出会い。電波にのせて届ける想いとは〜FM802『LNEM(エルネム)』DJ田中麻希さん他
ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO 第47回
「常に『あなたに届けます』という思いを大切にしています」
と話すのはFM802『LNEM(エルネム)』(月曜〜水曜 27時〜30時)の月曜日を担当している田中麻希さん。田中さんはFM802のDJオーディションに合格。2021年4月にDJデビューを果たしました。
田中さんは大学を卒業後、銀行員として働いていました。「この仕事は本当に自分のやりたいことなのだろうか」と悩んでいた時に、ふとしたことがきっかけでラジオの楽しさに出会います。マイクの前に座って半年。今回は、リスナーに向けて常に楽しそうに音楽と言葉を贈っている田中さんの素顔に迫りました。
◯FM802との出会いは突然に
やきそば ラジオDJになろうと思ったきっかけは何ですか?
田中さん ある日、飲食店に入った時、店内にFM802が流れていました。それまでラジオは聴いてこなくて、聴いているうちに「こんなに温かい世界があるんだ!」と感激したんです。中学・高校時代は吹奏楽をやっていましたが、ポップスやロックには疎かったので、私が知らなかった音楽がラジオには溢れていることにワクワクして、楽しい気持ちが一気に芽生えてきて、世界の見え方が変わりました!
やきそば よほどのことだったんですね!
田中さん 学生時代は吹奏楽を楽しめていない状態でした。幼稚園の頃からピアノを習ったり、吹奏楽部でクラリネットを演奏していたりと音楽にはなじみがあったんですけど、求められるものに追いつくことに必死で、音楽は楽しいものというよりは努力するものという印象が強くなっていました。
大学時代は音楽から離れてしまい、銀行で働いていた時にFM802を聴いてロックやポップスに出会って、自分のなかで何かが爆発したといったところです(笑)。
やきそば お店でFM802の番組を聴いて以来、すっかりラジオが居場所になったということですね。
田中さん "ラジオネーム"の存在もあるのかもしれませんが、ラジオは自分の鎧をとっぱらえる安全な居場所という感覚です。たとえ仕事がうまくいかなくても、安心して帰れる場所があるなんて素敵ですよね。
ラジオにのめり込んでからはライブハウスにも足繁く通い、関西はもちろん、東京や名古屋など年間50回以上行きました。6時始発の新幹線に乗って東京から職場に向かったこともありました。そのうち、聴く側から届ける側になりたいと思うようになりました。
やきそば 特にハマった音楽は何ですか?
田中さん ラジオDJになる前は特に邦楽ロックに支えてもらいました。その後DJになってからは、洋楽も含めて好きな音楽がさらに増えました。ラッパー、トラックメイカーのクボタカイさんや、竹内アンナさんなどジャンルを問わず、ライブにたくさん足を運んでいます。今はさまざまな音楽に触れて曲の紹介ができることがすごく幸せです。楽曲に込められた思いを察しつつ、音楽を抱きしめながら紹介したいくらいです。
イントロが短い曲もありますが、できるだけ曲に入る前に紹介をして、リスナーの皆さんに今までとはまた違った印象で聴ける体験をしていただけたら嬉しいです。もう一度聴きたいと思ってもらえたり、ライブに行ってみたいと思ってもらえるような言葉を添えています。
やきそば 曲を聴いていくうちに歌詞だけではなく、ミュージシャンのバックボーンまで気になって、冒険が始まる感覚がありますよね。
田中さん あります! どんな言葉を選んで、どのように伝えるかを頭で考える、楽しい旅に出ます。ミュージシャンのSNSを見たり、ほかの番組に出ているのを聴いたり、楽曲に込められた思いを汲み取ったりと、やることは果てしなく多いのですが、素敵な言葉とともに伝えられるように冒険しています。
◯夜中から明け方に向かう間の物語に寄り添う
やきそば 田中さんの『LNEM』は初回からちょくちょく聴いていまして、ラジオDJとしての上達が早いのを感じます。
田中さん 自分では全くそう思っていないのですが、もし本当だとしたらスタッフの皆さんと聴いてくださる方々のおかげです。番組が始まる前は「反応がなかったらどうしよう」と不安に思っていたのですが、いざ始まってみるとメールやSNSでたくさんの反響をいただきました。なかには初回の放送で私の曲紹介を聴いて感動したことを報告してくださる方もいて、皆さんの反応が原動力になっています。
赤ちゃんが生まれる直前にメッセージを送ってくださった男性もいました。コロナ禍で人数制限があるため、病院に入らず車内で『LNEM』を聴きながら待っていたそうです。番組が終わった直後に新しい命が誕生したことを教えてくださいました。
夜中から明け方に向かう間に展開される、それぞれの物語に寄り添うべく、一つ一つを大切にしていきたいと思いました。
◯始まってみるととにかく楽しくて
やきそば 実際にFM802でDJを務めてみていかがですか?
田中さん DJの皆さんはとても優しくて、困ったことがあると相談に乗ってくださいます。私が番組の準備に入る時にオチケンさん(落合健太郎)にお会いすると「最近どう?」って声をかけてくださったり、ライブ会場で皆さんにお会いした時もお話ししてくださいます。スタッフの皆さんにもアドバイスをいただいたり、音楽のことを教えてもらったりしています。
ありがたい環境だからこそ、ノビノビと楽しくできています。6月頃には歓迎会を兼ねたリモート飲み会を開いてくださいました。自分ひとりがうまくいけたらそれでいいという感じではなくて、全員で音楽とラジオを盛り上げていこうという雰囲気があります。
やきそば 番組を聴いていた側から、話す側になる感覚って不思議じゃないですか?
田中さん 始めは、いつも聴いていたFM802の電波に乗って喋っている感覚に慣れませんでした(笑)。radikoのタイムフリーで自分の声が聴こえてくることも不思議でした。
やきそば 初回のことは覚えていますか?
田中さん よく覚えています。本番前からすごく緊張していて、人に会う度に「私、緊張していて...」と伝えていて、守衛さんにも告げたほどです(笑)。ただ、放送が始まった時、DJの土井コマキさんをはじめ、ブースの外でたくさんの方が見守ってくださっていて、その瞬間に気持ちが楽になりました。
やきそば 始まったらどんどんやっていくしかないですよね。
田中さん 放送中は「楽しもう」という気持ちでした。ディレクターさんにも「とりあえず元気に!」「とりあえず楽しく!」と何度も背中を押されました。
やきそば 生放送中は視線をどのように動かしていますか?
田中さん 始めはどのタイミングでどこを見ればいいのかすら分からなかったんですけど、最近はかなり慣れてきました。メッセージを紹介する時にディレクターさんの反応を見て、頷いていたり、表情が笑ってたりするとホッとします(笑)。
あとは、時折、空の様子も見ます。「空が少しずつ明るくなってきましたね」と伝えることで、リスナーの皆さんと夜と朝が交差する時間を共有している感覚になります。遠くに明かりがついているビルがあって働いている人がいることを実感したり、明け方に雨が降るなかでジョギングをしている人がいたりして、さまざまな人の生活を垣間見ることができます。
やきそば 田中さんのトークは心がぶれないというか、安定していますよね。
田中さん 音楽を届けたいという思いでラジオDJになったので、時間(秒数)を見るのではなく、曲にのって喋ることをすごく意識しています。オンエアする曲が決まると、何度も聴いてイントロの部分を頭に入れるようにしています。
やきそば 心が温かくなるような抽象的な表現を使うことがありますが、それは田中さんが絵本が好きだから(※FM802ホームページの田中さんプロフィールより)ですか??
田中さん 保育士の資格も持っていて絵本はすごく好きなんですけど、抽象的な表現を使うのは、余白があったほうが聴いている人に想像してもらえるのではないかという思いがあります。
私は言葉が好きなので、心に響く言葉を探っています。広告のコピーも好きで、J-WAVEで放送している松居大悟さんの番組『JUMP OVER』(水曜26時~27時)から誕生した舞台「みみばしる」(主演:本仮屋ユイカ、作・演出:松居大悟、音楽監督:石崎ひゅーい)で使われていた「人生なんてぜんぶかんちがい」が特に好きです。
やきそば 「みみばしる」の舞台も観に行かれましたよね?
田中さん FM802を聴き始めてから演劇にも興味が湧いて、それで「みみばしる」も観に行きました。まだFM802のオーディションを受ける前(2019年)の話です。
やきそば 田中さんが『LNEM』でDJを務め始めた頃、松居さんがコメントゲストとして登場したこともありましたよね。
田中さん 松居さんが主宰している劇団「ゴジゲン」に興味を持ちまして、京都で公演があった時はスタッフとしてお手伝いをさせてもらったこともありました。
やきそば 田中さんは好きなものに対して「好き」と公言するタイプですよね?
田中さん 内に秘めておくよりも言ったほうがいいと思うんです。自分が好きなものを人に肯定してもらえなかったら寂しいから言わない人もいるけど、私は好きだという気持ちだけで突進してきたので、社会人になっても大好きなものに出会えたことに感激しています。
やきそば 確かに、好きなものを「好き」と言うことで仲間が増えるし、救われる人もたくさんいますよね。
田中さん 聴いている方も同じものが好きだとすると、そこから"好きの輪"が広がっていくこともあると思うんです。逆に私が知らないことに関しては知ったかぶりをせずに「知らない」と言うようにしています。すると優しいリスナーの皆さんが教えてくださいます。
以前、とあるコンビニの新商品の話をしていて「確か、もうお店に並んでいるのでは」と話したところ、「次の搬入の時に入ってきます」と教えてくださったコンビニの店員の方がいました。SNSでキャッチボールが生まれるのも面白いですよね。
◯音楽のあとの余韻も大切に
やきそば 田中さんは豆知識を織り混ぜながら曲紹介をすることがありますよね。いつも感心しています。
田中さん 豆知識の内容は曲から着想を得ることが多いです。
やきそば それで曲の内容とリンクしているわけですね。
田中さん できるだけ、曲を聴いたあとの余韻で聞きたい話をするようにしています。例えばYOASOBIの「大正浪漫」なら大正時代ってどんな時代だったんだろうとか、何が起きたのかとか、自分で気になったことを紹介しています。歌詞に花の名前が出てきたらその花にした理由を考察したり、見頃を調べたり、それが3月だったら合格発表とからめて話したりします。
やきそば 音楽を伝えたいという目的がはっきりしているから行動に移せるんですね。単に楽しい話をしたいだけではなく、その先を行っている気がします。
田中さん 音楽を届けたい気持ちが強すぎて、このあとどんな内容の話をすれば楽しいか、と考えながら届けています。
やきそば ラジオDJと構成作家の役割をひとりでやっていますよね。
田中さん そう仰っていただけると聞こえは良いですが、反省点はたくさんあります。『LNEM』のほかの曜日の先輩の桜井(雅斗)さんも田村(淳一)さんもすごく個性的なので、私は自分ができることをやろうと思っています。
やきそば ありがとうございます。今後の発展をお祈りしております。
後半は深夜から明け方に放送されている生放送の音楽番組を紹介します。
文化放送『ヴァイナル・ミュージック〜歌謡曲2.0〜』(月曜〜金曜 27時〜28時45分)は「古き良きものを新しく魅せ、新しいモノを親しみやすく魅せる」、「音楽を通して時代をつなぎ、世界をつなぐ」がコンセプト。アナログ・レコード(ヴァイナル・レコード)音源を中心に歌謡曲やシティーポップなどをオンエアしています。
パーソナリティーはシンガーソングライターの703号室(月曜)、声優として活躍している豊田萌絵(火曜)、姉妹デュオ・ゆりめり(水曜)、マルチクリエイターのコバソロがセレクトした女性アーティスト、コバソロ・スペシャル(木曜)、坂口愛美アナウンサー(金曜)。豊田萌絵さんは松田聖子の大ファンで、マニアックな知識を惜しげもなく披露することがあります。
番組のSNSではレコードのジャケット写真を一部公開。懐かしい気持ちが蘇ってきます。
千葉のbayfm『Song of Japan』(木曜 25時〜28時53分)は民放のFMの番組としては珍しく、歌謡曲を中心に放送しています。
DJは島村幸男(島ちゃん)&田中美和子(お美和子さま)コンビ。お美和子さまの頭の回転の速さ、島ちゃんの日常の話はもちろん、「どこで見つけてきたんだろう」と思うような珍盤も多く、オンエアリスト(bayfmの公式サイトやradikoで確認可能)を見ているだけでも楽しいです。
FM NACK5では『NACK5時ラジ』(月曜〜金曜 5時〜6時)を放送。DJはNACK5リスナーにおなじみの高森浩二(月・水・金曜)、片桐八千代(火・木曜)。
カーテンをあけて心にスイッチを入れるように、朝の準備をしながら聴くにはピッタリの雰囲気。その日のNACK5のワイド番組の内容が分かる予告などを放送しています。月曜は「きいやま商店の朝だよ!ハイサイ!」(5時30分〜5時40分「NACK5時ラジ」内)もあります。
J-WAVE『KURASEEDS』(月曜〜木曜 5時〜6時)はジワジワと体に染み込むような爽やかな音楽と、ナビゲーターを務める山中タイキの素敵な声質で伝えられる暮らしに役立つ情報が、ラジオを聴いている人を包み込みます。パートナーはkufura編集長の佐藤明美さん。
10月には特別企画として、リスナーが「言われてうれしかった言葉」を織り込んだラジオドラマ企画を実施。朝から温かい雰囲気に包まれました。SNSも活用しつつ、楽しいものを提供しています。
J-WAVEの金曜から日曜の早朝は『MORNING VOYAGE』(金曜〜日曜 5時〜6時)。ナビゲーターは、リポーターやキャスターなど幅広いフィールドで活動する小林麗菜(金曜)、マイルドな声でミックスに定評があるnico(土・日曜)。
リスナーから届いた"朝の音"を使ったミックス企画もあります。のんびりしたい人にも、これからジワジワと動き出す人にも、はたまたこれから寝る人にも優しい番組。
ZIP-FM『Rolling Out!』(月曜〜金曜 5時〜6時)は成田真美が音楽と情報をナビゲート。とにかく元気な成田さん。朝刊チェックのコーナーではさまざまな話題に触れていきます。ほかの番組ではあまり紹介しないような話題や、東海地区の話題を積極的に拾っているのがポイント。ちなみに"rolling out"は「ベッドから起き出す」という意味。音楽とトークのバランスも秀逸。
ROKラジオ沖縄『暁で〜びる』(月曜〜土曜 5時〜6時50分 ※土曜は6時45分まで)は民謡の番組。盛和子と吉田安敬(次男)が親子で放送しています。話す言葉はウチナーグチ(沖縄の言葉)ですが、安敬さんはややヤマト言葉に寄せたウチナーグチ。沖縄にゆかりのない人でもふたりの会話の3割くらいは分かります。沖縄の雰囲気を大いに味わいたい人にはうってつけ。
言葉の意味は分からなくても、ふたりが大笑いしているのを聞くとほっこりした気持ちになります。
<了>