【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】「アバター2」の成否が占う今後の米映画興行
コロナ禍の影響を受けたアメリカの映画館が通常営業を再開させてからしばらくが経過したものの、いまだに完全復活には至っていない。コロナ前の2019年の北米年間総興収が113億ドルだったのに対し、2022年は11月中旬の時点でわずか65億ドルだ。
「トップガン マーヴェリック」をはじめ、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」などの大ヒット作が生まれているにもかかわらず、どうして興収が伸びないのか?
世界最大の映画館チェーンであるAMCシアターズのアダム・アーロン最高経営責任者(CEO)は、「メディアはコロナの影響や動画配信の充実などを理由として挙げるが、観客が映画館に足を運ばない真の理由は公開本数の少なさにある」と株主総会で断言している。
確かにアーロンCEOの言う通りで、メジャースタジオはコロナ前と比較して公開本数を大幅に減らしている。小・中規模作品は自社の動画配信サービスのオリジナル映画として配信され、大作映画に関しても出し惜しみをしている。コロナの影響で制作が滞っていることに加えて、現在の映画興行が不安定な状況にあるためだ。
そのなかでもユニバーサル・ピクチャーズは果敢に新作の劇場公開を行っているが、ジャド・アパトーがプロデュースするゲイ同士のロマンティック・コメディ「Bros(原題)」や、実話をもとにした社会派ドラマ「She Said/シー・セッド その名を暴け」は、いずれも批評で好成績を獲得したにもかかわらず、興行で撃沈。
その一方、パラマウント・ピクチャーズの低予算ホラー「Smile(原題)」は北米興収1億ドルを超えるサプライズヒットを記録。マーベル・スタジオの最新作「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」も予想通りの爆発的なスタートダッシュを切っている。
作品の規模にかかわらず、エンタメ性の高い作品のみがヒットする傾向があるようだ。
そんななか13年ぶりに公開される「アバター」待望の続編「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の興行成績に注目が集まっている。
「アバター」といえば、前作は世界歴代興行ランキングのトップに輝く歴史的な大ヒット映画である。
その後、キャメロン監督は続編4作品からなる壮大な5部作構想を打ち立て、長い年月を費やして準備を行ってきた。「アバター: ウェイ・オブ・ウォーター」は記念すべきその第2作となる。
だが、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の成績次第では、5部作構想の修正を強いられることになるだろうと、キャメロン監督は英Total Filmの取材で答えている。
「公開後3ヶ月もすれば、『アバター』が終わりかどうか、市場が教えてくれるはずだ」とキャメロン監督はコメント。
「この作品を書いた頃と今では、違う世界になってしまっている。いまやパンデミックと動画配信というワンツーパンチにも見舞われている。あるいは逆に、この作品が映画館に行くことの意味をみんなに再認識させてくれるかもしれない。この作品にはそれだけの力がある。問題は、いま、どれだけの人が『アバター』を気にしてくれるのかということだ」
すでに「アバター3(原題)」は制作中なので中止にはできない。だが、もし「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の興行が振るわなければ、5部作構想を諦め、「アバター3(原題)」で完結させる方向に舵を切るという。
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の興行成績が、今後の米映画興行の行方を占うことになりそうだ。
<了>