【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ディズニーアニメ「ストレンジ・ワールド」興収振るわず。米興行界は復活したのか?

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ディズニーアニメ「ストレンジ・ワールド」興収振るわず。米興行界は復活したのか?

「アバター」の13年ぶりの続編となる「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が公開5日間で世界総興収5億ドルと好発進した。

莫大な製作費が投じられているため、目標とされる20億ドル台に到達できるかはまだ不透明であるものの(ちなみに前作は29億2200万ドルで歴代1位)、この結果に関係者のみならず業界全体が胸を撫で下ろしていることだろう。


アメリカの映画興行界は、コロナ禍からの回復が叫ばれて久しい。実際、2022年は北米興行成績7億ドル超えの「トップガン マーヴェリック」というメガヒット作が生まれ、「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」(4億4500万ドル)、「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」(4億1133万ドル)、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」(3億7600万ドル)、「ミニオンズ フィーバー」(3億6900万ドル)が続いている。(いずれも2023年1月10日時点)


しかしその一方で、依然として公開本数は少なく、興収が振るわない作品も少なくない。おまけに、新型コロナウイルスに加え、インフルエンザ、RSウイルス感染症のいわゆる「トリプルデミック」が大流行している現在、外出控えのムードが再び高まっている。

そんな最中での「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の健闘は、エンタメ度が高い良作であれば観客が映画館に足を運んでくれることの証明とみることができる。


逆に苦戦を強いられているのは、大人の観客を対象にした映画だ。

たとえば、「アメリカン・ハッスル」「世界にひとつのプレイブック」のデヴィッド・O・ラッセル監督の新作「アムステルダム」は、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、テイラー・スウィフトという豪華キャストを揃えながらも、オープニング週末3日間で640万ドルという散々なデビューとなっている。製作費は8000万ドル、世界市場での広告宣伝費は7000万ドルといわれるため、最終的には1億ドルの損失を負うものとみられている。

だが、同様に大人を対象にした「エルヴィス」の北米興収は1億5000万ドルを超えており、大人の観客全員の足が映画館から遠のいているというわけでもなさそうだ。12月23日に全米公開された、製作費1億1000万ドルを投じたデイミアン・チャゼル監督(「ラ・ラ・ランド」)の新作「バビロン」の結果に注目である。


さらに苦戦を強いられているのはアニメ映画だ。

「ミニオンズ フィーバー」を除くと、軒並み不振である。製作費2億ドルをかけたピクサーの「バズ・ライトイヤー」の北米興収は1億1800万ドル。

1億8000万ドルを投じたウォルト・ディズニー・アニメーションの「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」の北米興収は公開5日間で1800万ドルと、ディズニーに1億ドル以上の損失をもたらすことが確実視されている。


「バズ・ライトイヤー」にしても、「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」にしても、批評家の評価、ならびに観客の満足度は高くはない。それでも、口コミが広がる前の公開週から低調であることには別の理由があるはずだ。

「ミニオンズ フィーバー」が大ヒットしている状況をみる限り、ファミリー観客層が感染を恐れて映画館を避けているわけでもなさそうだ。


考えられるのは、コロナ禍を経て、観客がディズニー作品を家庭で視聴することに慣れてしまった可能性だ。

ディズニーは映画館の閉鎖と自社配信サービスのプロモーションを名目に、「ソウルフル・ワールド」「あの夏のルカ」「私ときどきレッサーパンダ」といったピクサーの新作アニメ映画をDisney+で独占配信してきた。そのため、ディズニーアニメを自宅で観賞する習慣がついてしまったのではないだろうか?


なお、過去2年にわたり指揮を執ったディズニー最高経営責任者のボブ・チャペックは、経営責任を取り退任。前任者のロバート・アイガーが復帰している。カリスマ経営者がディズニーをどう立て直すのか注目だ。

<了>

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