【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ハリウッドがまたストライキに突入か。脚本家組合が強硬姿勢の理由

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ハリウッドがまたストライキに突入か。脚本家組合が強硬姿勢の理由

2007年から08年にかけてハリウッドで長期にわたりストライキが発生したが、現在、再発の可能性が囁かれている。


前回のきっかけは、デジタル配信など新しいメディアにおける脚本家の権利をめぐり、米脚本家組合(WGA)と映画会社、テレビ局、配信業社などが所属する業界団体Alliance of Motion Picture and Television Producers(AMPTP)との労使交渉が決裂したことによる。

2007年から100日間にも及び、映画やテレビドラマの多くが凍結され、業界全体に大きな打撃を与えた。


そのWGAの現行契約が5月1日に満了を迎える。3月20日から交渉に入るものの、WGAの要求は多岐に及び、AMPTPも景気後退で容易に譲歩できる状態にはない。

決裂は必至とみられ、すでに映画やテレビ局はストライキに備えて制作を急がせているという。


WGAが対決姿勢を強固にしている背景には、ビジネスモデルの変化にある。デジタル配信全盛の現代において、旧来のテレビ放送に合わせた労働協定だと、脚本家たちは生活維持が難しいという。


具体的には、著作権使用料(印税)がある。あるドラマの脚本を執筆すると、当然、脚本料が発生する。

さらに、そのドラマがケーブル局や海外で再放送され、二次使用されると、そのたびに脚本家に印税が入る仕組みになっている。そのおかげで、仕事がないときも脚本家は食いつないでいくことができるわけだ。


だが、現行契約では、動画配信の印税がテレビ放送よりも低く抑えられているという。さらに、配信会社向けのオリジナル作品は他局では放送されず、おまけに再生回数などのデータが公表されない。

脚本家にとってブラックボックスと化しているのだ。


「ミニルーム」の台頭も、デジタル配信がもたらした変化だ。かつてドラマ企画を持ち込むと、テレビ局はパイロット版として第1話の制作を発注していた。その脚本を執筆するのは、たいてい企画した脚本家である。

その後、パイロット版が評価され、制作にゴーサインが下りると、脚本家は自らが「ショーランナー」となり、脚本家たちを集めて「ライターズルーム」を開設することになる。

会議室に脚本家たちを集め、シーズン全体から各話のストーリー構成を決めていくのだ。ライターズルームに参加する脚本家たちには週給が支払われ、エピソードの執筆が発注されると、脚本料も与えられる。


だが、デジタル配信向けドラマでは、パイロット版を割愛し、いきなりフルシーズンの制作が発注されるケースが増えてきた。

その場合、企画者の脚本家は数人の脚本家たちと「ミニルーム」を開設し、フルシーズン分の作業を短時間で行うことになる。通常のライターズルームが10人前後であるのに対し、この場合は半数以下であるため「ミニ」と名付けられている。

仕事量は同じなのに、担当する人数が少なくなるので、一人当たりの負担は当然大きくなる。WGAは1作品に携わる脚本家数を確保できるように、人数の下限設定を求めている。


「労働時間」も大きなテーマだ。主要ネットワークで放送されるテレビドラマは1シーズン22話前後だが、デジタル配信では10話以下が当たり前になっている。

その一方で、脚本家が1シーズンに携わる期間は10ヵ月と変わっていない。脚本家はエピソードごとに報酬を得ているため、時給で考えると半分になってしまっているのだ。

そのため、1話あたりに脚本家が携わる労働時間に上限を設け、それを超えた場合は残業代を支払うように求めているという。


迎え撃つメディア企業側も株価や加入者の低迷などを理由に、リストラやコスト削減を推し進めている。労使交渉の行方に注目だ。

<了>

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