「オンデマンドネイティブ」の誕生とテレビ(上)〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから"第五回〜

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「オンデマンドネイティブ」の誕生とテレビ(上)〜生活者と「映像コンテンツ」の

ひと研究所では、広がる動画サービスが現在の生活者の日常にどのように取り入れられているのかを知り、今後、メディアビジネスにどのような変化をもたらすのかを探る研究を進めています。

これまで4回にわたってご紹介してきましたが、今回は視点を変え、「未来の視聴者」である『子どもと動画サービスの関係』に焦点をあてたシリーズをご紹介していきます。

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【Kids/ex】 【ACR/ex】

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現在の急速なメディア環境の変化は、大人に限らず子どもたちにも及んでいます。皆さんもご承知の通り、子どもたちにとって親しみのある動画、ゲーム、漫画、音楽といった情報メディアコンテンツを始め、ICT教育や教育アプリといった学習環境、友人や家族でのコミュニケーションも含め、生活空間全般においてデジタル化が進んでいます。

筆者含め本研究チームのメンバーの家庭には、乳幼児から中学生の子どもがおり、彼らが日々私たちの育った環境と圧倒的に異なるメディア環境下にいることを実感しています。現在の子どもたちにみる多様なメディアの原体験は、将来のライフスタイルや行動に大きな影響を与えることになるでしょう。

メディアビジネスに対するインパクトを予測するには、現在進行中の事実をつかむ必要があります。これまで連載してきた新たな動画サービスの浸透を、対子どもたちに視点を移し、どのようなことが起きているのかを明らかにしていきたいと思います。

サマリー
・子どものメディア接触時間、一日平均でテレビ106分、インターネット36分。 年代が上がるほどどちらも長く。
・ネットの利用は「動画視聴」が増。
・子どもの利用率も圧倒的に高い「YouTube」
・有料動画配信サービスの利用率は、「乳幼児がいるファミリー」が最も高い

テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル②〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第四回〜
テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル①〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第三回〜
第テレビ放送と動画サービスのイメージは違う?!〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 二回〜
動画サービスの視聴実態〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから"第一回〜

子どものテレビとWEB接触の実態は?
〜テレビは一日平均106分、インターネット36分〜

現在の子どものメディア接触実態はどのようなものでしょうか。当社のKids/ex調査(図1)によると、男女3〜12才のメディア接触時間量は自宅内外合計で1日当たりテレビは106分、WEBは36分となっています。学年別では、「小学校高学年」のテレビおよびWEBの接触時間が最長です。

【図1】子どもの一日平均メディア接触時間(自宅内外合計/週平均)
(Kids/ex2018年10月調査 関東地区)
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背景には年代による生活行動の特徴があります。学年が上がると、塾や習い事等で在宅時間が短くなり、自宅内での勉強時間が増加するものの、睡眠時間が徐々に短くなることで子どもの「可処分時間」は相殺されてほぼ変化しないという傾向があります。(図2)

【図2】一日の中の子どもの生活時間の比較
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その上で、成長に応じて室内で好む遊び方が変化することや、番組コンテンツに対する嗜好性が変わることなどから、子ども自身が積極的にメディアに触れる生活にシフトしていくと考えられます。弊社のこれまでの研究では、9才前後で子ども向けコンテンツから徐々に離れ、大人と一緒にバラエティやドラマを楽しむようになるという傾向もみられました。

さらにWEBに関しては、近年高学年になるほどスマホなど個人端末の所有率が高まっていることも影響しているでしょう。内閣府の統計データによると、現在、小学生でスマートフォンの所有率は35%、さらに中学生では63%、高校生では93%に達しています。(※1)

さらに、近年の子どものインターネット利用状況は低年齢化、長時間化しており、内容は動画視聴がメインになってきています。特に、この「利用コンテンツの動画視聴化(=動画シフト)」においては、短期間で目覚しいものがあり、平成30年(2018年)の調査では動画視聴利用率は78.6%に上っています。ここ3年連続で17才以下のインターネット利用内容のトップとなっています。

つまり、子どもの生活空間において、テレビも含めて様々な動画がかつてないほど身近になり、かつオンデマンド化してきたといえるのです。

私たちはこのように、幼児期から動画サービスを利用する世代を「オンデマンドネイティブ」と定義し、「未来の視聴者」をとらえる切り口にしていこうと考えます。
ここからはその「オンデマンドネイティブ」の実像を見ていきましょう。

子どもと動画サービスの関係〜圧倒的に強い「YouTube」

子どもの「動画シフト」の具体的な事象として、主要なプラットフォームとの関係を「1ヶ月以内利用率」でみてみます。「YouTube」は全体で7割、未就学児から小学校高学年までほぼ一律になっています。視聴コンテンツは違うとしても、未就学児から小学校高学年をカバーするプラットフォームとして浸透力が絶大です。(図3)

一方で、有料動画配信サービスは、全体として主要3社「AmazonPrime、Netflix、Huluいずれかを利用」は約15%となっていました。なお、12〜69才の個人全体でも13%となっており同水準です。(図3・4)他社調査等(※2)を見踏まえてみても、現状の普及率はこの13〜15%前後と考えられます。

さて、この「13〜15%前後」がこれからどこまで伸びていくかは、メディアビジネスにおいて気になる動向のひとつです。色々な読みがある中で、兆しとなるデータがあります。

【図3】子どものWEB動画1ヶ月以内利用率(Kids/ex2018年10月調査
および・ACR/ex2018年4-6月調査(関東地区)
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【図4】主要有料動画配信サービス別1ヶ月以内利用率内訳
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静かに進む、動画配信サービスの「低年齢児ファミリー層」への普及

「主要有料動画配信サービス」の1ヶ月内利用率を同居家族に子どもがいる人別にみたのが図5となります。乳幼児がいる家庭の利用率が最も高く19%。子どもの年代が幼いほど利用率が高いことがわかります。

つまり、有料動画配信サービスは、現在は低年齢児家庭により普及が進んでいる可能性があるのです。

【図5】子ども同居属性別主要有料動画配信サービス利用率
(ACR/ex 2018年4-6月 12-69歳男女全体/東京50Km圏)
※1ヶ月以内・AmazonPrime、Netflix、Huluのいずれか利用者
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なお、乳幼児と同居している年代は30代前後が中心であり、共働き世帯が増加する中では、ネットショッピングの利用は一般化しているとみられます。有料動画配信サービスで1割超となっている「AmazonPrime」のケースで想定すると、子どもの誕生によってオムツや子ども用品などの生活必需品増え、当初は配送特典からPrime会員になる人も少なくないかもしれません。

改めて思い起こすと、Amazonの近年の広告訴求は、ベビーやキッズといったファミリー層に向けたメッセージが多数あることがわかります。

一旦Prime会員になると、バンドルされた動画サービスに利用が広がり、生活に視聴行動が定着するといった可能性が考えられます。このような形で今後も堅調に有料動画配信サービスが普及していくとすれば、いずれファミリー層の一定数に有料動画配信サービスが浸透し、テレビの視聴環境全体に影響を与える可能性も考えられます。
YouTubeにみならず、有料動画配信サービスも無視できないのが『子どもと動画サービスの関係』の現状なのです。

子どもたちへのテレビ以外の動画サービスの普及はどのような意味をもつのか。これから、子どもにとってTVはどのような存在になっていくのか。(下)では、「動画サービスの利用家庭実態調査」から得られた事実とともに皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

※1 内閣府 「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」より
※2 黛 岳郎NHK 文研フォーラム2019「有料動画配信はどこまで普及するか」

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