平成から令和 「改元」からみるテレビ視聴動向
2019年5月、令和元年がスタートしました。「改元」は、テレビにどのような影響を与えたのでしょうか。
新元号の発表の瞬間や、時代の節目となった平成最後の日と令和最初の日の2日間にフォーカスして、テレビ視聴、テレビCMの動向を紹介します。
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テレビの動向
「新元号は" 令和"です」の瞬間
新元号発表の瞬間をテレビで見届けた人は多かったのではないでしょうか。4月1日の新元号が発表された時間帯の総世帯視聴率(以下HUT)をみてみます。普段の平日※は、朝の8時を過ぎると外出や家事・仕事をする人が増えるため、お昼に差しかかる11時台まではHUTが下がっていくのが通常です【図表1】。
しかし、この日は当初11時30分に新元号が発表されると報じられていたためか、約1時間半前の10時を過ぎた頃からHUTが徐々に上がってきて、実際に発表された11時40分前後には約49%と、平日の午前中としてはかなり高い数字を記録しました。
ちなみに、最高の毎分視聴率は11時44分の49.5%でした。新元号の発表が、多くの人に注目されていたことがわかります。
【図表1新元号発表の毎分HUT(関東地区)
平成最後の日、令和最初の日の放送の半分以上が改元関連
そんな中で迎えた改元、テレビの編成はどうだったのでしょうか。関東地区の4月30日、5月1日の2日間に放送された番組のうち、改元に関連した番組がどのくらいあったのかみてみました【図表2】。
2日間の民放5局とNHK総合をあわせると98本放送されていました。時間にすると約156時間で、総放送時間約287時間の約54%にあたります。つまり、2日間の放送の半分以上が、改元に関する内容を含んだ番組でした。
【図表2】改元関連番組 総放送時間(関東地区)(4/30〜5/1)
※ レギュラー番組:レギュラーで放送されている報道・情報番組(時間拡大版を含む)で、 改元関連の内容が15分以上(30分未満の番組は放送時間の半分以上)含まれているもの
※ 特番:レギュラー番組以外で改元に関連した番組。改元関連の臨時ニュースを含む
※ 民放計:民放5局計
退位と即位にともなう儀式を多くの人がテレビで見守った
ここで、4月30日と5月1日の2日間の毎分のHUTを、普段の休日と比較してみます。普段の休日は、ここでは2019年4月の土日祝日(4月30日を除く)の平均とします【図表3】。
4月30日、5月1日と、普段の休日では、HUTが同程度の時間帯もあれば、大きく差が開いている時間帯もあります。
まず注目したいのは、天皇の退位・即位にともなう儀式の時間帯です。「退位礼正殿の儀」が行われた4月30日の17時前後、「剣璽等承継の儀」、「即位後朝見の儀」が行われた5月1日の10時台・11時台は、普段の休日を約10〜15ポイントと大きく上回り、儀式の動向や天皇陛下、上皇陛下のお言葉を多くの人がテレビで見守った様子がわかりました。
また、4月30日午前中、5月1日の夕方にも、儀式にまつわる情報や関連ニュースが中継を交えて伝えられていたためか、普段の休日と比べてHUTが高めに推移しています。
【図表3】は関東地区のデータですが、多くの地区で関東地区と近しいHUTの動きがみられました。一方で、ゴールデン・プライム帯には、平成の間に流行したものや活躍した人の振り返り、皇室の歩み等を扱った特番が複数放送されていたものの、HUTは普段の休日と同程度でした。
【図表3】改元前日、改元初日毎分HUT比較(関東地区)
時代をまたぐカウントダウン"24時"
もう1つ注目したいポイントは、4月30日23時から25時(5月1日1時)頃にかけての「時代越し」のタイミングです【図表3】。この日のゴールデン・プライム帯は普段の休日並みですが、HUTが普段とは違う伸びをみせています。夜が深まり、テレビを消して就寝する人が徐々に増えるため、通常はHUTが低下していく時間帯ですが、この日は23時台に入ってから低下が緩やかです。そして23時50分頃から徐々に上昇し、24時を頂点に山型のグラフになっています。
平成から令和へのカウントダウンの瞬間を、テレビを見ながら迎えようとスイッチを入れた人が一定数いたことがわかります。
ちなみに、4月30日のこの時間帯には、民放5局とNHK総合の全ての局で、改元関連の番組あるいは報道番組が放送されていました。
日本テレビ、テレビ朝日、TBSでは夜の報道番組を延長・拡大する形で、テレビ東京、フジテレビ、NHK総合では特番を放送しています。そうそう経験のできない改元の一瞬を逃すまいとテレビのスイッチを入れた人が多かったのではないでしょうか。
テレビCMの動向
昭和最後と平成最初のCM
次にテレビCM(関東地区)の動向をみてみましょう。昭和から平成への改元時のCM出稿状況とあわせて確認します。
昭和64年1月のCM出稿状況をみると、昭和天皇の崩御の1月7日早朝以降、各局でCMの出稿が止まりました。
そのままCMが1本も流れない中で翌日の8日に新元号がスタートし、徐々に出稿量が戻っていくのは翌日の1月9日からとなります。CMが再開されて以降しばらくは、『ACジャパン』の出稿が多くを占めました。
昭和最後に放送されたCMは、『ホテルニュー岡部』(テレビ東京 1月7日6時44分)。平成になって最初のCMは『シード コンタクトレンズ』(フジテレビ 1月9日6時00分)と記録されています。
平成最後と令和最初のCM
では、平成最後の日の最後に流れたCM、令和最初の日に初めて流れたCMは何だったのでしょうか。
平成最後のCMは、『アパグループ』(フジテレビ 23時55分)でした。アパホテルグループのアイデアコンテストを訴求する内容で、偶然にも昭和最後と同じホテル業のCMです。
令和最初のCMは『明治 プロビオヨーグルトR-1』(テレビ東京 0時12分)でした。「令和元年・R-1の幕開け」をキャッチコピーに、令和時代の幕開けを祝うCM内容です。
4月1日の新元号発表から、SNSを中心に令和元年を表す「R1」をもじって同商品に対する注目が集まりました。
明治もSNSでの盛り上がりを受け、平成最後の夜には、「もうすぐR-1」をキャッチコピーにしたCMも放送。それにつなげる形で、放送された『R-1』が令和最初のCMとなりました。
昭和から平成への切り替わりは、CMの自粛で、出稿量はほぼ無い状況でしたが、平成から令和においてはCM出稿量にほとんど変化はありませんでした。
新元号発表から改元までの1ヶ月で出稿した「令和」ワードを含むCM
30年ぶりとなる元号の切り替わりが、CMクリエイティブにどの様な影響を与えたのでしょうか。最も早く「令和」という言葉を含んだCMは、関東地区では『カルビー じゃがりこ』で、新元号発表から一週間後の4月8日からです。カルビーの70周年を訴求する内容でCMのラストに「令和」と文字テロップが出ます。
改元に際し、「令和」及び「平成」というキーワードを含むCMの出稿量推移を表しました【図表4】。10連休初日となる4月27日以降、『ビックカメラ』、『イオン』などのGW商戦CMにおいて「令和」を含むCMの出稿が急増。ちょうど、令和最初の日には、「令和」を含むCMが「平成」を含むCMの出稿量を逆転しました。このように、世の中の動きや変化がCMの出稿に、ビビッドに影響したことがわかりました。
【図表4】キーワード「平成」「令和」を含むCM出稿量
前回の改元(昭和から平成)は、緊急報道として大きな注目を集め、放送内容は崩御により自粛ムード一色でした。
それに対し、今回の改元は、元号の発表をはじめ一連の行事のスケジュールが事前に決まっており、そのタイミングに合わせた番組、CMが放送されました。
視聴者は、それらを一時代の締めくくりとして粛々と、且つ新しい時代の幕開けを「祝う」ようにテレビを見ていたことが今回の改元の特徴といえるでしょう。
TOPIC // そのころインターネットは...
当社グループ会社のビデオリサーチインタラクティブが、インターネット視聴データサービス「Web Report」をもとに、GW期間トータルとGW前の10日間のWebサイトの推定訪問者数を比較してみました。その結果、Yahoo!JAPANやGoogle、YouTube、Amazon.co.jp、楽天市場などメジャーなサイトでの推定訪問者数の増加だけでなく、増加率では「ウェザーニュース」や「気象庁」などの天気情報サイト、「ジョルダン」「日本道路交通情報センター」などの交通情報サイト、「ウォーカープラス」「トリップアドバイザー」などの観光・旅行関連サイト、「Retty」「食べログ」などのグルメサイトといった、外出を目的としたWebサイトで訪問者数が増えていました。また、「ForbesJAPAN」「is Media」「文春オンライン」などの雑誌系サイトも同様の傾向です。
大型連休をそれぞれに楽しんでいる様子がデータにもあらわれる結果となりました。
GW期間トータル(4/27〜5/6)での推定訪問者数増加率上位サイト一覧
Ameba | Microsoft Office | ウォーカープラス | トリップアドバイザー |
Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) | Retty | 気象庁 | 日本道路交通情報センター |
isMedia(現代ビジネス、JBpress など) | Sponichi Annex | ジョルダン | はてなブログ |
JRA日本中央競馬会 | Weblio 辞書 | 食べログ | 文春オンライン |
JUGEMブログ | ウェザーニュース | テレビ朝日 | モノタロウ など |
※GW期間トータルで推定訪問者50万人以上のWebサイト(順不同)
※PCインターネット視聴データサービス「Web Report」データより(日本国内の4歳以上の家庭内PCインターネットユーザー約12,000人が対象)
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