連載特別企画第一弾 新視聴率のスタートで変わること〜来年4月全地区同一仕様に〜
「新視聴率のスタートで変わること。」と題し、2020年4月の新視聴率開始に向けて、3回の連載を予定しています。
新視聴率がスタートすると全地区で「52週化・PM(機械式個人視聴率)化」し、「タイムシフト測定」も始まります。更に、全国視聴率など新たな指標の提供も始まり、利用できるデータ量は今より増大します。視聴率データをより便利に、有益に使っていただけるよう本連載では事例を交えながら、新視聴率のスタートで変わること、出来ることを紹介していきます。日々の集計データ・番組の管理の仕方がどのように変わっていくのか、どんな視点でテレビ視聴を捉えていくことができるのか、新しくなる視聴率の理解にお役立てください。
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あらためて、新視聴率計画とは
視聴率には、「世の中の動向を示す」「放送局の制作・編成に活用する」「テレビ広告接触を示す」役割があります。近年、デジタルデバイスの普及や見逃し配信のサービスの拡充など、テレビを取り巻く環境は大きく変化し、生活者のテレビ視聴行動も多様化しています。
ビデオリサーチは、こうした変化を踏まえ、「テレビの視聴を広く測定し、テレビの正しい価値を示す」ために新視聴率計画を発表し、実現に向けて準備を進めてきました。
新視聴率計画の具体策
変化への対応と新たな価値の創造を実現するため、2020年4月を大きな区切りとして、データスペック向上の準備を進めています。
コンセプトは大きく3つ。「他メディアとの比較においてテレビの特徴を表現する」「テレビのメディア価値を正しく表す」「環境変化に対応した指標を提供する」ことです。
そして、その計画の中心は「1、全地区の視聴率52週化」「2、全地区のPM化」「3 、全地区でのタイムシフト視聴測定をはじめとした多様化するテレビ視聴と生活者を捉える」です。
下表にあるように、2020年4月にはすべての地区で毎日・個人の視聴率が測定されます。
リアルタイムだけでなく、タイムシフト測定も全地区・毎日対応します。
PM化で、番組視聴の"個性"を可視化する
ー 世帯から個人へ、日記式から機械式へ
新視聴率の実現による、大きな変化のひとつは関東、関西、名古屋、北部九州に加え、全地区で「世帯」「個人」の両データが毎日確認できることです。日々、番組の視聴構造や視聴の推移を確認することで、番組制作、編成上の課題をキャッチし、それに対するフォローアップがより迅速に行えるようになります。
[1] 個人視聴率で、より多面的に番組をとらえる
日頃の番組評価といえば、まず最初に当該番組や、その裏番組の「世帯視聴率を確認」するというのが一般的です。
「自局の番組も裏番組も世帯視聴率は同じ」という場合、" どちらの番組も同じように見られている" と思いがちですが、その世帯、いわば家族の中での見られ方に目を向けると新たな一面がみえてきます。
世帯視聴率は言葉通り" 世帯" が対象(母数)となり、「家族の誰かひとりでも見ていた」=「見た世帯」としてカウントされます。一方、個人全体視聴率は、 "4歳以上の個人全員"、つまり家族一人ひとりが対象(母数)となり、「何人が見た」と個人ベースでカウントされます。家族人数や、その中での視聴状況によって、個人全体視聴率の出方は世帯視聴率と同じというわけではありません。
個人視聴率は様ざまな視聴のされ方を映し出します。例えば、個人全体視聴率が同程度の番組でも、性年代ごとの視聴者構成割合は番組によって違うということもあります。ゆえに、どういった視聴者がいるのか確認することは重要です。そのような一人ひとりの視聴動向に加えて、 "共視聴"の実態を把握すると、だれがだれと見ていたかという組み合わせがみえてきます。番組の視聴のされ方を多面的に把握して、それぞれの" 個性"や"パワー"を正確にとらえること、それがPM化で可能になります。
ここからは、具体的なイメージを持っていただくため、架空のVR局の夕方ニュース番組『おかえり日本』を想定し、ダミーデータを用いながら説明していきます。
[2] だれが、どれくらい見ているかが日々わかる
PM調査をしていない地区では、どのくらいの「世帯が」番組を見ているかはわかりますが、「だれが」を特定することができません。「だれが」を知りたい場合は、個人調査週のデータか、世帯特性別のデータで確認することになります。世帯特性別ではあくまでも「F2(35〜49歳女性)がいる世帯」「15歳未満の子どもがいる世帯」といった世帯の特性を絞るのにとどまり、世帯の中で「だれが」見ているかまではわかりません。
それが全地区でPM調査が始まることで、「だれが」どのくらい見ているかがわかるようになります。
それでは『おかえり日本』(平日18:00〜19:00放送)の例をみてみましょう【図表1】。
7月クールの『おかえり日本』は世帯視聴率が7.0%、個人全体視聴率が3.9%です。ターゲット別では、F3(50歳以上女性)が6.0%で最も高く、次いでF2(35〜49歳女性)が4.6% と、35歳以上の女性、特に高年齢層の女性に支持されている番組であることがわかります。
さらに、クール推移をみると、メイン視聴層である35歳以上の女性の中でも、F3の視聴率はやや低下傾向、F2の視聴率は上昇傾向で、女性の視聴層が少し若返っていることがうかがえます。また、M3(50歳以上男性)の視聴率も上昇しており、高年齢男性にも受け入れられてきているようです。52週PM化が実現し、このように日々の個人視聴率がわかるようになると、どの層の視聴者が増えている、あるいは離れてしまっている、というチェックが可能です。日々の管理はもちろん、新しいコーナーを始めた、出演者が替わった、裏番組のリニューアルがあった...といった番組側の変化によって、ターゲットごとの視聴に変化があるのか確認することで、次の打ち手につながります。
[3] 視聴者の動きや視聴の推移がわかる
番組視聴率だけでなく、毎分視聴率もターゲット別に確認することができます。毎分の動きをみることで、例えば夕方ニュース番組であれば、「前半は在宅率の高い高年齢層の女性がメイン視聴者で、17時台から徐々に下の年代も帰宅してテレビをつけ始める」「天気予報や人気コーナーをきっかけに視聴が増える」といったことを確認できます。逆に、毎分視聴率が下がっていると、視聴者が離れているコーナーがわかり、特にどの層に受け入れられていないのか、問題点を発見することにもつながります。
更に、どの層がどのように他局と出入りしているかも番組編成、制作上把握しておきたいデータではないでしょうか。52週PM化によりターゲット別の流入流出を確認できるようになります。
17時台から、『おかえり日本』が放送される18時台への流入流出を、メイン視聴層であるF3で見てみましょう【図表2】。
まず流入について、『おかえり日本』視聴者は、17時台にもVR局の前枠番組を見ていた人が最も多く、前枠番組視聴者の約3分の2が『おかえり日本』を継続して視聴しています。17時台に他局を視聴していた人の中では、D局視聴者から最も多く流れてきています(流入)。17時台はテレビを見ておらず、18時台にテレビをつけて『おかえり日本』を見ている人(0.6%)もいます。次に他局に流れていった流出についてみると、17時台にVR局の前枠番組を見ていた人の流出先としては、流入同様D局が最も多いことがわかります。F3においては、この時間帯にVR局とD局との出入りが目立つことから、この時間帯のD局とは視聴者層が重なっているといえます。図表1ではF3の『おかえり日本』視聴率はやや低下傾向でした。F3視聴者を取り戻し、継続して見てもらうためにはD局対策が必要になってくるかもしれません。
この例では1時間単位の流入流出を分析しましたが、5分単位、1分単位といった、より小さい単位での流入流出を分析することもでき、各コーナーの内容や長さ、配置を検討するのに役立てることができます。
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[4] ターゲットが見ている時間帯がわかる
【図表1】から、『おかえり日本』は女性に支持されている番組ですが、F1(20〜34歳女性)の視聴率は7月クールで2.4% と、若年女性の視聴者は拡大の余地があるといえそうです。F1に『おかえり日本』をもっと見てもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。
まずF1のテレビ視聴の全体像を確認するため、F1の全局曜日別毎60分視聴率をみてみます【図表3-1】。『おかえり日本』が放送されている平日の18時台の視聴率は、11〜13%程度です。その前の時間帯に着目すると、14〜15時台はまだ在宅率が低いのか、視聴率は5〜6%程度で、16〜17時台に徐々に視聴が増えてくることがわかります。この16〜17時台の番組で、18時台の告知にもなるような関連コーナーを設ける、16〜17時台からF1を意識した編成にするなどの対策が考えられます。
視聴者を獲得するためのもうひとつの方法として、番組宣伝CMがあります。多くのF1に接触するためには、どの時間帯に番組宣伝CMを打つとよいのでしょうか。
F1のVR 局曜日別毎60分視聴率をみてみます【図表3-2】。ゴールデン・プライム帯の他、平日朝7〜8時台、平日12〜13時台、日曜日の12〜13時台も視聴率が高いことがわかります。この曜日・時間帯にCMを打つと効率よくF1に接触することができそうです。
このように、番組に限らず、時間帯や曜日ごとの視聴の特徴もターゲット別に分析することで、編成・制作に活かすことができます。
[5] 視聴者がどのような特性をもつ人たちなのかわかる
ここまで52週PM化で実現する性・年代別のターゲット別分析について紹介してきました。しかし最近では、性・年代だけでなく、視聴者がどのような人たちなのか、より詳細な特性を把握することの重要性が増してきています。そのため、新視聴率計画では、性別・年齢といったデモグラフィック特性にとどまらない視聴者の詳細なプロフィールや特徴を描くことを目指しています。ここでは、PM調査の個人とACR/ex 調査のデータをフュージョンさせることによって詳細なプロフィールを描く、「ADVANCED TARGET※」というサービスを使った事例を紹介します。
例として『おかえり日本』の視聴者プロフィールをみてみましょう【図表4、5】。
※「ADVANCED TARGET」のサービス地区は検討中です。
『おかえり日本』の視聴者は、全体と比較してスーパーやドラッグストアの利用が多く、食料品、調味料や日用品の購入決定者が多いことがわかります。このような視聴者プロフィールは、編成、制作上の戦略を立てるのに利用できるほかにも、小売業や食品メーカー、消費財メーカーなどへの営業資料(番組セールスシート)にも活用できます。この例のように全体と比較することもできますが、他局の同時間帯番組と比較して特徴を明らかにする方法もあります。
また、「〇〇がほしい人」「〇〇が好きな人」のようなターゲット層の視聴状況もわかり、番組や時間帯の価値を示すことができます。たとえば、「美容家電の銘柄選定・購入決定者」をターゲットとすると、『おかえり日本』の視聴者は他局の同時間帯番組よりターゲット視聴率が高いことがわかります。さらに「世帯年収1,000万円以上で美容家電の銘柄選定・購入決定者」をターゲットとしても同様に『おかえり日本』のターゲット視聴率が高いことが示されます【図表6】。
[6] より実態を反映した視聴率で番組を可視化
全地区52週PM調査がスタートすることによって、世帯視聴率および個人視聴率を日々安定して管理できることも、新視聴率で実現するポイントのひとつです。24週調査地区や個人視聴率調査週が限られている地区では、(調査日の少なさから)1回の調査の影響が大きく、スコアがブレることも少なからずあります。52週調査(毎日の測定)になれば、その様な影響は少なく、一定した視聴の動きをとらえることができます。また、日記式調査からPM調査に変わることで、今まで対象者の意識や記憶に基づき記録していたものを機械で測定するようになります。番組名や放送局を思い出せない、代行記入のため自室でテレビを見ている家族の視聴は正確にはわからないといった場合、日記式では記録が難しいのですが、その点、機械式では問題なく測定することができ、より実態を反映した視聴率を取得できるようになります。
ここまで紹介してきたように、新視聴率計画の柱のひとつである「52週PM化」つまり、毎日、安定した世帯・個人視聴率が出ることで、視聴者をより詳細に把握・分析できるようになります。これによって、番組の制作や編成に活かせることはもちろん、営業面でも有効にデータを使うことができます。当社では、新視聴率の実現が番組や時間帯の新たな価値を見出し、テレビのパワーを最大限に引き出すことにつながると考えています。
-- 次回は、タイムシフト測定でわかることを紹介する予定です。
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