子どものメディア接触の変化をみる〜Kids/ex最新版〜

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生活者データ
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子どものメディア接触の変化をみる〜Kids/ex最新版〜

メディア環境の急速な変化によって生活や意識が影響を受けるのは、子どもたちとて例外ではありません。

子どもは心身の成長に伴い嗜好や興味関心、生活習慣などが変化します。子ども自身の成長による変化と、子どもを取り巻く環境の変化。現代の子どもたちのそれぞれの変化を、メディア接触の視点でひも解きます。

なお、本記事では3〜12才(未就学児、小学生)は「Kids/ex」、中学生・高校生は「ACR/ex」の最新データから紹介します。

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テレビとインターネットが逆転する分岐点は中学生

子どもの生活者調査「Kids/ex」では、「ACR/ex」と同様に特定1週間のメディア接触や生活行動を日記式で調査しています。今回は2019年生活行動データからテレビとインターネットの接触率を中心に紹介していきます。

メディア接触行動は、環境の変化や子どもの成長過程で変わります。最新のデータによると、テレビの接触率は小学校高学年をピーク(73%)に、中学、高校と進級するに従い低下します。それに対して、インターネットの接触率は小学生低学年を底に年齢が上がるにつれ上昇し、小学校卒業後には過半数の子どもが接触するメディアとなります。テレビとの関係をみた場合、中学生が分岐点、高校生で逆転するのがわかります(図1)。

図1.PNG

全ての学齢でインターネット急増

次に、経年による変化をみてみましょう。はじめに未就学児と小学生の経年変化を2017年からの3年間で比較します(図2)。

テレビ接触率は減少傾向である一方、インターネットは3年で各層ともに12〜14ポイント増加しています。子どもたちの日常にインターネットが急速に浸透し、利用し始める年齢が早まっていることがうかがえます。

図2.PNG続いて中学生と高校生の経年変化を2015年からの5年間で比較します(図3)。

中学生、高校生ともにテレビはほぼ横ばいで大きな変化は見られません。一方、インターネットは中学生で30ポイント、高校生で26ポイントと5年間で大幅にスコアを上昇させています。

中学生では、2015年のテレビ(58%)はインターネット(28%)に30ポイントの差をつけて上回っていましたが、2019年にはほぼ並びました。高校生では、5年の間にインターネットがテレビを逆転し、更に年々スコア差を引き離しています。

図3.PNG
子どもたちのインターネット利用の低年齢化がこのまま進行すると、中学生はすぐにテレビを追い越し、小学生でもテレビに迫るのかもしれません。

小学生まではネット動画中心、中学生以降はSNSなど動画以外が急増

子どもたちにとって身近なメディアになりつつあるインターネットについて、もう少し掘り下げてみましょう。

インターネットの接触時間量を学齢別にみると、未就学児と小学生では1日あたり30〜40分台です。中学入学を境に急激に増加し、中学生87分、高校生107分と、中高生では1日に1時間半〜2時間近くを自宅内でインターネットに費やしています(図4)。

インターネット利用のうち動画を視聴している時間をみると、学齢による差はあまり見られず各層ともに1日あたり30分台とほぼ一定しています。未就学児、小学校低学年ではインターネット接触のほとんどの時間を動画が占めますが、中学生以降はSNSなどの動画以外のインターネット接触時間が急増します。この動画以外のインターネット利用の急増が、冒頭のテレビとインターネットの逆転に寄与していると思われます。

図4.PNG

小学校低学年まではテレビ画面でのネット動画視聴が多い

では、子どもたちはインターネット動画をどのように見ているのでしょう。デバイスごとの動画視聴時間を構成比でみます(図5)。

未就学児、小学校低学年ではテレビ画面でのネット動画視聴が4割程度と、タブレット端末と並んで高いことが特徴的です。子どもが自らデバイスを選択しているよりも、親(保護者)が視聴環境を整え親の目が届く場所で子どもに視聴させていると推測されます。テレビ画面でネット動画を見る視聴形態が、前述の小学校低学年以下のテレビ接触率減少のひとつの要因かもしれません。

図5.PNG

親の意識も変化している

「Kids/ex」では3〜12才の子どもに対する親のメディア意識や教育についての意識も経年で調査しています。近年のデジタル環境の変化は、親の意識や価値観にも影響を与えているのではないでしょうか。

親のメディア意識についてデジタル関連のデータから読み解いてみます(図6)。

「スマートフォンやタブレットを見せておけば子供に手間がかからないので助かる場合がある」と考える親は3年で14ポイント上昇しました。デジタル機器を子守代わりに与える親が増加し、子どものインターネット利用の低年齢化を後押ししている様子がうかがえます。

また、「スマートフォンやタブレットを子供に使わせても良いと思う」は49%と11ポイント上昇しており、約半数の親が子どもにデジタル機器を与えることに肯定的です。

「子供がインターネットで何を見ているか、何をしているかが気になる」親も7割台と多く、便利だけれど心配である、揺れる親心が透けて見えます。

ティーン時代にスマートフォンに親しみ育った世代が、親となる時代に突入しつつあります。親が考える「あたり前」の常識は今後も時代にあわせて変化していくことでしょう。

図6.PNG

スマートフォンのコンテンツが人気上昇

最後に、3〜12才の子どもが好きなことをみてみます(図7)。

「アニメを見る」「外で遊ぶ(鬼ごっこなど)」といった親世代が子ども時代に慣れ親しんだ定番の遊びが上位となりました。経年でみると定番の遊びの人気はあまり変化がありません。

一方、「インターネット動画視聴(スマートフォン)」「スマートフォンのアプリでゲーム」と、スマートフォンにおけるコンテンツが子どもたちの支持を徐々に集めており、子どもの意識からもスマートフォンの利用が進んでいることがわかります。

図7.PNG

新しい時代「令和」に生きる今の子どもたちのメディア接触の変化の一端を紹介しました。

インターネットは子どもたちの日常に驚くほど急速に浸透し、利用の低年齢化が進行しています。

テレビとインターネットの接触率が逆転する分岐点は、現在の中学生から、今後は小学生へと学齢が下がっていくのかもしれません。

テレビ画面でインターネット動画を見る視聴形態は、小学生以下の子どもで比較的多く見受けられます。テレビ画面でインターネット動画を視聴する習慣を身に着けた子どもは、自身が視聴しているコンテンツがテレビ(放送)かインターネット(通信)かはあまり意識しないのではないでしょうか。

記事の中でテレビとインターネットを対比させて子どものメディア接触の変化を紹介しましたが、子どもの視点で実態を表すには、テレビかインターネットかの比較とは異なる切り口が必要でしょう。

子どもは、いつ、誰と、どんな気分でメディアに接触する際に、どのようなコンテンツやデバイスを選ぶのか。そのような視点が、メディアの垣根を越えて多様な選択肢が提示される現代では大切であるように思います。

現代の子どもたちにとって、スマートフォンやインターネット動画は物心がついた時から身近に存在します。私たち大人の子ども時代とは明らかに異なるメディア環境下で育つ子どもたちは、どのようなメディア経験を経て、どのような意識や習慣を獲得していくのでしょう。今後とも調査を通じて子どもたちの生活を見守り続けたいと思います。

引用データの調査時期とサンプル数.PNG

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