連載特別企画第三弾 新視聴率のスタートで変わること〜全国推計視聴数からみた朝ドラ「エール」〜

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#テレビ #ドラマ #視聴実態 #視聴率
連載特別企画第三弾 新視聴率のスタートで変わること〜全国推計視聴数からみた朝ドラ「エール」〜

「新視聴率のスタートで変わること。」と題して、2020年4月にリニューアルした視聴率の理解を深めていただけるよう過去2号にわたって連載してきました。第一弾は、全地区「52週化・PM化」になることで、「毎日」「世帯・個人の両データ」が捉えられること、番組制作、編成上においてPDCAが迅速に行えるようになることをお伝えしました。
第二弾では、「全地区でのタイムシフト測定開始」として、リアルタイム視聴率だけでは分からなかった潜在的な視聴者を捉えられることや、生活者のテレビ視聴行動の全体を可視化できることをお伝えしました。今回は「全国視聴率/推計視聴数」および「全国到達率/推計到達数」の概要を解説するとともに、分析事例(朝ドラ「エール」)を交えて活用方法を紹介します。

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【視聴率】 【タイムシフト視聴率】



全国を表現する新たな指標「全国視聴率」「全国推計視聴数」

これまで地区によって異なっていた調査設計を、2020年4月に統一したことにより、27地区別の視聴率を横並びでみられるようになったことに加え、全国単位での「全国視聴率」と「全国推計視聴数」を提供できるようになりました。

新視聴率による全国を表現するデータの具現化


この「全国視聴率」とは、27地区の視聴率調査に加え、これまでは機械式調査を実施していなかった5地区(表内※)についても他地区同様の視聴率調査を実施し、全国32放送地区すべてを集計対象分母として集計したデータとなります。これまでは関東や関西といった地区別だった視聴率を束ね、「全国の視聴データ」として算出し、世帯視聴率および個人視聴率の双方で、全国単位での「視聴率」「到達率」として数値化することが可能になりました。
さらに、その「視聴率」「到達率」に全国の世帯数/人口をかけて「視聴数」「到達数」(いずれも推計)を算出します。これにより、全国での視聴を「数」で捉えることができます。
こうした新たな指標で、テレビ視聴に関するデータを今まで以上に見える化し、多面的な評価を行うことで、テレビの価値をより正しく把握できるようになると考えています。



デジタルデータとの比較・連携を可能にする「視聴数」「到達数」

例えば「推計到達数」を、デジタルコンテンツで一般的な「UB(ユニークブラウザ)」や「UU(ユニークユーザー)」といった指標と比較することで、テレビコンテンツとデジタルコンテンツの視聴ボリュームを比較して考えることが可能になります。それによって、テレビが持つ力を正しく評価し、さらには配信動画との連携も含めた「Total」として新たなデータ活用に繋がっていくと考えています。
テレビ視聴率調査全国32地区での新たな指標.PNG

こちらのサイトで、番組別の視聴数、到達数を一部掲載しています。
【平均視聴人数10】


全国視聴動向からみた朝ドラ「エール」

ここからは、新視聴率と同時にスタートしたNHK連続テレビ小説「エール」(以下、朝ドラ「エール」)はどのように見られているのか、新たな切り口である「個人視聴率」「全国推計視聴数」を活用して、全国ベースでの視聴の動きをみていきましょう。


[1]物語の舞台となる福島地区で視聴率を伸ばす
2020年度最初の朝ドラ「エール」が3/30(月)にスタートしました。オリンピックイヤーとなるはずだった今回の主人公は「古関裕而」。前回(1964年)の東京五輪でオリンピックマーチを作曲した人物です。2014年の「マッサン」以来、6年ぶりとなる男性主人公を演じるのは、「花子とアン」にも出演、人気・実力ともに注目を集める窪田正孝。そしてヒロインは二階堂ふみが演じています。
朝ドラはこれまで月曜から土曜の放送でしたが、「エール」は働き方改革の一環として、土曜はバナナマン・日村勇紀がナビゲートする総集編となり、ドラマの本編は月曜〜金曜の放送となっています。

最初に「エール」の視聴状況を地区別でみていきましょう。【図1】は3/30(月)〜5/2(土)までの30回分(土曜ダイジェスト含む)の視聴率データをまとめたものです。各地区の個人全体(男女4才以上)平均視聴率は、関東で10.7%(世帯:19.5% 以下同)、関西で9.8%(18.2%)でしたが、福島地区は16.8%(32.1%)と全国で最も高くなっています。福島は主人公・祐一の出身地であり、5週目までのストーリーのメイン舞台の地となっています。加えて、祐一のモデルとなった「古関裕而」氏の実際の出身地でもあり、福島の人たちの注目を集めたといってよいでしょう。
また、ヒロイン・音の出身地で、こちらも物語序盤の主な舞台となっている愛知県豊橋市が含まれる名古屋地区でも、10.9%(21.9%)とやや高くなっています。やはり自分たちが住んでいる地域が舞台になると、見てみたいという気持ちになる表れといえます。
その他の地区の個人全体視聴率をみると、長野14.5%(26.1%)、富山14.0%(27.5%)、秋田13.9%(24.5%)といった地区で高くなっています。これらの地区は、比較的NHKをよく見る地区のため、朝ドラの視聴も多いと考えられます。このことから朝ドラの題材もさることながら、NHKをよく見る地区かそうではないかという県民性が、視聴率に関わってくるといえそうです。

[2] 少しでも「エール」を見た人は、1話あたり平均1389.8万人
では、日本全体でどれくらいの人が「エール」を見ているのでしょうか。地区別の視聴率では地区によって人口が異なるため、具体的に全国でどれくらいの人が見ているのかがイメージしづらいということがありま した。しかし、新視聴率の新指標である「全国推計視聴数」をみると、「エール」は全国で1話あたり平均1184.3万人もの人が視聴していたことがわかるようになりました【図1】。また、もうひとつの指標である「全国推計到達数」(有効条件:1分以上=少しでも番組を見た人)は、平均1389.8万人に上ります。つまり日本の人口の約1割が、朝の同じ時間に、同じようにテレビをつけて「エール」を視聴していたことになります。

「エール」地区別個人全体(男女4才以上)視聴率と全国視聴数.PNG


[3]比較的幅広い年齢層に見られている福島地区
視聴率の調査設計を全国統一したことにより、各地区の視聴の特徴を横並びでとらえることが可能となりました。その観点から、「エール」は地区によってどのような人たちに見られているのか、視聴者の構成をみていきましょう。
【図2】は全国、関東地区と、視聴率が最も高かった福島の3地区について、視聴者構成割合(どの性年代がよく見ているか)を比較したグラフです。
「エール」(朝)の視聴者構成をみると、全国では男女20才以上で男性3割、女性6割となっており、女性の視聴者割合が多いことが分かります。性年代別では「女性50才以上」が半数を占めており、次に割合の多い「男性50才以上」の3割を合わせると、視聴者の8割以上が年配者ということが分かります。
それに対して関東、福島地区は全国の視聴者構成割合と近いものの、関東・福島とも全国より「女性50才以上」が少なく、「男性50才以上」が多い傾向にあります。
また福島地区は、朝と昼の再放送(12:45〜13:00)ともに、20才未満の若年層の割合が全国・関東よりもやや多く、特に「男女13〜19才」の割合が他地区より多いことが分かります。このことからも、舞台のご当地ということで、福島では比較的幅広い層から注目されていたことがうかがえます。

「エール」視聴者構成割合.PNG


[4]1回でも見た人は4500万人を上回る(5/2時点)
次に、全国での推計到達数を放送回ごとに詳しくみていきましょう。【図3】は各回の推計到達数のグラフで、番組を1分以上見た人を対象としています。最も到達数が多かったのは初回放送日の3/30(月)と5/1(金)で1498.5万人に上ります。これまでの朝ドラ同様、初回の注目度が高かったことがわかります。また、5/1(金)は3月末に亡くなった志村けんさんが、主人公・祐一が憧れる作曲家・小山田耕三(モデルは作曲家・指揮者の「山田耕筰」)として初めて登場する放送回であり、多くの人が視聴したと考えられます。
また、全体の傾向として土曜日が低くなっていますが、土曜はダイジェスト放送のためだと考えられます。
では、30回までの放送で、どのくらいの人が「エール」に触れたのか、【図4】でみてみましょう。初回は約1500万人強に到達していましたが、その週の土曜日までにさらに約1300万人の新たな視聴者が増えました。その後も徐々に増え、30回までの『累積推計到達数』(1回でもエールを見た人)は4519.8万人に上ります。つまり日本の3.5割の人が「エール」を見たことになります。

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新型コロナウイルスの世界的な流行により、東京2020オリンピック・パラリンピックの延期が決まり、「エール」も放送を一時中断することが決まっています。
先が見えないコロナ禍の中、いつもと違う日常に不安や苦悩を感じている人が多いかと思います。「エール」の登場人物も同様に苦境や困難にぶつかっていますが、それぞれが支え合い、笑って過ごしています。そのような姿が日本の朝に「エール」を届けてくれるのではないでしょうか。


TOPIC コロナ禍による外出自粛が、朝ドラの視聴に影響を与えているのかを検証してみました。

昼の再放送の視聴率がアップ、日中の在宅率の高さが影響か

「エール」の関東地区の視聴率は、朝8時の本放送では、個人全体10.7%(世帯:19.5%)、昼の再放送(12:45〜)は3.4%(同 6.6%)でした。昨年度に放送された2作品「なつぞら」と「スカーレット」の初回から5週目までの平均視聴率と比較してみると、朝の放送は過去の作品をやや下回っていますが、昼の再放送は過去2作を「エール」が上回っています。放送時間帯の個人全体のテレビ視聴状況をみると、昼のテレビ視聴が多くなっています。コロナの影響で多くの人が外出自粛をしたため、昼の時間帯にテレビを見ている人が多く、「エール」の再放送の視聴が伸びたと考えられます。
また、在宅勤務などで起床時間が遅くなり、朝視聴から昼視聴へスライドしているというパターンもあるかもしれません。

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今回を含め3回にわたり「新視聴率」を紹介してきました。新たな指標が加わり、地区別の細かい視点から全国という広い視点の両方で、よりテレビ視聴の実態が把握できるようになりました。今後は、いままで以上に編成・制作・広告出稿に活用していただけるのではないでしょうか。

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