VRデータでみるコロナ禍とメディア動向 vol.3 STAY HOME期間のテレビ視聴動向について〜ジャンル別視聴率の動向を振り返る〜

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VRデータでみるコロナ禍とメディア動向 vol.3 STAY HOME期間のテレビ視聴動向について〜ジャンル別視聴率の動向を振り返る〜

コロナ禍で外出自粛が長引く中、在宅率が上がるとともに総世帯視聴率(HUT)は2月末ごろから上昇し始め、前年比は約1.2倍ほどになりました。では、生活者が視聴していたのはどのようなテレビ番組だったのでしょうか。 4月時点では生活者が見たいジャンルとして「お笑い番組」「アニメ」「洋画」が挙げられ、バラエティーや映画といったコンテンツの需要が高まっていることがわかっていますが(※1)、 今回はこのような番組ジャンルの視点から、緊急事態宣言下の期間におけるテレビ視聴動向について分析していきたいと思います。

≪ポイント≫
・ジャンル別の番組本数は、「教育・教養・実用」が前年比約1.16倍。各局のワイドショーや時事解説番組などで、コロナ関連の報道が増加。一方「スポーツ」は大幅に減少。「ドラマ」は例年通り。
・前年比で視聴量の増加が大きかったのは、「映画」(1.38倍)、「報道」(1.15倍)
・ジャンル別の高世帯視聴率番組は、緊急事態宣言前後のニュース番組と志村けんさんの追悼番組、地上波初放送の映画など

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1.コロナ禍で番組編成に生じた変化とは

まずはジャンルごとの番組本数・放送分数/GRPシェアについて、前年と比較してみていきます。

「報道」の放送分数シェアは前年比1.07倍ですが、GRPシェアは1.15倍と、去年よりもニュース番組への関心の高まりがわかる結果となりました。「教育・教養・実用」は、番組本数の前年比が8ジャンルの中で最も高い約1.16倍で、昨年より500本増えて3970本となりました。これは各局のワイドショーや時事解説番組などで、コロナ関連の報道を多くしていたことが要因と考えられます。

また、「ドラマ」については、4月クールは初回放送が見送りになったものも多い中、放送分数・GRPシェアの前年比はそれぞれ約0.95倍、約0.98倍と、他ジャンルの前年比と比べて昨年と水準がほぼ変わっていないことがわかりました。一方で「スポーツ」は国内の多くのスポーツ大会が中止となるなか、番組本数は前年比約0.56倍、放送分数・GRPシェアはどちらも前年比0.5倍を下回り、8ジャンルの中で最も規模が縮小しています。

※グラフ掲載期間:4月第1週〜5月第1週の6週間平均
※関東・民放5局+NHKGのくくり局 ※5−29時の間に放送された1分以上の番組

番組本数

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放送分数シェア

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GRPシェア

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2.「報道」「映画」「その他の娯楽番組」「ドラマ」の平均視聴率の推移と高視聴率番組

次に、コロナ禍で視聴量の増加幅の大きかった「報道」「映画」と、影響は比較的小さいものの、番組制作に調整が生じ、再放送での対応等で番組内容や編成に影響が大きかったとみられる「その他の娯楽番組」と「ドラマ」の4つのジャンルに注目し、平均視聴率を前年同週と比較し、併せて高世帯視聴率上位20位までをみていきます。

報道

「報道」は7都府県に緊急事態宣言が出た4/6週、その後全国に発令された4/13週においての平均視聴率がピークとなり、その後5月初週までは低下傾向がみられました。上位の報道番組をみると、緊急事態宣言が発令された4/7放送の「NHKニュース7」が1,2位にランクインし、それぞれ平均世帯視聴率が26.8%、26.3%と高視聴率となり、この日のニュースへの関心度の高さがうかがえます。

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映画

「映画」はGWで祝日が多くあった期間(5/4週)で5.7%と、最も低い3/2週と比べると3ポイント以上高くなり、また昨年との差分は期間内で最も大きい2.0ptとなりました。コンテンツごとにみていくと、1位はディズニー映画「塔の上のラプンツェル」で14.7%、2位には地上波初放送の「名探偵コナン・紺青の拳」(13.9%)がランクイン。集計期間外ではありますが、5/29(金)に放送された邦画「キングダム」も地上波初放送で、その平均世帯視聴率は16.5%でした。

また、5/15(金)放送の「天使にラブ・ソングを...」は金曜ロードSHOW!で視聴者リクエスト企画の第一弾として挙げられた映画で、平均世帯視聴率は15.2%と、「キングダム」とともに15%を上回る結果となりました。在宅期間が長期化するなかで、地上波放送での映画への期待感の高まりが表れていたとも考えられ、こうした視聴者のホームエンターテイメントへのニーズに対応したともいえるでしょう。

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※映画ランキングのみ、コンテンツごとにみるため期間内の全番組を高位から抽出組

その他の娯楽番組

「その他の娯楽番組」の平均視聴率は、7都府県に緊急事態宣言が発令された4/6週に一度下がり、その後再びGW週に向けて徐々に上昇しています。個別に平均世帯視聴率の高い番組をみていくと、3月30日に志村けんさんの逝去報道がなされたあとの関連の追悼番組が上位に多数ランクインしました。

特に1位の「天才!志村どうぶつ園特別編」は、平均世帯視聴率27.3%と高視聴率となりました。視聴者が志村さんを偲んでテレビの前に集っていた姿が浮かびます。

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ドラマ

「ドラマ」は7都府県に緊急事態宣言が発令されたあとの2週、4/13週と4/20週において、2020年の集計期間内で最も高い視聴率になりました。 個別にランキングをみていくと、コロナの影響で4月クールドラマの撮影が不可となったものも多い中、各局過去の放送を特別編や傑作編として再放送するケースが増え、それがランキングにも反映される結果となりました。

テレビ朝日の「特捜9」は今クールのものと傑作編が両方ランクインしていますが、5/6の傑作編の平均世帯視聴率が14.8%と、4/8放送の4月クール初回「特捜9」とほぼ同水準(14.2%)となっています。 撮影や収録の制約の中で、アーカイブの活用は苦肉の策だったかもしれませんが、比較的視聴者はそうしたものも好意的に視聴していたとも考えられます。

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集計条件(平均視聴率推移グラフ)
※期間:2月第4週〜5月第1週の前年同週比較(横軸の日付は2020年のもの)
※関東・民放5局+NHKGのくくり局 ※5−29時の間に放送された1分以上の番組
※破線内の数字は前年との差分
※GW期間の祝日が多く含まれた週:2019年...4月第5週、2020年...5月第1週
集計条件(ランキング)
※期間:2020年2月24日〜5月10日 ※対象放送局:関東・民放5局+NHKG
※対象番組:5-29時の間に放送された1分以上の番組

このように、コロナ禍を振り返ると、放送分数の種目計は昨年とほぼ変わらない一方でGRP計は約1.2倍となり、在宅期間中の生活者のテレビ放送への関心の高さが反映される結果となっていました。 番組ジャンルの面では、「報道」とそれ以外の「映画」「ドラマ」「その他の娯楽番組」では平均視聴率のピークが異なり、「報道」は緊急事態宣言発令以降、平均視聴率は低下していました。STAY HOME期間中も連日コロナ関連の報道は続くなか、GW週に向けて視聴者の「報道疲れ」があらわれていたとも考えられます。

また、高視聴率ランキングでは、「ドラマ」の上位番組に再放送(特別編など)や「その他の娯楽番組」の総集編が多くランクインしていました。コロナ禍で撮影スケジュールに影響が出たものの、各局の編成や編集による対応は一定程度視聴者に受容され、昨年からGRPの水準を落とすことはなかったことが明らかになりました。 まだまだ予断を許さないコロナ禍ではありますが、今後も視聴行動にどのような影響がみられるか、引き続き分析していきたいと思います。

(※1)コロナ禍でテレビの見方はどう変わっているのか(2020.4.23プレスリリース)

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