【第1回】TVCMマッチメーカーズの"コンセプトと実証研究"〜ビデオリサーチが提唱する、番組とCMを"マッチング"させる方法とは?〜
テレビCMの広告効果をより高めるための考え方を3回に分けてお届けいたします。
第1回目は「ビデオリサーチが提唱する、番組とCMを"マッチング"させる方法とは?」です。
テレビCMの広告効果をさらに高めるための"番組選定"の課題
テレビCMを出稿するにあたり、どのような視聴者をターゲットとし、どの番組に出稿し、どのようなクリエイティブを作るのかなど、広告効果をより高めるために、検討・実施すべきことはたくさんあります。それには大きく「視聴者」「番組」「CMクリエイティブ」という3つの視点があります。それぞれの領域で様々な工夫や施策を実施することでテレビCMの広告効果は高まるわけです。特に、広告メッセージを届けたいターゲットの設定や、そのターゲットを想定した出稿・クリエイティブ制作など、「視聴者」視点はその中心にあるといえます。
しかし一方で、生活者の意識・考え方の多様化や、コロナ禍によってさらに複雑化が進む生活行動など、「視聴者」視点である性別・年齢を中心としたターゲティングだけでは、テレビCMの広告効果を高めるのも限界がやってきます。そこで、テレビCMの広告効果を高めるための3つの視点のうち、「番組」や「CMクリエイティブ」に着目することが重要になってきます。「番組」視点で言えば、番組内容とCMとの相乗効果、「CMクリエイティブ」で言えば、より効果的な表現方法の追求といったことが挙げられます。
広告取引ビジネスの領域でいえば、出稿する番組の選定の仕方が課題となります。通常、広告メッセージが届けたいターゲットに対して、いかに効率よく届けられるかという基準が広く用いられているかと思います。しかし、"ターゲティング以外"の方法が必要となると、当然、番組の内容に注目する必要があります。つまり、"番組内容との相乗効果"を狙っていくわけです。テレビCMを出稿する際に、ターゲットへの到達効率ではなく、「番組の内容」に基づいた番組選定基準で相乗効果を作り出し、広告効果をより高めていく必要がある、ということになります。
番組とCMとの相乗効果によって、広告効果を上げるには?
相乗効果をもたらす「番組」は、具体的にはどのように選ぶのでしょうか。実はシンプルに「CMと関連した内容の番組」を選ぶことにほかなりません。そしてこれは日常的に、当たり前に行われていることでもあります。
最も分かりやすい例は、音楽番組で出演アーティストのCDやDVD・ブルーレイなどの作品のCMを流すことや、子供向けアニメ番組で関連したおもちゃ等のCMを流すことが挙げられるでしょう。広告を届けたいターゲットが視聴している点もありますが、番組とCMとに関連があるからこそCMのメッセージがより視聴者に効果的に届きやすくなります。また、ドラマの主演役者が出演しているCMを、ドラマのCM枠に流すのも効果的であり、しばしば用いられます。さらに踏み込んだ方法としては、番組と同じ出演者や場面などを用いた番組連動CM・コラボCMを制作することも挙げられます。例えば、情報番組と同じセット・出演者が商品・サービスをアピールする、テレビドラマの役柄のまま役者がCMに出演する、お笑い番組の特番とのコラボCMなどです。
なぜ番組とCMが内容的に関連していると広告効果が上がるのか?
そもそも、なぜ番組とCMが内容的に関連していると広告効果が高まるのでしょうか。ここでは、この点について整理しておきたいと思います。説明方法として諸説あるかと思いますが、ビデオリサーチではそのメカニズムを次のように考えています。
心理学において「プライミング効果」というものがあります。これは、事前に見聞きしたものがそのあとの判断や行動に影響することを指します。この視点で考えると、次のようになります。まず、番組を視聴し続けていること自体は、番組へ一定程度の高評価をしていると考えられます(評価が低ければ、チャンネルを変えてしまうわけです。)そして、視聴している番組と同じ要素(番組との共通要素)が番組の合間に流れるCMにも出てきたら、直前に見た番組の評価に影響されます。つまり、CM内の「番組との共通要素」に対しても同様に高評価になることが期待されます。
また、有名人を起用した広告が最たる例ですが、CM内の要素(登場人物、映像、音楽、背景など)の評価やイメージは、そこで紹介されている商品やサービスにも好影響を与えたり、それらの要素が持つ評価自体が商品やサービスに転移したりします。だからこそ、有名人や好感度が高まるような映像、音楽などがテレビCMでは度々用いられるのです。
これらの一連の影響関係の結果、番組とCMの内容が関連していると、番組への「高評価」が巡り巡ってCM内の商品・サービスまで"引き継がれる効果"(引き継ぎ効果)をもたらすと考えられます。
番組とCMを"マッチング"させるための指標「マッチスコア」を開発
このように、番組とCMが内容的に関連していると広告効果が高まるわけですが、この考え方をCM出稿において常に考えることは非常に困難です。番組の内容とCMの内容を一つ一つ確認する必要があるわけですから、当然といえます。
しかし、これからの広告出稿においては、ターゲティングとは別の方法でも広告効果向上の施策が重要になってきているため、そうも言ってられません。既存の番組や既存のCMクリエイティブも含め、番組とCMの内容的な共通性の確認(マッチング)をするために、データを用いて客観的な指標を作り出す必要があります。これが実現すれば、人間の目で番組の内容やCMを確認しなくても、番組とCMを"マッチング"させることができるわけです。
このような考え方、課題感にたどり着いたビデオリサーチでは、数年の研究期間を経て、番組とCMをマッチングさせるための客観的指標である「マッチスコア」を開発しました。また、この「マッチスコア」を広くお使いいただけるように、「TVCMマッチメーカーズ」というサービスに仕立て上げ、今回ローンチすることとなりました。
ビデオリサーチの開発したこの「マッチスコア」とは一体どんなものなのか?
次回、番組とCMを"マッチング"させる「マッチスコア」を詳しく解説します。