自社ユーザーのプロフィールが分からない... 「VR FACE」による調査データを用いたプロフィールエンリッチメント
「もしも自社ユーザーのプロフィールをもっと把握できていれば効率的な施策が打てるのに...」
そのようなお悩みに対し、当社の調査データを利活用してプロフィールをリッチにすることが可能です。
今回は、調査データと AI を活用したサービスである「VR FACE」を紹介します。
「VR FACE」開発の背景
企業が効率的なマーケティングを実施しようと考えた場合、顧客ごとの特性に合わせて施策を打つということが一般的に行われています。例えば「ライフスタイル...年収500万」「メディア接触...ドラマ好き」「意識・行動...口コミ重視派」という顧客特性が事前に判っていれば、それに合わせた商品をレコメンドし、また適切なキャンペーンを打つといったことが可能となるでしょう。
しかし「年収500万」「ドラマ好き」「口コミ重視派」という顧客情報を企業が保持しているケースはどの程度あるのでしょうか。
実際には、そのような微細な情報を保持しているケースは稀であり、企業が単独で保有する情報は限定的であることが一般的と考えられます。
このように限定的な情報しか保有できない企業へのマーケティング支援の方策として、データフュージョンと呼ばれる手法を用いて不足しているデータ項目を疑似的に作り出し、新たに作成されたデータ項目(プロフィール情報)を活用するということが行われています。
図1:顧客データベースに新たな属性・情報を付与
しかし、このようなマーケティング手法が年々通用しにくくなってきているという事実もあります。個人情報保護の観点から微細な情報のやりとりを回避する傾向があることはご存じでしょう。スマホやPCを利用したネットサービスであれば、自社が保有する顧客 IDとデータ提供者が保有する顧客IDを、Cookieや広告 ID などといった連結キーを媒介して、個人プロフィールを付加し増幅していくことも可能です。しかし、このCookieや広告ID自体の取得を行わないという方向に世の中が転換しつつあるのです。
実際、Googleは2020年に入ってから「サードパーティーCookieを段階的に排除する」という声明を出しています。同様に、Appleについても「iOS14アップデートによるIDFAオプトイン化」でもお伝えしたように、近い将来データの連携が困難になってくることが想定されます。このため、冒頭に挙げたようなマーケティングを今後も実施するのであれば、Cookieに依存しない新しい手法を考える必要があります。
つまり今後の大きな流れとして、個人単位・明細単位といった微細なレベルのデータを外部に開示すること自体を困難、そしてその取得自体を止めてしまおうと考える人々が多くなっていくと考えられます。
当社でも顧客データをお預かりし、付加情報を紐づけた状態でデータをお返しするというサービスを従来より行っていますが、「データを預かるという行為」を伴うサービスモデルが困難になる可能性があるのです。
「VR FACE」とは
このような課題に対するソリューションとして、当社では「VR FACE」(Video Research Fact and AI based Character Enrichment)というサービスを展開しています。
「VR FACE」は、お客さまが保有するIDにプロフィールの付与を可能にするサービスであり、限られた情報を元に必要な情報を最大限増幅拡大することを可能とするサービスです。
「VR FACE」の特長
当初の発想として「顧客リストを預かることをせずに、当社データを付与することができないか」というところからスタートしたサービスです。そのため、お客さまの Web サイトへのタグ設置やローデータの授受を必要とせず、お客さまが保有している項目のラインナップを開示してもらうだけでプロフィールの付与が可能です。
さらに Cookie などの連結キーも必要としないため、個人情報の取得が忌避されている昨今の情勢下でも、冒頭に挙げたようなマーケティングが従来同様に可能となります。
これらの技術は、当社が保有する大規模生活者データベース「ACR/ex」が膨大な項目を持っているためにできることであり、「ACR/ex」に存在するプロフィールであれば基本的には何でも付与することができます。これら項目の中には「意識、性格、気質、価値観、生活嗜好、消費行動」といったものから、「商品、ブランドへの接触状況、旅行等のサービスへの接触状況」「年齢、年収、未既婚、家族構成」「ネット、テレビ、ラジオ、雑誌等への接触状況」まで微細にわたる情報項目が網羅されています。このため一般的な第三者データでは判り得ないレベルまで事象を深掘りしていくことが可能であり、当社が展開するサービスの奥深さの源泉ともなっています。また「ACR/ex」は単に巨大で項目数が多いというだけではなく、長年にわたる蓄積とデータ整備を経て常に最新の世相を映す情報源ともなっています。
「VR FACE」で出来ること
それでは、「VR FACE」を用いるとどのようなことが可能となるのか、例を挙げて考えてみましょう。
例えば リラクゼーション / ボディケア / リフレクソロジー を全国展開するチェーン店を考えてみてください。このような業界では如何にリピート率を増やすか、そして固定客として定着させるかということがビジネスの成功の鍵となっています。このチェーン店では近頃来店されていない顧客の中から「腰痛で悩んでいる人」を抽出し、そういった人々に向けた施策を行いたいと考えています(図1参照)。
この例の場合では、最初に顧客の特定・選別を行うために必要な情報を当社が受け取ります。ただし、このやり取りにおいて顧客データを授受する必要はなく、「性別」「年代」「未既婚」などといったチェーン店が保有している項目(注2)と、「腰痛の悩みの有無」という付与したい項目を選定します。
従来であれば顧客データ(個人情報)を当社がお預かりしてデータフュージョンなどの手法で項目を付与するケースですが、そのようなやり取りをせずに「腰痛の悩みの有無」という新情報を付与できる点が「VR FACE」の最大の特徴となります。
具体的には、選定された項目を「VR FACE」に与えると、データベース「ACR/ex」に存在するデータの中から指定された項目を利用して、機械学習による分析と探索を実施します。「VR FACE」は機械学習/AI的なアプローチにより最適解を導き出そうとします。
機械学習による分析を実施すると「男性かつ50代ならば、腰痛度合いのスコアは3.8点」などといった項目の組み合わせごとの「腰痛度スコア」を導き出す機械学習モデルが構築されます。このモデルを利用することにより「見込顧客」の度合いをスコアとして指標化することが可能となります。単純な見込顧客としての可能性の「有」「無」ではなく、スコア化することにより「4点台には A という施策」「3点台にはBという施策」「2点台には無策」といったようにアプローチを変えて効率的なマーケティングを行うことが可能になります。
注2:保有している項目はACR/exに存在している項目である必要があります
「VR FACE」で用いる機械学習手法とは
次に「VR FACE」の内部で用いている機械学習の手法「決定木分析」について、簡単に説明 します。この分析手法は機械学習の中でも結果を解釈しやすいことが利点です。昨今AIを 用いた予測にも多様な手法が登場していますが、なぜそのような結果に至ったのかが判らないものも数多く存在します。このような手法の欠点は「理由がわからないため、具体的な施 策を立てにくい」という点にあります。途中経過において人間の理解と判断が必要とされる状況においては、過程が理解しやすい手法であることが大切となります。「VR FACE」ではのように解釈可能性の高い手法を用いて作ら れたサービスです。
「VR FACE」の精度
次に「VR FACE」を用いて算出した結果について説明します。テストデータを用いて検証を行うと、「腰痛度スコア」が高いグループの方が「実際に腰痛あり」の割合が高いという結果が得られています。これは「VR FACE」によるスコアが、真の値を反映しているということになります。
また、お客さま側で保持するデータで利用可能な項目が多ければ多いほど、より高い精度で結果を得られるということが判っています。
まとめ
このように「VR FACE」を利用することで、Cookieレス / 広告IDレスの時代においてもお客様が保持するIDにプロフィールを付与することが可能となります。
ビデオリサーチでは、今後想定される個人情報保護強化の流れに対して「VR FACE」をはじめとするオリジナルソリューションをご用意しております。ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽に当社営業担当までお問い合わせください。
※「iOS14アップデートによるIDFAオプトイン化」の記事はこちら