「フィンガープリントとは?」今さら聞けない!基本の『キ』
日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。
皆さんも、毎日のように各社から発信されるニュースで最新情報をキャッチアップしたり、実務上デジタルマーケティングに関わることも多いかと思います。
このコーナーでは、皆さんがニュースや業務で触れるデジタルマーケティングに関する多くのサービスで頻繁に目にする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ない「単語」や「仕組み」について、初心者にもわかりやすく説明していきます。
- この記事はこんな方にオススメ!
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- メディア・広告がらみでデジタルマーケティング業務に従事している もしくはこれから業務上取り扱う可能性がある
- デジタルマーケティングのことは、「なんとなく」はわかるけど「詳しく」はわからないかも・・・
【1】フィンガープリント=ブラウザ上の"指紋"=ユーザーを特定する"情報群"
「フィンガープリント」という単語を直訳すると
Finger=指
Print=印刷 となります。
「指を印刷したもの」=つまり"指紋"です。刑事ドラマでよく出てくる"指紋"は、犯人を特定するために使われていますがデジタルの世界における"指紋"は、インターネットユーザーである皆さんが使っているデバイス(ブラウザ)を特定するために使われています。
ざっくりとしたイメージとしては上記の通りなのですが、刑事ドラマとは少々意味合いが異なるところが2点あります。
1点目は、特定といってもその特定対象は皆さん本人(住所や名前など)ではなく、あくまで皆さんが使っているデバイス(ブラウザ)であることです。
例えば、ビデオリサーチのホームページを例にとった場合、下記のイラストの通り特定するのはりさ子さんというヒトのほうではなく、彼女が持つスマホのほうを特定します。
2点目は、あくまでこの特定は"推定"にすぎず、ヒトの指紋のように「世界中にあなた1人だけしか持っていないもの」ではないということです。
フィンガープリントは、実は何かひとつの固有の情報のことではなく複数の情報の総称です。
大きく分けると3種類あります。
※方法により取得できる情報は異なりますので、代表例として記載します。
■そのデバイスで利用しているソフトウェアに関する情報
例:ユーザーエージェント(利用OS、ブラウザのバージョンなどが分かる情報群のこと)/ブラウザ設定言語など
■そのデバイスのスペックに関する情報
例:CPUの情報、スピーカーやマイクの数、スクリーンサイズなど
■ネットワークに関連する情報
例:IPアドレス、リファラー(直前に見ていたページのURL)など
これらひとつひとつは、どれも日本中、世界中を見渡せば同じ情報を持っているユーザーが何人も存在する情報です。ですが、これらを複数組み合わせて「情報Aも、情報Bも、情報Cも・・・・・一致しているかどうか」と確認していくとまったく同じ情報を持っているユーザーの数は限られてきます。 このように、多くの情報群を使うことでユーザーを"推定"するのがフィンガープリントの特徴になります。
なお、フィンガープリントという言葉はこの情報群そのものを指すことが多いですが、情報群を用いてユーザー推定を行う技術のことを指すこともあります。
【2】なぜフィンガープリントが注目されているのか
フィンガープリント自体は昔から存在していたものですが、数年前から注目を集めるようになりました。その理由は、多くのデジタルマーケティング業界でユーザー特定のために使われてきたCookieがプライバシー保護の観点から利用制約をかけられることが増えてきたためです。
その利用制約の代表例が、Apple社がiOSに標準実装しているITP(Intelligent Tracking Prevention)です。
ITPはざっくり言うと「Safari上でのCookieによるユーザー特定を阻止する」仕組みです。これにより、多くの広告配信事業者はCookieを用いたターゲティング配信ができなくなり、広告配信による収益悪化の影響を受けました。
※ITPについて、より詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
そこで、「ユーザー特定」という領域において、Cookieに代わる代替方法としてフィンガープリントの注目度が高まることとなったのです。
【3】フィンガープリントの弱点
前述のように注目度が高まっているフィンガープリントですが、「Cookie(*)の代替」「ユーザー特定」という観点においては弱点と言える側面もいくつかあります。
*3rd party Cookieのこと
例えば、フィンガープリントのひとつである「ブラウザにインストールしたプラグイン」情報は、人によっては頻繁に追加する人もいるため、追加する前と後では値が変わってきてしまい、同一ユーザーだと推定することが難しくなってしまいます。
同様に、IPアドレスについても、例えばスマートフォンの場合、接続する基地局によってIPアドレスは変化します。外出してコンビニのフリーWi-Fiから接続したときのIPアドレスと、自宅のWi-Fiから接続したときのIPアドレスは当然違うものとなりますので、これも同一ユーザーだと推定することが難しくなってしまいます。
また、冒頭に述べた通り、フィンガープリントはあくまで複数の情報群が組み合わさったものであり、Cookieのようにひとつのブラウザを確実に特定する情報ではありません。ユーザーの"推定"までしかできないため、Cookieよりはユーザーの特定粒度が荒くなったり、間違っていたりすることもあるでしょう。
そして、フィンガープリントの取得方法は「まとめて全部の情報群をドンを取得する」という簡単なものではなく、ひとつひとつの情報を取得していくためのシステム側の設定も必要です。ユーザーが利用しているデバイスやブラウザのコンディションによって取得できる情報も変わってきます。よって、どれだけフィンガープリントの情報を集めてくるのか、そしてそれをどう組み合わせていくのかによっても、この推定精度="推定力"が変わってきます。
上記をまとめると、フィンガープリントは「時と場合によって精度が落ちることもある」ことが弱点だと言えるでしょう。
【4】フィンガープリントをめぐる世界の動き
前述の通り、フィンガープリント自体は昔から存在していたものですが、その活用用途が「Cookieの代替方法」として着目されてきたことで、ブラウザ側はCookie同様、フィンガープリントへの対策も強化しつつあります。
例えば、Cookie規制を真っ先に始めたApple社は、「フィンガープリント作成防止」機能を掲げ、フィンガープリントの各情報群を"簡略化表示"させることで、複数の情報群をまとめてもユーザーの特定をしにくくするという工夫を行っています。
また、Google社も、特定の企業がフィンガープリントの情報群に対し1回でアクセスできる量に上限を設ける「プライバシーバジェットAPI」を設ける方向性であることを20年1月に発表しています。
ですが、フィンガープリントそのものがなくなることは無いと言えます。なぜなら、「IPアドレス」や「ブラウザの設定言語」など、その情報群ひとつひとつはユーザーである皆さんがインターネットを利用する際に必要なもの/あったほうが便利なものであるからです。
ユーザーのプライバシーを守りつつ、快適なインターネット体験を提供し続けるための新たな技術革新は起きるのでしょうか。
Cookieがなくなる世界はもうすぐそばまで近づいており、今後さらに多くの企業がポストCookie時代に向けた取り組みは加速していくことが想定されます。
フィンガープリントもそれらのどこかで活用される可能性は十分にあり、今後もその動向は注視しておくべきといえるでしょう。
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