注目の音声メディア市場!今、ラジオが若者に熱い理由とは?
皆さんはふだん、ラジオを聞いていますか。スマホでラジオが手軽に聞けるようになったり、様々な音声アプリが登場したり、音声コンテンツに接触する機会と選択肢が増え、社会に出たばかりの私の周りでもラジオを聞く人が増えているように感じます。そこで今回は、ラジオを聞く若者の実態を若者目線で考察しました。
※今回は、若者を「18~24歳の男女」(大学生から社会人1、2年目の男女)と定義し、当社ACR/ex(東京50km圏)データを分析した結果です。
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1.若者のラジオコアユーザーは増加傾向に!
図1は、若者がどの程度ラジオを聞いているか(接触状況)を、年次の推移で示したグラフです。これをみると、ラジオを聞いている若者は年々増加しているのが分かります。「週に1日以上聞く」というコア層は、2018年→2020年で約5ポイント増と、増加傾向を示しています。これ以降、この「週1日以上ラジオを聞く若者」をラジオのコアユーザーと定義づけし、その実態を分析していきます。
2020年のコロナ禍において、ラジオを聞く人が全体的に増えたことは、以前のプレスリリースで紹介しました。その傾向は、若者においても同様であり、新しい生活様式の中で、ラジオに興味のある若者が増えているようです。
図1 若者のラジオ接触状況
データソース:ACR/ex2018~2020, 4-6月, 東京50㎞圏
2.radiko(ラジコ)は若者との親和性が高い!
ここで、ラジオがスマホやパソコンで手軽に聴けるアプリ・radiko(ラジコ)の普及が、若者のラジオ接触に影響を与えたかをみてみました。
図2の折れ線グラフはradiko利用経験を示したグラフです。ここ3年で、利用者を大きく増やしていることが分かります。棒グラフはradikoのタイムフリー(番組放送後1週間であればいつでも聴取できる機能)の利用経験を示しています。こちらも利用者は増えており、個人全体(男女12-69歳)と比較して、特に若者との親和性が高いことが分かります。SNSで話題になった後に、タイムテーブルに合わせることなく、聞きたいときに聞く、見たい時に見るという今の若者のメディア接触実態観にマッチしているのではないでしょうか。この結果からradikoが、若者のラジオ聴取の促進に少なからず寄与していることがうかがえます。
最近は、ラジオを通して重大発表をするパーソナリティーもおり、ラジオ番組がネットニュースで話題になることも、SNSでラジオ番組に関する話題がトレンド入りすることも、しばしばあります。 図3が示すように、コミュニティ意識が高まっている時代に、パーソナリティーとリスナーの距離が近いことや、リスナー同士でコミュニティを感じられることもラジオならではの魅力であり、ラジオユーザーが増えているひとつの要因と推察できます。
図2 radiko(ラジコ)利用経験
データソース:ACR/ex2017~2020, 4-6月, 東京50㎞圏
図3 コミュニティ意識の高まり
データソース:ACR/ex2018~2020, 4-6月, 東京50㎞圏
では、今ラジオを聞いている若者はどういう人たちなのでしょうか。コミュニティ意識の高い人が多いのでしょうか。
3.コミュニティ意識の高いラジオコアユーザー
図4では、若者のラジオコアユーザーのメディア意識を表しています。「家族や友人とTV番組を話題にする」「TV番組についてSNSに書き込み」「SNSの書き込みでその番組を見る」において、若者全体との差がそれぞれ8~16ポイント高くなっています。若者のラジオコアユーザーはTV番組について話したり、SNSに書き込みをしたり、さらに、書き込みから番組を視聴したり、メディアに対してコミュニティを求めていることがうかがえます。
近年、ラジオ局や番組から派生したイベントが増えてきていることからも、ラジオという媒体を通じたコミュニティが形成されていることが推測できます。若者のラジオコアユーザーは、SNSで発信したり、書き込みを参考にしたりと、SNSを中心に自分のコミュニティを広げているようです。SNSでのトレンド入りや口コミをきっかけに、番組を聞き始めることって十分考えられます。
図4 ラジオコアユーザーのメディア意識
データソース:ACR/ex2020, 4-6月, 東京50㎞圏
4.つながりを求める趣味
次に、コミュニティを求めているラジオコアユーザーを趣味という視点で考察してみます(図5)。
最も目立つのは「コンサート(日本人アーティスト)」で、若者全体と比較して18.3ポイント上回っています。
近年、ラジオ局主催の音楽フェスやコンサートが各地で開催されており、リスナー限定の先行チケットが売り出されたりしています。ラジオと音楽の「ライブ」という共通の魅力が、若者を熱くさせている理由のひとつなのかもしれません。フェスやコンサートの開催だけでなく、ライブ音源をラジオで放送したり、ラジオブース内でミニライブをしたりと、ラジオと音楽のつながりはかなり濃い印象です。音楽好きなラジオコアユーザーは「ライブ」にこだわり、共通の趣味を持った人とリアルでつながれる「コンサート」を趣味にしているのでしょう。
また、「SNSの利用」は、若者全体でもスコアは高いのですが、ラジオコアユーザーの高さはより顕著です。前述したSNSで自分のコミュニティを広げている特徴が表れています。Twitterで、番組特有の「#(ハッシュタグ)」を付けて、番組の感想を発信したり、パーソナリティーにつっこんだりすることができたり、リアルタイムでメッセージを読んでもらえたりするため、最近はラジオ番組のハッシュタグがトレンド入りしていることもよく見かけます。リスナーとパーソナリティーだけでなく、リスナー同士の繋がりも感じられます。
「野球」「コンサート」も不特定多数の人とつながれる趣味ともみられますが、その逆ともいえる、「マンガ喫茶・ネットカフェ」「料理」などといった一人でできる趣味のスコアが若者全体より低いことからも、コミュニティを求めるラジオコアユーザーの特徴が出ているといえるのではないでしょうか。
図5 ラジオコアユーザーの趣味
データソース:ACR/ex2020, 4-6月, 東京50㎞圏
5.広告への意識が高い!
図6では、広告に対する意識を表していますが、ラジオコアユーザーはかなりの広告好きと読み取れます。ラジオコアユーザーの大半が「映画・本編前の広告をよく見る」としており、若者全体とは約20ポイントと大きく差が出ています。また、屋外・交通系にある広告やポスターに対しても、「よく見ている」人が多いことがわかります。
外出中はスマホ画面に夢中になっているわけではなく、周りの広告に興味を示しており、流行に敏感という特徴が表れています。いろいろな場所の、いろいろな種類の広告から最新情報を積極的に、はたまた無意識的にインプットしていることがうかがえます。
図6 広告に対する意識の比較
データソース:ACR/ex2020, 4-6月, 東京50㎞圏
6.まとめ
今回は、いま若者にも注目されているラジオのユーザーを考察してみました。想像通りでしたか。それとも意外でしたか。ラジオコアユーザーの特徴は、広告への接し方も含めて、情報感度が高く、流行に敏感であることがわかりました。中でも、メディア意識やSNSの利用という趣味からもうかがえるように、ラジオのような気の合うコミュニティを求めているということが、大きな特徴ではないでしょうか。また、「ながら」で多数のメディアから情報や刺激を受けたい、いつでもどこでも好きな時に好きなコンテンツを得たいという、若者の気持ちにラジオが応えている点もユーザー増加の要因であると考えられます。
コロナ禍で人とのリアルな接触が制限され、実態としてのコミュニティが欠乏している時代に、耳メディアへの注目は確実に高まっています。最近では、「Clubhouse」といった新しい音声版SNSが爆発的に流行っています。さらには、Voicyなどを始めラジオコンテンツ自体も需要に応じて増加してきています。
リアルなコミュニケーションが制限されている今だからこそ、人との繋がりをより濃く感じられるラジオを聞いてみるのはいかがでしょうか。
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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期:2017年~2020年4-6月調査回
・対象地区:東京50km圏