巣ごもり消費を考察してみた〜盛り上がる園芸市場〜
コロナ禍で外出の自粛が要請され、外で大人数が集まって行うような趣味などは制限されている状況が続いています。一方で、在宅でできる趣味が注目されていると考えられます。では、実際にどのような趣味が楽しまれているのでしょうか。
コロナ禍で盛り上がりをみせる園芸趣味
在宅でできる趣味といえば、例えば読書や手芸やクラフト(工芸)、ガーデニング、(園芸)などが思い浮かびます。そこで、総務省「家計調査」で、それぞれの趣味に対する年間の支出金額をみると、読書(図1)や手芸・工芸材料(図2)は2016年以降、減少傾向が続いていることがわかりました。
〈図1〉読書に対する1世帯当たりの年間支出金額の推移(円)
データソース:総務省「家計調査」※二人以上世帯
〈図2〉手芸・工芸材料に対する1世帯当たりの年間支出金額の推移(円)
データソース:総務省「家計調査」※二人以上世帯
一方、園芸に関する支出金額は2020年は昨年比112%と増加しています。図3のように2016年以降、園芸に関する年間の支出金額は読書や手芸・工芸と同様に下降傾向にありましたが、2020年は一転して過去5年で最も高い支出金額となっています。
〈図3〉園芸用植物と園芸用品に対する1世帯当たりの年間支出金額の推移(円)
データソース:総務省「家計調査」※二人以上世帯
このように在宅でできる趣味の中で、園芸が特に盛り上がりをみせているのはなぜなのでしょうか。園芸を趣味とする人について、弊社の生活者総合調査ACR/exデータでみていきたいと思います。
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園芸趣味の人はどんな人か
そもそも園芸はどのような方に好まれているのでしょうか。 最近1年間にしたレジャー・趣味活動で「園芸・庭いじり」と答えた人は全体の19.8%で、性年代構成をみると、男女比は女性が6割以上を占めています。とくに女性の中でも40代以上の割合が高く、園芸を趣味とする人全体の約半分を40代以上の女性が占めています。(図4)続いて、この女性40代以上に絞って、その特徴をみていきます。
〈図4〉最近1年間にしたレジャー・趣味活動で園芸・庭いじりと答えた人の性年代構成
データソース:ACR/ex 2020年4月-6月,調査実施7地区計
園芸趣味の人はオーガニック志向?
まず、園芸を趣味とする40代以上女性(以下、園芸趣味の女性)の生活に対する意識をみてみます。(図5) 40代以上女性全体(以下、一般女性)と比べると「食の安全性に注意している」「添加物の少ない化粧品を選ぶ」「省エネに取り組んでいる」「リサイクルや環境保護のために日頃から工夫をしている」など、製品の安全性・品質やエコに関する質問で5ポイント(以下、p)以上高くなっています。園芸趣味の40代以上女性は、健康配慮への意識が高く、添加物が少ないオーガニック製品や自然由来の製品を嗜好し、またエコへの関心が高い人たちの割合が多いと言えそうです。
〈図5〉園芸趣味の40代以上女性の生活に対する意識(%)
データソース:ACR/ex 2020年4月-6月,調査実施7地区計
園芸趣味の人の買い物の特徴は?
では園芸趣味の女性は購買行動を起こすとき、どのような基準で商品を選んでいるのでしょうか。(図6) 園芸趣味の女性は一般女性と比較して、「気に入れば値段が高くても買う(+2.4p)」、「機能や性能が良いモノを選ぶ(+5.0p)」などの項目が高くなっており、商品の値段が高くなったとしても、機能や性能を重視して商品を選んでいるといえそうです。 また「自分なりの考えでものを選ぶ(+3.8p)」が高くなっているのに対し、「衝動買いをする方だ(-2.9p)」が低くなっていることから、園芸趣味の女性は自分の価値基準をはっきり持った上で堅実な購買行動を起こす人が多いと推察できます。
〈図6〉園芸趣味の40代以上女性の購買行動に対する意識
データソース:ACR/ex 2020年4月-6月,調査実施7地区計
園芸趣味の人は広告をよくみている?
最後に、園芸趣味の40代以上女性の広告に対する意識を見てみます。(図7) 「広告をよく見るほう(+5.8p)」、「自分向けの広告でなくても、ひとつの情報として受けとることがよくある (+3.8p)」の項目が高くなっており、重要な情報源の1つとして広告からの情報収集を積極的に行っていることがうかがえます。 また、「広告は買い物をする際に役立つ(+3.3p)」、「広告を見て関連サイトを確認する(+2.0p)」が高くなっていることから、商品購入にあたっては広告情報もしっかりと活用していることが分かります。
〈図7〉園芸趣味の40代以上女性の広告に対する意識
データソース:ACR/ex 2020年4月-6月,調査実施7地区計
まとめ
今回は園芸を趣味として楽しむ40代以上の女性に焦点を当ててみてみました。 一般の40代以上女性と比べて、健康意識が高く、オーガニック製品などを嗜好し、エコへの関心も高いことがわかりました。また製品を選ぶ際には、機能・性能を重視し、自分の価値基準をはっきり持っているということもわりました。そして、その重要な情報源として広告もしっかり見ていてる様子もうかがえました。 園芸趣味を持つ人たちの特徴がかなり明確になったのではないでしょうか。
近年、生活に身近なお店でも自然由来の製品が多く販売されており、オーガニック市場が広がりをみせています。今回の考察によって、オーガニック製品やエコへの関心と園芸趣味は関連性が高いことがわかりました。園芸市場の盛り上がりは、園芸趣味を持つ人たちの特徴に加え、園芸との親和性の高いオーガニック製品やエコに対する関心が広がっていく中で、より市場が活性化しつつあることが表れているのかもしれません。
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