リサーチ事業のDXを推進 リサーチの概念を「拡張」する「リサーチ4.0」構想 〜ビデオリサーチ×オルツ プロジェクト担当者が語る〜
ビデオリサーチは、2021年1月に「P.A.I.(パーソナル人工知能)」の開発を進める株式会社オルツとパートナーシップを締結。新たな技術を取り入れたマーケティング・リサーチソリューション『リサーチ4.0』構想の実現に向けたPoC をスタートさせました。
本プロジェクトでは、オルツの「デジタルクローン」技術を活用したテレビ視聴データに「クローンDMP(Digital Management Platform:データ統合管理プラットフォーム)」を組み合わせ、個人情報を保有することなく大規模な仮説検証が可能となる「リサーチ 4.0」構想を目指します。
リサーチに新たな概念を吹き込むオルツ社の「デジタルクローン」とはどんな技術なのか。次世代メジャメント企業を目指すビデオリサーチが打ち出す『リサーチ4.0』とはどんな取り組みなのか。株式会社オルツ副社長 米倉豪志氏と、株式会社ビデオリサーチ 企画推進局 データビジネス推進部 國吉、藤森の対談をお伝えします。
▲左:オルツ副社長米倉豪志氏 右上:企画推進局 データビジネス推進部 藤森 右下:同 國吉
この記事と関連するコンテンツはこちら 【2021年02月18日プレスリリース】 |
「デジタルクローン」「リサーチ4.0」の概念
--デジタルクローンとは、どのような技術なのでしょうか。
米倉氏 デジタルクローンとは、すごく大雑把に言ってしまうとAI に人間の「モノマネ」をさせる技術です。AI が徹底的に人のモノマネを繰り返し、習熟していきます。
そもそもAIは「分析していく」のではなく、「慣れていく」のです。「あ」という文字をたくさん見ていくと、なんとなく「これは『あ』だな」とわかってきますよね。こうした人間の脳と同じ仕組みをコンピューターに置き換えたものなのです。AIが徹底的に私自身の思考や行動を繰り返し学習するうちに「完璧なモノマネ」ができるようになり、私自身が回答したものと、AIが回答したものの見分けがほとんどつかなくなっていく──。これがデジタルクローンの考え方です。
--ビデオリサーチが進める『リサーチ4.0』とは何なのでしょうか。
國吉 これまでビデオリサーチが行ってきたリサーチ手法のうち、調査員によるアンケートベースで行ってきたものを「リサーチ1.0」、インターネットを利用して行ってきたものを「リサーチ2.0」、そして最近の全数的なデータを解析して行うものを「リサーチ3.0」と定義づけました。『リサーチ4.0』は、今回のデジタルクローンのような、まったく新しいAI 的な技術を駆使してリサーチデータを生成して解析するリサーチの形です。
藤森 リサーチ1.0〜4.0におきかわるのではなく、これまで行ってきた「リサーチ1.0」から「リサーチ3.0」と並行し、新たなジャンルとして『リサーチ4.0』が加わるという考え方です。
デジタルリサーチ×オルツ " 協業" の経緯
--協業にあたり、それぞれお互いのどんな点が印象的でしたか。
米倉氏 「SFみたいだ」とされがちなデジタルクローンの概念をビデオリサーチさんには非常に現実的に捉えていただき、どんどん具体的な議論へと進めていただきました。この点はすごく印象的でしたね。
國吉 当社の池田(執行役員 兼 企画推進局長)に取り組みを説明する際、当初は「何だそれは」と言われるんじゃないかと内心思っていたのですが、それどころかとんとん拍子にイメージが共有できて「面白いよね!それ、やろうよ!」という勢いでゴーサインに至りました。
米倉氏 「自分たちが行きたいところがあって、オルツの技術で目指すところに行けるような気がする」と、明確な仮説からの逆算をされているなと思いました。まさにオルツのスタンスと共通していたので「これはいい取り組みになるぞ」と。
國吉 オルツさんの「デジタルクローンを開発し、それに対してアンケート調査を行う」という話を最初に聞いて「何かとんでもないものが生まれるのではないか」と、ある種の胸騒ぎを感じたことを覚えています。
当社も大規模なパネルデータを持っているので「クローンを用いてパネル調査ができるのか?」と興味を抱き、「どうもできそうだ」と。「オルツさんとの協業によって、驚くような未来が見えるかもしれない」と直感しました。
藤森 ビデオリサーチにはテレビを愛する人が多いということも関係しているのかもしれません。データやロジックだけではなく、ハートで動く人たちというのか。こうした土壌があったことは非常に大きかったと思います。
「人々の志向が瞬時にわかる世界」で実現したいこと
--今回の協業になにを期待しますか?
國吉 普通の人だったら1〜2日かかるような膨大なアンケートをクローンが短時間で回答してくれる、意識を代弁してくれるという点にすごく期待を持っています。
米倉氏 人間は言語だけで出来ているわけではありませんから、「映像をどのようにクローンに理解させ、その反応を引き出すか」というと研究は非常に応用の幅が広いですし、それこそオルツとビデオリサーチさんとの取り組みでなければできないことだと考えています。
藤森 オンオフといったゼロイチデータではなく、当社の「ACR/ex」のように「とても好き」「やや嫌い」といったようなグラデーションのある意識データを提供することはデジタルクローンへの進化につながりますし、今回の取り組みが実現すると多くの定性情報が取得できるようになると期待しています。
--最後に、今後のビジョンをおしえて下さい。
米倉氏 極端な話、20〜30年後には調査という概念そのものが無くなっているかもしれません。すべての志向データが同期され、例えば100万人が何を考えているのか瞬時にわかる世界を実現できたらと考えています。
藤森 「どちらのパターンがより面白くなるか」といったA/Bテスト的なことも、テレビ番組においても実現できるかもしれません。今回の取り組みで「より面白いコンテンツ作り」のお手伝いができたら嬉しいです。
國吉 コンテンツに対してどのタイミングで「飽き」が来るのか、その次にどんな領域に興味が持たれていくのかという点も掘り下げていけたら面白そうですね。さらにより幅広いマーケティングデータとして、クローンの仮想センシングデータによる健康管理(予測)など、従来の当社リサーチの枠を越えた領域も探っていけたらと思っています。
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