猫とTVCMの親和性をひも解く —猫の手を借りれば広告効果UP!?—

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広告・マーケティング
#CM #クリエイティブカルテ #メディアプランニング #広告 #広告効果検証
猫とTVCMの親和性をひも解く —猫の手を借りれば広告効果UP!?—

みなさん、猫はお好きですか。あの気ままでマイペースな感じがたまらないという人もいるでしょう。
近年、TV番組の特集で猫がよく取り上げられ、猫動画を冒頭で紹介して視聴者を惹きつけるなど、猫の露出が増えており「猫ブーム」が到来しているといえるのかもしれません。自粛生活によりTVに触れる機会が増えた中、猫が起用されているTVCMをよく見かけるなぁと感じる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、当社サービス「クリエイティブカルテ」のデータを用い、猫をCMに起用する効果をみていきます。

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クリエイティブカルテ

分析対象データ概要

分析対象データ:2015年11月〜2020年10月に「クリエイティブカルテ」で調査したデータ

・分析データ内訳
①猫が起用されたTVCM:34素材
<選定基準>
1.動物としての猫が出演しているCM(アニメとしての猫は対象外とする)
2.ちらっと猫が映るなど、猫として認識が困難なCMは除く
3.キャットフードのCMは除く

②猫が起用されていないTVCM:3242素材

・評価指標
広告認知率/広告好意度

■猫はCM認知をアップ!?

まずは広告認知率について、猫起用CM34素材と猫が起用されていないCM3242素材の平均値を比較してみました。

猫の出演有無による広告認知率の比較図1.猫の出演有無による広告認知率の比較

図1では、どの世代においても猫起用CMのほうが、認知率が高いことが見て取れます。特に女性20-34歳、女性35-49歳で、認知率がより高くなることが分かります。女性のほうが猫に弱く、より印象に残るのかもしれません。一方で、男性35-49歳の差分も大きいこともうかがえます。80年代のなめ猫ブームも影響しているかもしれません。

続いて、上記の差分に対してt検定を行った結果を見てみましょう。

t検定におけるp値(広告認知率)図2. t検定におけるp値(広告認知率)。赤字は有意であるもの。

図2を見ると、男性35-49歳、女性20-34歳で差分が有意という結果となりました。統計的にはこの2ターゲットに対して、認知率UPの効果があると言えます。しかし、広告認知率がGRPの大小によって左右される部分もあるため、一概に「効果あり」とはまだいえません。

そこで次の分析では、GRPの影響を考慮すべく、広告認知率のノームグラフに猫起用CM34素材の結果をプロットし、ターゲットごとに比較してみました(図3、図4、図5)。

ノームグラフと猫起用CMの散布図(男女15-69歳)図3. ノームグラフと猫起用CMの散布図(男女15-69歳)

ノームグラフと猫起用CMの散布図(男性20-34歳(左)、男性35-49歳(右))図4. ノームグラフと猫起用CMの散布図(男性20-34歳(左)、男性35-49歳(右))

ノームグラフと猫起用CMの散布図(女性20-34歳(左)、女性35-49歳(右))

図5. ノームグラフと猫起用CMの散布図(女性20-34歳(左)、女性35-49歳(右))

注)広告認知率のNorm:クリエイティブカルテ2021年採用ノーム(全業種)

全体の散布傾向を見ると、ノーム値を上回る猫起用CMが多いことがわかり、赤いひし形(34素材の平均値)は、全てのターゲットでノームより上側にきていることがわかります。このグラフから、同じGRPでも猫を起用しているCMはより高い認知率が得られる傾向がうかがえます。猫がTVCMの認知率をUPさせる可能性を示唆しているといえるでしょう。

猫の出演が認知率UPに貢献しているとすれば、どのような理由が考えられるでしょうか。1つ目は、猫というよりは「動物」に目を引いている可能性です。CMは基本的にタレント(=人)が出演することが多いので、人ではないもの(猫)が出ていると、より印象に残る可能性が考えられると思います。2つ目は猫ブームとの関連性です。猫を飼っている人は猫が出演するCMを自分に関連するものとしてより注視する可能性が考えられますが、冒頭に紹介した飼育数の増加を考慮すれば、他のCMよりも記憶に残る人が多く、認知率UPにつながっていると分析できます。

■猫を起用すると広告好意もUP!?

続いて、広告好意度について見てみましょう(図6)。各ターゲットで素材の平均を見ると、どのターゲットも猫を起用したCMのほうが、広告好意度が高い結果になっています。差分を見ると、女性ターゲットで差が大きくなっており、猫が起用されているCMに対し、特に女性の好意度がUPするようです。
これは先ほどの認知率と同じ傾向といえます。

猫の出演有無による広告好意度の比較図6. 猫の出演有無による広告好意度の比較

広告認知率と同様、差分についてt検定を行ってみると、全てのターゲットで有意という結果になりました。女性ターゲットよりも差が小さかった男性ターゲット・男女15-69歳についても有意な結果となり、これらから、猫の起用がCMへの好意をUPさせる可能性が窺えるでしょう。

42437-zu008.png図7. t検定におけるp値(広告好意度)。赤字は有意であるもの。

猫という要素はCM表現の一部であり、起用タレントやCMクリエイティブ全体も留意する必要はありますが、猫が出演するCMへ好意度を抱きやすくなるというのは、直感的にも自然な結果といえます。

■猫出演をより活かせるクリエイティブとは? 最初と最後の数秒が大切!?

皆さんは、「初頭効果」「終末効果」をご存知でしょうか。これは心理学における用語で、物事の最初(=初頭)の印象と最後(=終末)の印象が、全体の印象に影響をあたえるというものです。端的にいうと、最初と最後の印象が良かったものは、その出来事全体が良い印象として残りやすく、逆に悪かったものは、全体が悪い印象として刻まれやすいというものです。
これまで見てきたように、猫が広告認知や広告好意を上げうるのなら、CMの最初もしくは最後に猫を出演させると、認知や好意により良い影響を与えるのではないでしょうか。そこで、今回は、猫出演CM34素材を対象に、CMの「初頭効果」「終末効果」について調べてみました。

分析概要

・対象素材:猫が出演しているCM34素材
・初頭と終末の定義:CM冒頭3秒、終盤3秒(30秒CMの場合はそれぞれ6秒)とする。※ただし厳密に区切るのではなく、わずかにはみ出していても問題ないとする。
・「初頭」もしくは「終末」に猫が出演しているCM:24素材
・「初頭」もしくは「終末」以外で猫が出演しているCM:10素材
・クリエイティブ指標:広告認知率/広告好意度

結果

図8を見ると、広告認知率、広告好意度ともに、初頭・終末出演ありのCMのほうが高い値を示していることがうかがえます。特に、女性20-34歳の差は顕著で、広告認知率、広告好意度の両方で10pt以上も差がついています。この結果から、猫をCMの最初もしくは最後に出演させると、認知率や好意度がよりUPする可能性が示唆されました。

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図8. CM冒頭もしくは終盤に猫が出演する場合とそうでない場合の広告認知率(上)、広告好意度(下)

■結論

今回は、猫とTVCMの親和性について、「広告認知率」「広告好意度」という2つの切り口から分析してみました。結果をまとめると、

① 猫をCMに起用すると、広告認知率や広告好意度UPにつながる可能性がある。特に若年層の女性でその傾向が強い。
② 猫をCMの冒頭もしくは最後に見せるようなクリエイティブにすると、広告認知率や広告好意度をよりUPすることができる可能性がある。こちらも若年層の女性に対する効果が示唆される。

となります。今回のテーマにおける課題としては、

・犬が出演するCMと比較するとどうなるか?また、動物が出てくるCM全体と比較するとどうなのか?
・猫単体の効果はどれほどのものなのか?タレントの認知度や人気度、CMの業種など、猫以外の要素をできるだけそろえた上で分析を行う。
・猫が出演するCMの数が34素材と少なく素材数としては十分ではないため、素材を増やしても同じような結果になるか?

などの課題があるため、「猫起用で広告効果UP!」と断言するのは難しいでしょう。しかし、今回の分析で、"猫の手"を借りれば広告効果がUPする可能性が示唆されたといえるのではないでしょうか。
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