Z世代のお金事情〜NISA利用者から見える投資関心層の特徴とは〜
2022年3月26日は、天赦日と一粒万倍日と寅の日が重なる、金運が良いとされる日!お財布を買い替えたり、投資を始めたりと、お金に繋がる行動を始める方も多いのではないでしょうか。
私たち2021年入社の新入社員も社会に出て早1年、将来のお金について考え、行動することが増えました。
今回は、我々Z世代の「お金」に対する考え方や行動についてみていきたいと思います。
Z世代の間では、新型コロナウイルス感染症の流行や、老後2000万円問題などの将来に対する不安から、貯蓄だけでなく、お金を使ってお金を生み出すことに注目が集まっている様子が調査結果から読み取れました。
※本レポートでは、Z世代且つお金との接点が多い層として、20~26歳の男女有職者を「Z世代」と定義し、当社ACR/ex(2021年4-6月調査,7地区計)データにて分析を行いました。
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1. Z世代の今と未来の考え方
まず、お金に対するZ世代と各世代の違いについて見ていきましょう。
図1は、「お金を今の生活を楽しむために消費する」について示したグラフです。年齢が高まるにつれてスコアが減少していくなか、Z世代は68.0%と高く、今の生活を重視してお金を使う意識が強いことが分かります。
その一方で、「将来に備えてお金を貯める」(図2)についても57.7%と、上の世代とほぼ同じくらい、将来に備える意識も強いことが読み取れます。Z世代の多くは、現在と将来の両方を充実させることを意識して、自身のお金の使い方を考えているようです。
続いて、収入と資産についてです。図3は各世代の平均個人年収、図4は世帯平均金融資産額のグラフです。Z世代の平均は、個人年収286万円、世帯金融資産額484万円と、いずれも個人全体より少なくなっています。一方、個人年収・世帯金融資産額どちらも30代、40代と年代が上がるにつれて増加傾向にあります。特に世帯金融資産額で年齢との相関関係が強いとみられ、Z世代は収入に対する資産額は少ないものの、資産形成について意識し始め、人によっては具体的に活動を開始する時期かもしれません。
2. コロナ禍で続く、Z世代における投資への関心の増加
年収・資産ともに成長途中なZ世代、その資産を増やす手段のひとつとして"投資"が挙げられます。
図5は、Z世代の投資の利用状況と利用意向をまとめたグラフです。個人全体の利用割合29.0%、利用意向25.8%というスコアに対し、Z世代は利用割合20.6%、利用意向27.8%。個人全体とZ世代を比較すると、Z世代は現在、投資利用者は少なく、今後利用意向のある「投資関心層」が多いことが分かります。
Z世代の投資関心層が3割ほどいることがわかりましたが、過去に遡ってもこんなに存在していたのでしょうか。そこで、2018年から関心層の推移を見てみました(図6)。2019年までは2割に満たない値で推移していた関心層ですが、2020年は21.9%(前年比+5.9pt)、2021年は27.8%(前年比+5.9pt)と増加傾向にあり、2020年から大きく増加しています。2020年は、老後2000万円問題が話題となり、新型コロナウイルス感染症が広がった年でもあります。現在も続くコロナ禍による生活不安や将来不安等も、Z世代の資産形成への関心に結びついているのではないでしょうか。
【図6:Z世代の投資利用意向推移】
データソース:ACR/ex 2018-2021年4-6月,7地区計
3. Z世代のNISA利用者の3つの特徴
資産形成の方法はいくつもありますが、投資初心者が始めやすいとされる制度として「NISA」(小額投資非課税制度)があります。このNISAを、Z世代でいち早く利用している人はどのような人たちなのでしょうか。ここでは、Z世代をNISA利用者と非利用者に分類し、それぞれの傾向について考えていきます。
Z世代のNISAの利用意識を見てみると、2021年の利用割合は10.7%、利用意向は17.8%でした(図7)。前述の投資と同様に、まだ利用していないが今後利用したい「NISA潜在利用層」が増加傾向にあります。現在、Z世代でNISAを利用している割合は1割程度ですが、近年、利用意識が高まっており、利用割合+9.3pt(2018年比)、利用意向+10.2pt(2018年比)と両項目で数値を大きく伸ばしています。今まさに注目され始めていることが分かります。
【図7:Z世代のNISAの利用割合、利用意向】
データソース:ACR/ex 2018-2021年4-6月,7地区計
Z世代のNISA利用者はごく一部(Z世代のうち利用者10.7%、今回の分析対象は73サンプル)です。これを、Z世代全体の傾向であると読み解くことは注意が必要ですが、分析を通してZ世代のNISA利用者には、いくつかの特徴があることが分かりました。今回は、Z世代のNISA非利用者と比較しながら、特に特徴的な3つの項目についてお伝えします。
Z世代NISA利用者その① ネットを用いて自ら情報を集める
Z世代といえば、「デジタルネイティブ」「スマホネイティブ」の世代とも称され、"SNSや""スマートデバイス"は生活から欠かせません。調査結果から、Z世代の中でもNISA利用者の方が、インターネット・屋外広告の接触率が高く、インターネットの接触時間が長い傾向にあることがわかります(図8、9)。特に、インターネットの接触時間は、NISA非利用者:平日平均193分、土日平均219分に対し、NISA利用者:平日平均253分、土日平均285分とそれぞれ約1時間の差があります。
一方、NISA非利用者は、テレビや雑誌・ラジオ・新聞の接触率が高く、NISA新規利用者獲得の観点ではこれらのメディアの効果が期待できそうです。
Z世代のNISA利用者は、メディアの中でもデジタルの情報に敏感で、特に情報を収集することに時間を費やしているようです。NISAについての情報もその中で触れる機会があるのではと推測されます。
Z世代NISA利用者その② 購買意欲が旺盛
Z世代のNISA利用者が、商品購入時に最も意識することは「便利なもので時間や手間を節約したい」で、なんと97.3%と100%に近い値です。NISA非利用者(83.6%)とも13pt以上の差があります。
その他、「気に入れば値段が高くても買う」86.3%(NISA非利用者比+12.2pt)、「購入前に使用者の感想を調べる」80.8%(NISA非利用者比+10.6pt)などの項目でも、大きな差がみられました。
これらのことからZ世代のNISA利用者は、積極的な購買意欲を持っていることが分かります。さらに、口コミなどで事前に下調べをし、評判の良いものや便利なものは積極的に購入し、時間や手間を節約する、いわゆる"効率"の良さを重視しているようです。
Z世代NISA利用者その③ SNSは基本ROM専(見る専・読む専)
SNSの利用頻度も、Z世代のNISA利用者、非利用者で比べると、NISA利用者の方が多いようです。図11は各SNSを最近一週間以内に利用した割合です。Twitter、Instagram、Facebookで比較してみると、わずかですが、NISA利用者の利用率がいずれもNISA非利用者を上回っています。
Z世代のNISA利用者において、中でも特徴的なのはSNSの利用方法でした。TwitterとInstagramの投稿頻度、閲読頻度を比較してみると、両サービスとも「ほぼ毎日数回閲覧している」割合が半数を超える一方で、「ほぼ毎日投稿する」割合は20%に満たない数値になっています(図12、図13、図14、図15)。
【図12:NISA利用者のTwitter閲覧頻度】
【図13:NISA利用者のInstagram閲覧頻度】
【図14:NISA利用者のTwitter投稿頻度】
【図15:NISA利用者のInstagram投稿頻度】
どうやら、Z世代のNISA利用者は、SNSを"情報発信"のためのツールではなく、"情報収集"のためのツールとして活用しているようです。Z世代の広告に関する意識調査において、「情報収集に熱心なほう」と答えたNISA利用者は54.8%と、非利用者よりも20.4pt高いことからもその様子がうかがえます(図16)。
ただし、"情報収集"しかしていないかと思いきや、そういうわけでもないようです。広告に関する意識をみると、「自分が注目した話題はすぐ人に伝えたくなる」割合は49.3%とNISA非利用者よりも高く、知り得た情報は、SNSではなく、雑談やLINEなど身近な人に対して直接情報を発信しているのかもしれません。
4. まとめ
今回は、Z世代のお金に関する意識について考察し、1、2章では、Z世代のお金に対する意識について、3章では、特に投資関心層としてNISA利用者についてまとめてみました。
2. 近年、Z世代の資産形成への関心が高まっている
3.Z世代NISA利用者の特徴
①ネットを用いて自ら情報を集める
②購買意欲が旺盛
③SNSは基本ROM専(見る専・読む専)
Z世代は、「今の生活を楽しみたい」とする一方で、「将来に備え貯蓄する」堅実な一面も持っていることが分かりました。また、1割程度と少ないもののNISA利用者については、積極的に情報収集を行う様子が見受けられました。
近年、新型コロナウイルス感染症の流行や老後資金問題が取り上げられる中で、将来に備える資産形成は一般化されつつあります。そして、2022年度からは新たに高校の家庭科で「資産形成」授業もスタートします。
今後ますます、お金について考え、行動する若者が増えていくのではないでしょうか。