「マーケティングミックスモデル」の作成時に注意すべきこと〜広告投資に用いる変数とは?〜
よくクライアントとの会話で「マーケティングミックスモデル(以下MMM)」に関する話題が挙がります。自社の広告投資やマーケティング施策が売上等のKPIにどう寄与するのかをモデル化するMMMはまさに夢の試みなのですが、「大成功した」というような話はなかなか聞かれません。成功しない原因は様々ですが、私は「広告投資」の変数として「広告費」を使用することがその一因であることが多いという印象を持っています。今回は何を「広告投資」の変数とするのが合理的なのかを考えてみたいと思います。
説明変数「広告費」は合理的か?
一般にMMMの作成において、「広告投資」の変数に用いる指標は「広告費」です。ある期間の各メディアに投下した「広告費」と、それと対になる売上などのKPIのデータセットを作成しモデリングするという手続きをとります。しかし、「広告費」は合理的な変数といえるでしょうか?
各メディアの「広告費」を用いたモデリングする際の前提は、各メディアの広告効果は等しいというものです。同じ100万円を投下した際に得られる効果はテレビCMでも交通広告でもWEB動画広告でも等しい、というようなことです。この前提は正しいと言えるでしょうか?
「広告出稿」が担保するものは「延べ接触人数」
私は「広告効果」とは、リーチ×態度変容の掛け合わせであると考えています。広告を出稿することで担保されるものはリーチ、ここでは便宜的に「延べ接触人数」とします。(厳密にいえば「延べ接触人数」は、リーチだけでなくフリークエンシーも含んだ考え方です。)
広告効果を形成するもうひとつの要素「態度変容」はどうでしょうか?これは出稿するメディア特性やクリエイティブの出来栄えなどにも左右されます。広告を出稿することでリーチは担保されますが、「態度変容」は必ずしも担保されるものではありません。
説明変数には「延べ接触人数」を使う
「延べ接触人数」1人あたりの単価は各メディアで等しいといえるのか?という問題ですが、当社データを用いて分析したところ、そうではないという結果がみられています。ここに、「広告費」を説明変数としたMMMが成功しない要因があると考えられます。「広告費」ではなくに広告出稿が担保する「延べ接触人数」を説明変数とすることで、MMMがうまく機能することが期待できます。
各メディアの「延べ接触人数」は以下の手順で算出します。
① 当社のサービス「VR-MAPS」を用い各メディア広告のリーチとフリークエンシーを推計
② ①の推計値(リーチ)にエリア内推定人口を掛け合わせ、その広告の「延べ接触人数」を算出
「延べ接触人数」は、デジタル広告では"インプレッション"に相当する数字です。この「延べ接触人数」の推計によって、今まで課題であったデジタルと他メディアを横並びで比較することが可能になります。
MMMより作成する各メディアの「態度変容力」
MMMの説明変数である「出稿量」を「広告費」でなく「延べ接触人数」としても、広告効果を構成する要素の一方(リーチの要素)しか加味できていません。もう一つの要素である「態度変容」のパラメータについても各メディアに持たせる必要があります。そうすることでMMMの精度が上がるだけでなく、各メディアの態度変容力も加味した効果予測・出稿配分が可能になります。
MMM上での「広告出稿量」は「延べ接触人数」を用いることで、より精度が高く現実に即したMMMを作成できる可能性が高まります。弊当社に出稿情報をいただければ、各メディアの「延べ接触人数」を算出することができます。ご興味いただけましたら、ぜひ一度お問い合わせください。