友人との会話やSNSがテレビ番組の視聴体験の満足度を上げる、は本当か? 〜<視聴ジャーニー>研究のススメ〜映像視聴の生活者研究シリーズ
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅テレビ番組の視聴促進のための施策を検討している方
✅テレビ番組の満足度が高まる要因を知りたい方
✅視聴者がどのようにテレビ番組を楽しんでいるか興味がある方
1.<視聴ジャーニー>とは?
ビデオリサーチの生活者に関するシンクタンクであるひと研究所では、当社が保有するデータを活用しながら、生活者の今と未来のインサイトを探求しています。活動の一つである「映像視聴行動研究」の一環として現在、<視聴ジャーニー>研究というものを進めています。<視聴ジャーニー>とは、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる視聴にまつわる行動やリアクションなどを指します。これらの視聴者行動の実態や効果を知ることで、番宣や広告、SNS施策のヒントになる知見を得ることを目的としています。
たとえば、視聴者はテレビ番組を楽しむ際に、テレビをつけて偶然放送されているものを、ただ見ているだけではありません。視聴前には家族や友人と番組について会話をしたり、情報収集をしたりします。視聴中には泣いたり笑ったりし、視聴後にはSNSで感想のやりとりすることも多いと思います。例えば、サスペンス・ミステリー系のドラマの考察がSNSで盛り上がり、それも含めて視聴者はドラマを楽しんでいるという現象は、代表例の一つといえます。
テレビ番組など映像コンテンツを視聴することによって得られる満足感は、番組内容の面白さに加えて、このような視聴の前/中/後の行動やリアクションを含めた「視聴体験の満足度」として形作られると考えることができます。マーケティングで用いられる、商品やサービスを利用するまでの過程・購入後のフォローアップなどの経験の総合的な価値を重視する"カスタマーエクスペリエンス(CX)"と同じような考え方です。そしてこの「視聴体験満足度」が高ければ、番組の継続視聴や、テレビ放送や各動画サービスなどのサービス自体への好意度の向上にもつながることが期待できます。【図1】
具体的な仮説として、例えば次のようなことが考えられます。まず、自分の好きなアイドルの情報を収集しているときに、出演する番組を知ります。視聴前には、番組について同じアイドル好きの人と会話したり、番組について情報検索をしたり、さらには録画予約をしたりします。視聴中には、テレビの前で応援するアイドルを見ながら思わず笑ったり、リアルタイムでSNSに投稿をしたりします。視聴後には、番組の感想をSNSで検索をしたり、感想を発信したりします。こういった行動が伴うことが、番組をより一層「楽しく感じる・満足に思う」ことにつながっているのではないかと、ひと研究所では考えました。
このように、映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」の視聴にまつわる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、どのように「視聴体験満足度」に影響しているかを理解することを目的とした研究が<視聴ジャーニー>研究です。ひと研究所ではこの研究での知見が、番組・コンテンツをもっと視聴者に楽しんでもらうための施策のヒントとして役立つのではないかと考えています。
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2.視聴ジャーニーが豊かになると、テレビ番組の視聴体験満足度は高まる
ひと研究所では2022年7月に、テレビ番組視聴においての<視聴ジャーニー>の実態と視聴体験満足度への影響を把握するために調査を実施しました(インターネット調査/全国15〜69才の1556名回答)。調査では"この1年くらいの間で、印象に残るテレビ番組"について、具体的な番組名を挙げてもらい、一人最大2番組まで視聴にまつわる行動などを回答してもらうというもので、延べ2348番組の回答データが集まりました。
<視聴ジャーニー>の具体的な内容として、「視聴にまつわる行動」を21の内容で整理し、「視聴前」「視聴中」「視聴後」それぞれについて行動の有無を質問しました【図2】。例えば、番組・テーマ・出演者について調べた、SNSやウェブサイトで感想を読んだり書いたりした、家族や友人・知人などに視聴をすすめた、番組を見ながら笑ったり泣いたりした、録画予約・視聴予約をした、といった内容です。
その後に、「視聴体験満足度」として、"番組の内容に加えて、その視聴前後の体験や行動・お気持ちも含めて、総合的にどのくらい満足しましたか"という質問をしました。
※調査の設計上、"印象に残るテレビ番組"について回答しているため、必然的に視聴体験満足度が高い番組の回答が多くを占めています。本調査結果は、視聴体験満足度が高い番組の中で、さらに満足度が高まる要因を分析していますので、満足度の数値を見る際ご注意ください。
ここからは、調査結果を見ていきたいと思います。まず、視聴前/中/後の行動の出現数と視聴体験満足度の関係です。いずれにおいても、行動の個数が多くなるほど視聴体験満足度(「非常に満足した」のスコア)が高くなっていることが分かります【図3】。この結果から、視聴にまつわる行動が数多く起きるほど、視聴体験満足度は上昇していることが分かります。
さらに、視聴前/中/後での行動の組み合わせパターン別にスコアを見てみます(図4)。視聴前/中/後で視聴にまつわる行動がない場合と比較して、いずれか単独時点で行動がある場合や、視聴前と視聴中といったように2時点以上で行動がある場合とを比較しました。すると、視聴前/中/後それぞれ単独で行動があっても、もちろん視聴体験満足度は上昇しますが、2時点以上の組み合わせで行動があったほうが、さらに視聴体験満足度が上昇していることが分かります。
つまり、単純に行動数が多いだけでなく、視聴前/中/後に分散して、それぞれで行動があったほうが満足度の上昇には寄与していることになります。また、その中でも「視聴後」の行動があることが、視聴体験満足度の上昇には影響が大きいこともうかがわれる結果でした。
3.番組をもっと視聴者に楽しんでもらうには
以上のように、まず、視聴前/中/後の行動が起き、さらには数多く起きることで視聴体験満足度は高くなることが分かりました。このことから<視聴ジャーニー>を理解することが、テレビ番組の視聴体験をより良いものにするのに役立つ知見の発掘につながることが示されました。
また、前/中/後の複数の時点で行動が起きることで、より一層視聴体験満足度が高まることも分かりました。すなわち、視聴者に対しては、番組視聴前/中/後 のいずれかの<点>ではなく、それらを組み合わせた<面>での施策でアプローチして行動を喚起することが重要になってくることを意味しています。
今後、視聴前/中/後で具体的にどのような施策の効果が高いかなど、引き続き分析を進め検証していきます。
ひと研究所による<視聴ジャーニー>研究にご期待ください!
今回は<視聴ジャーニー>研究の考え方と、調査結果を簡単にご紹介しました。ひと研究所では現在、詳しい分析を進めています。視聴前/中/後のどのような行動が視聴体験満足度を上昇させるのかなど、分析結果をまとめたレポートを後日発刊する予定です。ご興味お持ちいただけましたら、お気軽に以下よりお問い合わせください。
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【調査データ概要】
ひと研究所「視聴ジャーニー調査」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15〜69歳(中学生は除く)かつ1年以内で印象に残る番組がある
サンプル数:1556名
(住民基本台帳の構成比、スクリーニング調査の出現率に応じてウェイトバック集計を実施)
調査期間:2022年7月29日(金)〜8月1日(月)
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