SDGsコミュニケーションのカギはZ世代!? 〜応援されるSDGs広告とは〜

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広告・マーケティング
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SDGsコミュニケーションのカギはZ世代!? 〜応援されるSDGs広告とは〜

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅SDGsマーケティングに関心がある方
✅SDGsコミュニケーションに課題を感じている方
✅Z世代に刺さるクリエイティブについて興味のある方

1. 通常の広告とは評価視点が異なるSDGs広告

昨今、SDGsという言葉をよく耳にしませんか?
SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標ともいわれています。例えば、エコバッグを使う、電気をこまめに消すなど、SDGsを意識した行動を取る人が増えてきていると思います。企業としても、企業イメージアップや既存商品への新たな価値づけといった、SDGsに取り組むメリットが生まれています。

これらのメリットを享受するには、自社がSDGsに取り組んでいくことを対外的に発信していく「SDGsコミュニケーション」を実行する必要があります。
しかし、SDGsは企業広告に近い訴求であり、消費促進とは異なる方向の別の評価視点を持つことが求められます。この評価視点とは何なのでしょうか。そしてどういう層にどういうクリエイティブで訴求すればよいのでしょうか。

本記事では、SDGsコミュニケーションを実行したい企業様をビデオリサーチ在籍のコンサルタントらがサポートする「SDGsコミュニケーション支援サービス」での分析メニューから『一般生活者から応援されるSDGsコミュニケーション』について、実際のデータを用いてご紹介します。

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2. SDGsへの意識の高まり、拡散力、Z世代はコミュニケーションのカギ!?

マーケティングのターゲットとして注目されるZ世代。SDGsコミュニケーションにおいても彼らはカギになってきそうです。例えば、環境に関する意識項目の中で、私たちにより身近な「リサイクル」についての意識を見ると、全体(男女12-69歳)よりスコアは低いものの、直近5年間で10pt以上スコアが伸びており、Z世代の意識の高まりが見えてきます。(図1)。
※Z世代の定義は諸説ございますが、本記事では「男女12~25歳」と定義し、分析を行いました。

図1:「リサイクルや環境保護のために日頃から工夫をしている」人の割合(%)
「リサイクルや環境保護のために日頃から工夫をしている」人の割合(%)
出典:ACR/ex2018~2022年 4-6月、東京50km圏

また、ブログやSNSからSDGsに関係する情報を収集する傾向も強く、Z世代はテレビCMの内容についての書き込みも盛んなようです(図2)。

図2:Z世代の情報収集・発信意識(%)
Z世代の情報収集・発信意識(%)
出典:ACR/ex2018~2022年 4-6月、東京50km圏

このように、SDGsに対する意識の高まりが見られ、拡散力も高いZ世代を狙って広告コミュニケーションを行うことは非常に重要であると考えられます。しかし、Z世代に対してどのような広告でアプローチしていけばよいのか分からない企業様が多いのも事実です。ここからは、Z世代を掴むSDGs広告とはどのようなものか探っていきたいと思います。

3. SDGs広告を評価する「応援スコア」とは?

具体的な傾向を紹介する前に、ビデオリサーチで調査しているSDGs広告の評価視点について紹介します。ビデオリサーチのテレビCM評価サービス「クリエイティブカルテ」では、SDGs広告の評価を主に「総合評価」「メッセージと表現の評価」「テーマの評価」「ネガティブ評価」の4つの視点で調査しています(図3)。

図3:「クリエイティブカルテ」でSDGs広告を評価する視点
「クリエイティブカルテ」でSDGs広告を評価する視点

このうち、最も重要な指標として「応援スコア」を定義しています。これは、企業やブランドを応援したい気持ちを高めるか?という評価です。SDGsの浸透が進むにつれ社会全体の利益を考えた行動が求められる中、社会貢献に関するメッセージを見て「共感」や「賛同」を感じた時、その企業に対して「応援したい」という気持ちが芽生えるのではないでしょうか。

応援は、「味方になる」「力を貸す」といった行動的な意味合いを含む言葉ですが、SDGs広告を起点して企業と消費者が一体となって行動することを考えた時、「応援」は企業と消費者を結び付ける最適な評価指標ではないかと考えられます。以下、この「応援スコア」をメインとしながら、Z世代の反応を分析していきます。

4.Z世代はSDGs広告に敏感に反応しやすい

まずは各評価項目を世代別で見てみましょう。図4は、X世代(43~69歳)、Y世代(26~42歳)、Z世代(15~25歳)でのSDGs広告評価指標スコアを比較しています。この結果から応援スコアをはじめとして各項目でZ世代のスコアが高くなっており、SDGs広告に対して敏感に反応していることが分かると思います。ポジティブな項目での反応が高い一方で、「偽善感」「自己満足感」「非現実感」といったネガティブな項目でもスコアが高く、Z世代はマイナス要素に対しても敏感な傾向があることが分かります。

図4:世代別で見たSDGs広告評価指標のスコア(%)
世代別で見たSDGs広告評価指標のスコア(%)

では、このネガティブな評価が「応援スコア」に影響する傾向はあるのでしょうか。図5は、応援スコアと3つのネガティブ項目それぞれの相関係数です。相関係数の絶対値が高いほど2項目間の関係性が強い(プラスなら正の相関、マイナスなら負の相関がある)ことを意味しますが、データを見ると、Z世代は他世代と比べて相関係数が小さいことが分かります。

このことから、Z世代はネガティブな反応を見せても、それが企業を応援したいという態度には影響しにくいということが見えてきます。

図5:ネガティブ項目と応援スコアの相関係数
ネガティブ項目と応援スコアの相関係数

「この企業は偽善的だ!」といったネガティブな評価を恐れてSDGs広告をためらっている企業様も多いと思います。しかし、このデータを見ると、ネガティブな反応を恐れて広告を出さないことは非常にもったいないことであり、今後社会に出てきて購買力も高まるZ世代に対してSDGs広告を積極的に打っていくことは大切であると考えます。

5. Z世代にウケやすいのはSDGs"全域的"なCM

では、具体的にどのような広告でZ世代にアプローチしていけばいいのでしょうか。図6はビデオリサーチで調査したSDGs広告(TVCM)全53素材について、横軸に全体(15〜69歳)の応援スコア、縦軸にZ世代と全体の応援スコアの差分をとったものです。Z世代と全体の応援スコアの差の値が大きいほど、全体と比較してZ世代の応援スコアが高くなっていることを示しています。

赤色のプロットはSDGs"全域的"な広告(特定のテーマで訴求していないSDGs広告)であり、15〜69歳全体の応援スコアとしてはあまり高くないものの、Z世代では全体と比較して高くなっていることがわかります。このことから、Z世代は他世代と比べて、特定のテーマを持たないSDGs広告に対して応援したいと感じる傾向があることがわかります。

図6: SDGs"全域的"なCM(赤丸)とそれ以外のCMの散布図
SDGs

ではなぜ、Z世代はSDGs"全域的"CMを支持する傾向があるのでしょうか。平成29年公示の「新学習指導要領」、そして平成30年に閣議決定された「第3期教育振興基本計画」では、「持続可能な社会の創り手となることができるようにする」という言及がなされています。現時点でZ世代と呼ばれる人はこの方針に沿った教育を受けている人が多く、道徳や社会といった教科に限らず、幅広い場面でSDGsについて学んでいる可能性が考えられます。

SDGs"全域的"なCMは具体的なテーマを持たないがゆえに、メッセージが綺麗事に聞こえてしまうこともしばしばありますが、SDGsをより深く学んでいるZ世代には、「SDGsやっぱり取り組まないといけないよね」といった感じで違和感なく受け入れられ、他世代よりも評価が高くなると考えられます。

6. Z世代×具体的テーマでの訴求方法とは?

今度は具体的なテーマを持つSDGs広告への反応を探ってみましょう。図7は、具体的なテーマを持つSDGs広告のみを対象とした散布図です。赤色でプロットしている素材は、「人や国の不平等」をテーマとしている広告で、Z世代と全体との差分が大きい傾向にあることが分かります。このデータから、Z世代は他世代と比べて、「人や国の不平等」を扱う広告に対して「応援したい」と思う傾向が強いことが分かります。

赤丸で囲っている素材は、具体的なテーマを持つ43素材のうち、応援スコアがZ世代と全体で最も差分が大きいCM、つまりZ世代で特に応援されているCMです。ジャンルはヘアケア製品で、トランスジェンダーの元就活生がどういう気持ちで自分らしさを出して就活に挑んだのかを語る内容です。図8で、高評価を得ている素材の各評価指標のスコアを見ると、応援スコアだけでなく他のスコアも非常に高く、ネガティブな項目のスコアも比較的低くなっています。具体的なテーマを持つCMの成功例といってよいでしょう。

図7:特定のテーマを持つSDGs広告の散布図
特定のテーマを持つSDGs広告の散布図
図8:高評価を得ている素材の各評価指標のスコア
高評価を得ている素材の各評価指標のスコア

このCMに対するFA回答と、具体的なテーマで訴求する際のコツをまとめてみました(図9)。

図9:分析素材に対するFA回答と訴求のコツ
分析素材に対するFA回答と訴求のコツ

SDGsコミュニケーションにおいて、自社の取り組みや商品をアピールしたいという気持ちがあるかと思いますが、やみくもに宣伝するのではなく、無理矢理ではない自然な文脈で訴求していくことが重要なようです。

また、就活などZ世代と隣接する事柄や体験などと結び付けた訴求も有効かもしれません。具体的なテーマで訴求するとなるとそのテーマのイメージが強くなってしまうこともあるため、自社やその商品を記憶に残すことを軸にしながら、具体的なテーマとのバランスをとる必要があります。

7. まとめ

本記事では、SDGsコミュニケーションにおいてZ世代が重要であること、そしてZ世代に応援される広告の特徴についてご紹介しました。

まとめ

SDGsコミュニケーションを今から始める、また、具体的なテーマが定めきれていない企業様も多いかと思います。そういった企業様は、まずはZ世代に対してSDGs全域的なCMで自社のスタンスを表明してみてはいかがでしょうか。具体的なテーマが定まっている企業様は、なるべく自然な文脈で訴求することに留意しつつ、Z世代になじみ深いことと絡めながら訴求するのがよいようです。

当社では多様なメディアデータを用い、幅広い視点でSDGsコミュニケーションを支援しています。今回の分析が皆様の広告コミュニケーション活動の参考になれば幸いです。
また、ビデオリサーチによるSDGsコミュニケーション支援サービスにご興味をお持ちの方は、お気軽に以下よりお問合せください。

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【本記事で紹介したサービス】
■ビデオリサーチ「クリエイティブカルテ
・調査素材:SDGsを題材としたCM53素材(2021年10月〜2022年3月に調査)
・調査エリア:関東一都六県(に居住)
・調査対象者:男女15歳(中学生除く)〜69歳(N=540s)
・サービス案内資料:こちらよりダウンロードいただけます

■ビデオリサーチ「ACR/ex
・調査時期:2018〜2022年 4~6月
・対象地区:東京50km圏
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