「データ分析初心者が知っておきたいプチテクニック7選」今さら聞けない!基本の『キ』
日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。 このコーナーでは、頻繁に見聞きする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ないデジタルマーケティングに関する「単語」や「仕組み」について、初心者にもわかりやすく説明していきます。今回は「データ分析初心者が知っておきたいプチテクニック7選」をテーマにお届けします。
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅専門知識を頑張って覚えるほどではないけど、データ分析に必要な知識は身に付けたい!
✅メディア・広告がらみでデジタルマーケティング業務に従事している。もしくは、これから業務上取り扱う可能性がある
✅デジタルマーケティングのことは、「なんとなく」はわかるけど「詳しく」はわからないかも・・・
0. 上司から頼まれた「データ分析」、でも・・・やったことがない!
デジタル技術の進展により、データの収集が容易になり、様々な機器・サービスから多くのデータが比較的簡単に集まるようになった現在。
集まったデータを簡単なプロセスで、誰でも閲覧できるサービスも多く登場し、それらを活用したデータ分析が求められるビジネスシーンも増えていますよね。学生時代に統計学等を専攻しなかった人や、業務経験がない人でも、自分でデータ分析をしたり、他者に出してもらったデータを自分で読み解き、判断を求められることも多いことでしょう。
ですが、「データを読み解くこと」そして「読み解いたデータから業務改善・改良等を行うこと」は意外と難しい、と感じる方も多いようです。読み解き方によっては誤った結果や判断を導き出してしまうリスクも伴います。
そこで今回は、データ分析初心者の方向けに「知っておきたいプチテクニック」を専門用語は一切使わずにご紹介したいと思います。
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1. プチテクニック①「データを読み解く順番を意識する」
例:「当社サイトに新しくアップしたコラムページAは、先週の2倍PV数を稼ぎました」
一見するとイイ話、と思いがちですが、以下の背景があるとしたらどうでしょうか。
・当社サイトはビジネスユーザー向けの商材の紹介をメインに行っており、
コラムページAは資料請求目的で作られたものである
・コラムページAの流入元の9割が「エンタメ系のまとめサイト」からであった
ということは、コラムページAのPV数が伸びたのは「エンタメ系のまとめサイトにリンクが貼られたことで、一般生活者の流入が増えたから」であり、その閲覧目的はビジネスではなくエンタメネタとして楽しむことだったのではと推察されます。
ビジネスユーザー向けの商材販売をしている当該企業にとって、このPV数増加は喜ばしい事象なのでしょうか?
さらに、
・当社サイトは月間PV数が5万である。コラムページAの先週のPV数は「10」だった
としたらいかがでしょうか。今週のPV数は「20」ということになりますが、月間5万PV稼ぐサイトで20PVという数字は喜ばしい結果なのでしょうか?
データを読み解く際に意識しておきたいのが、「順番」です。
具体的には、以下の3ステップで落とし込んでいくといいでしょう。
1.見たいデータが「全体」の中でどの位置にいるのか
2.見たいデータを構成する「サンプル」はどんなひと(事象)なのか
3.見たいデータが放つ「特徴」は何なのか
コラムページAに当てはめると以下のようになります。
見たい(分析対象とする)データ=「コラムページAのPV数」
1.見たいデータが「全体」の中でどの位置にいるのか
→月刊PV数「5万」のうちの「20」
2.見たいデータを構成する「サンプル」はどんなひと(事象)なのか
→ページ訪問者の9割が「エンタメ系のまとめサイト」から来たひと
3.見たいデータが放つ「特徴」は何なのか
→資料請求目的で作ったページなのに、「エンタメネタ」を見に来たひとばかりが来訪している
このように順を追ってデータを見ていくと、コラムページAの分析は1の段階で「PV数が20しかないので、分析するに値しない影響度である。よって、分析自体今やらなくてもいいだろう」という判断もでき、省力化につなげられます。
もちろんコラムページAがその企業にとってどの程度重要性を持つかにより、PV数が20しかなくても分析を進めたほうがいいこともありますが、上記1~3の順を追ってデータを読み解くことでコラムページAの分析に必要な情報をある程度網羅的にまとめられるでしょう。
2. プチテクニック②「適切な比較相手を見つける」
例:「コラムページAは、コラムページBよりページ経由の資料請求数が5倍多いです」
上記の例では、コラムページAの分析のために、コラムページBを「比較相手」として選び、スコア比較をしています。
分析を行う際に重要となるのがこの「比較相手」。では、その相手方はどうやって選ぶのがよいのでしょうか。
選ぶ際に重視したい視点は2つです。
1.「全体 VS 一部」なのか、「該当 VS 非該当」なのか、「集団1 VS 集団2」なのか
2.比較"元"側で分析したい要素がなるべく多く含まれているか
1については、以下のようなイメージです。
「全体 VS 一部」=サイト全体 VS コラムページA
「該当 VS 非該当」=コラムページA VS コラムページA以外
「集団1 VS 集団2」=コラムページA VS コラムページB
どれが適切であるかは、分析目的や出したい示唆により変わります。
例えば「サイトの中でコラムページAが占める資料請求数のインパクト」が見たいのであれば「サイト全体 VS コラムページA」で比較したほうがいいですし、「コラムページAの直帰率が高いのは、コラムページAだけ広告のランディングページ(以下、LP)に使った影響か、そうでないのか」を調べたいなら「コラムページA VS コラムページA以外」の直帰率を見るとわかりやすいです。
そして、「リスティング広告を出すにあたり、LPとしてコラムページAとBどちらを選んだほうが効果的か」を知りたい場合は「コラムページA VS コラムページB」で比較したほうがいいことが多いでしょう。
2は言い換えると比較"元"とどれだけ似ているか?とも言えます。
「リスティング広告を出すにあたり、LPとしてコラムページAとBどちらを選んだほうが効果的か」という目的で分析を行う場合、
・【CVにつながる要素】コラムページAは資料請求につながるリンクがファーストビューに大きなボタンで表示されているが、コラムページBではテキストリンクしかない
・【ページ流入につながる要素】コラムページAはサイトトップから直リンクで流入できるが、コラムページBは直リンクがない
・【ページ来訪者に関する要素】コラムページAは長年広告を出しているが、コラムページBは出していない
など、比較"元"のコラムページAと比較相手コラムページBに要素違いが見られるのであれば、ほかの比較相手としてコラムページCを選ぶなどの差し替えを検討したほうがよいといえます。
3. プチテクニック③「誰が対象になっているかしっかり見ておく」
例:「コラムページA経由のメルマガ登録数が、サイト全体のメルマガ登録数の7割を占めました。
なので、コラムページAをLPにして広告を出そうと思います」
こちらも一見するとイイ話だと思われますが、以下の背景があるとしたらどうでしょうか。
・当社サイトはビジネスユーザー向けの商材の紹介をメインに行っており、
コラムページAはメルマガに登録してもらい、ビジネス商材への興味関心の醸成に繋げるために作った
・コラムページAのメルマガ登録者の9割が10代だった
ビジネス商材となると、10代はターゲットになりません。
なんらかの理由でコラムページA内のコンテンツが10代に刺さり、メルマガ登録に繋がったとしても、この登録者のデータは自社にとって財産にはならないのではないでしょうか。
上記は「年齢」についてでしたが、これに限らず、データを見る際にはその数字を構成しているひと(事象)にはどんな特徴があるのか、最低限のポイントはおさえておくべきでしょう。
代表的なものでいえば年齢や性別、地域はGoogle Analytics等で得られる情報から一定確保できます。さらに、会員登録情報などがあれば職業や商品の購入履歴なども参考になります。
データを見たい目的に沿って、おさえておきたいポイントを事前にチームメンバーで話し合って決めておくこと、そのポイントが情報として取得できるかを確認したうえでデータ分析を行うことがおすすめです。
4. プチテクニック④「いつ取ったデータなのかをしっかり見ておく」
例:「以前会員向けに行ったアンケートで「ノベルティで欲しいもの」ランキングを取ったら1位がペンケースだったので、今回のメルマガ会員登録キャンペーンもノベルティはペンケースにしようと思います」
分析に使用するデータにも、"旬"というものがあります。
過去のデータを利用する際にはそのデータが「いつ」取得されたものなのか?そして、その取得された時期が、分析するデータを読み解くうえで及ぼす影響はないか?という視点を持つようにしましょう。
例えば上記の例の場合、この「会員向けのアンケート」が2019年以前にとられたものだとした場合、「1位がペンケース」という結果はそのまま使用しないほうがよいかもしれません。
なぜなら、2020年に新型コロナウイルスが流行して以降、リモートワークが急激に普及し、ペーパーレス化、脱はんこ化などが推進された影響で、2019年以前よりもペンを使用する機会が減ったビジネスパーソンが多いことが容易に推察されるからです。
他にも、デジタル技術の発達による影響(例:スマホやアプリの普及など)や若年層のトレンドなど、過去のデータを読み解く際には「データ取得当時の状況」を踏まえたうえでの考察を行うことをおススメします。
5. プチテクニック⑤「自分の"肌感覚"と比べてみる」
例:「当社サイトのトップページをリニューアルしたところ、PV数が前年同月比5万%を達成しました」
・・・と言われて、そんなわけないだろう!!とツッコめる感覚が自然に持てるようになる、というのがプチテクニック⑤です。
上記の例で言えば、自社サイトの来訪者が増える要素はコンテンツの中身やプロモーション内容などであり、トップページのリニューアルを行っただけでは、劇的な来訪者数増加にはつながらないだろう・・・という自分の"肌感覚"があるからこそ、「5万%」という数字にツッコミを入れることができます。
この"肌感覚"センサーは意外と大事で、様々なデータを取り扱っていく上で、自分や関係者がデータの集計を間違えたり、(スコア自体は正しくとも)解釈の仕方や拾うべき意味を勘違いしたりすることはよくあります。
また、仮に本当に「PV数が5万%増えていた」場合、自社サイトがどこかで炎上しているのでは?!もしくは、インフルエンサー等にとりあげられてものすごくバズっているのでは?!など、普段起こりえない何かが起きていることに、気づくきっかけにもなるでしょう。
分析の結果、出てきたスコアを見た際に自分の"肌感覚"と照らし合わせてみることは、分析の精度を高めたり、思わぬ発見をしたりするためにも、習慣化することをおススメします。
6. プチテクニック⑥「スコア差に注意する」
例:「当社サイトの会社概要ページをリニューアルしたところ、セッション数が前年同月比110%を達成しました」
これもまたイイ話、と思われますが、以下の背景があるとしたらどうでしょうか。
・会社概要ページの前年同月セッション数は「10」
・今月の会社概要ページのセッション数は「11」だったので、11÷10=110%となった
「110%」という数字で見るとスコアアップしたイイ結果だと見えますが、ユーザー数としては「10→11」・・・つまり、ユーザー1人分の違いしかなかったということです。これは「偶然だ」と考えたほうが自然と言えます。
このように、分析した結果のスコアの差は、本当に意味があるものかどうか、留意する必要があります。
特に留意が必要なのは、データを構成するサンプル数(n数)が少ない場合です。
上記の例では、「10%」のスコアアップの要因となったのは「1人」のユーザーでした。
これが仮にサンプル数が「30」だった場合、1人のユーザーの行動変化により「約3.3%」のスコアアップが発生します。(※100÷30=3.333・・・)
サンプル数が「100」であれば「1%」、サンプル数が1000であれば「0.1%」、・・・と、サンプル数が多ければ多いほど、1人のユーザーの行動変化による影響は小さくなります。
ビデオリサーチでは、データ分析を行う際は、スコアのブレが大きくならないよう、最低30サンプル以上、できれば100サンプル以上での分析を推奨することが多いです。
そして、特に少ないサンプル数で分析結果を読み解く際は、一定以上のスコア差があることを確かめる(有意差検定と呼ばれる、統計的に本当にそのスコアの差には意味があるかどうかの確認をとること)をおススメしています。
有意差検定はエクセル上でも行えます。また、専門知識がなくても利用可能な無料ツールなども提供されています。気になった方は、ウェブ検索で「有意差検定ツール」を検索してみるとよいでしょう。
7. プチテクニック⑦「データから得たい情報を仮説出ししてから分析する」
最後のプチテクニックは、「0(ゼロ)番」になります。
データ分析を行うにあたり、最も重要なのは「なぜその分析をするのか、目的を見失わない」ことです。
分析可能なデータがたくさんあると目移りしてしまい、本来やるべきことが飛んでしまったり、議論があらぬ方向に向かってしまったりすることが非常に多いです。
そのような事態を避けるために、そもそもなぜこの分析をするのか?
そして、分析によりどんな目的を達成し、何に活かすのか?ということを、関係者全員と意識合わせすることが肝要です。
この意識合わせに有効なのが、「仮説出し」という作業になります。
例えば、「当社サイトのPV数が最近増えている」という事実があったとします。
この事実に向き合う際、見るべきページや指標は無数に考えられますが
「当社サイトのPV数が増えている要因は、先輩社員のPさんが先週から広告を打っているからだと思うので、それを検証してみたいと思います」
上記のような仮説を立て、PV数増加の要因分析を行うことで、分析対象のページはおのずと広告のLPに使用しているページとなり、見るべき指標は流入関連(参照元やメディアなど)に絞ることができるわけです。
そして、仮説が正しかったかどうかをデータから判断することで、次に何をすべきなのかが見えやすくなります。
上記の例では、Pさんが打った広告が本当に効果的だった場合、その広告の予算を増やしたり、広告のラインナップを増やすなど「次の打ち手」をすぐに導き出すことができます。
これまで紹介した①~⑥のテクニックが身に付いたとしても、この⓪番ができていなければ、有益な「次の打ち手」を見出すことは難しいです。
「仮説出し」を自分でやらないまま上司からの依頼でデータ分析をすることになったり、分析自体は委託先等が行ったりするケースもあります。そのような時でも、データを見る際には「どういう仮説の下でこのデータ分析を行った(行おうとしている)のか」、関係者と意識合わせをしておくようにしましょう。
おわりに
いかがでしたか?
本記事が、皆さんが「データ分析」を少しでも身近に感じたり、行った分析に自信が持てたりするきっかけになったら幸いです。
そうはいっても、やっぱりプロにデータ分析してもらいたい・・・
忙しすぎて自分たちでは満足にデータ分析できない・・・ という方にはビデオリサーチに在籍する「データ分析のプロ」によるサポートサービス「データ活用コンサルティング」を提供しております。
テレビCM等メディアデータ以外のマーケティング活動の様々な分析も承っておりますので、ご興味お持ちいただいた方はお気軽に以下よりお問い合わせください。
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