時間帯別のラジオ聴取 2000年6月度 首都圏ラジオ調査より
※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
1990年4月にスタートした首都圏ラジオ調査も10年間というひとつの節目を超え、この4月より11年目に突入いたしました。
この間、当社では聴取率分析システムとして1994年にRating Vision-Radioを開発し、聴取率だけでなくリーチや聴取分数についても簡単に集計ができるようにいたしました。
更に1998年にはプロフィールデータと聴取データとかけ合せて集計を行うシステムとしてRating Vision-Radio Pro.を開発し、これによって番組リスナーのプロフィールや商品ユーザーのラジオ聴取状況についても求められるようになりました。
そこから得られたデータをもとに日韓12月には『Radio Listener's Figure in Tokyo』を発刊いたしました。そのPar 1には「首都圏ラジオ聴取の実態」と題して各種データを掲載いたしましたが、今回は「時間帯別のラジオ聴取」について更に深く掘り下げてみました。
〔使用データ:2000年6月度首都圏ラジオ調査(男女12才〜59才2417サンプル〕
Ⅰ.全局聴取率7.9%,リーチは76.9%
ここに「7.9%」という数字があります。首郎圏ラジオ調査2000年6月度における全局聴取率(男女12〜59才週平均6時〜0時)なのですが、これを見て「ラジオは100人中8人が聞いているメディアだ」と言ってしまってよいのでしようか?
6時〜0時では1週間に76.9%の人(男女12〜59才)がラジオに接触しています。聴取率だけを見て「どれだけ聞かれているか」を判断しようとすると前述のような誤解が生じますも視聴率同様、聴取率は「どれだけの人が聞いているのか」と「どのくらいの時間聞いているのか」で決まります。そしてまたそれらは曜日によっても時間帯によっても異なります。
Ⅱ.多くの人に聞かれる時間最長時間聞かれる時間帯
まず下の表のように6時〜0時を18の時間帯に分割しました。ラジオの編成を考慮すると多少違和感がある区切り方かもしれませんが、各時間帯の時間を揃えるために便宜上3時間区切りとしました。
次に各時間帯の「リーチ(どれだけの人が聞いているのか)」と「接触者の平均聴取分数(どのくらいの時間聞いているのか)」を求めました。
それをまとめたものが図1です。
※「平日」は月曜日〜金曜日の平均値
ここから各曜日・時間帯の「ラジオの聞かれ方」を見ていきましょう。
【A】最も多くの人が聞いている平日6時〜9時
ポツンと離れたところに浮かぶ【A】をご覧ください。平日6時〜9時は、リーチ30.3%となっており、最も多くの人が聞いている時間帯と言えます。他時間帯のリーチは20%前後のところに集中しており、この時間帯がいかに多くの人に聞かれているかがわかります。
一方、聴取分数は60分となっており、どちらかと言えば少ない方です。
また、図2でわかるようにこの時間帯は最も聴取日数が多く、「聴取の習慣性が最も高い」時間帯でもあります。
この時間帯は「出かける前のちょっとした時間にラジオを聞く」、あるいは「通勤・通学時に車や電車の中でラジオを聞く」といった聴取シーンが想定されます。
そのため、「ラジオを聞くことが習慣となっており、聞いている人も多いが、聴取時間はそれほど長くはならない」時間帯となっていると言えるでしょう。
【B】聴取時間が長い平日9時〜18時
次にグラフの上方にある集団【B】をご覧ください。聴取分数が90分前後ですから、3時間枠(180分)の半分を聞いていることになります。
平日9時〜18時は、家の中では「主婦が家事をしながら」、家の外では「職場で仕事をしながら」、「営業車等の中で」ラジオが聞かれる時間帯です。「ラジオがかかっている職場」というのをイメージできない方もずいぶんといらっしゃるようですが、規模の小さい職場ほどラジオが聞かれていることは聴取状況調査と同時に実施しておりますプロフィール調査によって明らかになっております(ここでは割愛させていただきますが、詳細は『Radio Listener's Figure in Tokyo』をご覧ください)。
図3の聴取場所別聴取率と合わせて見ると、この時間帯は自宅外聴取が多いことがよくわかります。「職場」(「車内以外」≒「職象」と考えてよいと思われます)では昼休みに当たる12時台を除くと大きな変動がありません。職場で一番の働き者は「ラジオ」ではないのかと思えてくるほどです。
さて、最も長い時間聞かれている時間帯は平日9時〜12時なのですが、それを支えているのは主婦の聴取と言えます。
図3に見られるよう、午後になって減るのは「自宅内」の聴取です。当社のMCR調査では「家事・育児」行動率は午前中が高いという結果が出ており、午後になると「家事をしながらの聴取」が減ると考えられます。
【C】土日9時〜18時のリーチは平日と変わらない
では【B】からちょっと視線を下げて【C】をご覧ください。
聴取率だけを見ていると土日は平日より「ラジオを聞いている人が少ない」と思いこんでしまうことがあるかもしれません。しかし、これは冒頭述べたように「誤解」です。土日の9時〜18時は20%前後のリーチがあり、平日の同時間帯と変わりません。
図1のグラフを縦に見ていくと上から順に印恵取時間の長い順に)平日、土曜日、日曜日と並んでいることがわかります。従って9時〜18時における各曜日の聴取率の差は「どれだけの人が聞いているのか」ではなく、「どのくらいの時間聞いているのか」によるものです。「自宅内」の聴取は平日よりも多いものの、土曜日・日曜日は聴取時間量が稼げる「職場」での聴取が少ないためです。
【D】リーチ,聴取分数とも若干下がる18時以降
テレビがゴールデンタイムに突入する18時以降はリーチ、聴取分数とも若干下がります。
(図1左下の【D】参照)
しかし、もう少し右側にある平日18時〜21時ではリーチも日中に近く20%を若干割る程度です。18時以降でも平日は職場(残業しながらという人もいるでしょう)で、あるいは帰宅時に車や電車の中で聞かれているからと考えられます。
【E】6時〜9時の聴取分数は60分前後
最後に各曜日の6時〜9時を囲んだ【E】をご覧ください。土曜日・日曜日は起床時間が遅いこと、休日ということで「お出かけ前聴取」や「通勤・通学時の聴取」の人が少ないということもあってリーチは平日に比べると少ないのですが、聴取時間は各曜日とも60分前後となっています。
従って曜日間の聴取率差はリーチによるところが大きいと言えます。
時間帯ごとにラジオの聞かれ方が違うということがよくわかったと思います。「聴取シーン」と合わせて考えれば「生活の中のラジオ」というものが見えてくるのではないでしょうか。
なお、ここで取り上げたデータは首都圏ラジオ調査のものですが、Rating Vision-Radioをご利用いただけば他の地区でも同様の分析を行うことが可能です。一度試されてみてはいかがでしょうか。
Ⅲ.聴取パターンを考える
さて、時間帯別にラジオ聴取を考えていくと更に知りたいことが出てきました。
ラジオ聴取のパターンつてどんなものなのだろう?
テレビの視聴パターンと言えば「逆L型」などがありますが、ラジオの聴取パターンはどうなのでしょうか?残念ながらそれは「今後の課題」ということになってしまうのですが、参考までに次のデータを掲げておきます。
Ⅱ【A】でご覧いただいたように「平日6時〜9時」のリーチは30%あります。ところが、【B】で9時以降は20%前後のリーチであることを確認しました。この10%の差は何なのでしょうか。平日の朝しかラジオを聞かない人たちが多いということなのでしょうか?
図5に「平日6時〜9時接触者」の他時間帯の接触状況をまとめました。
4人中3人は平日9時〜18時にもラジオを聞いています(<a>)。
逆に<b>〜<d>は、平日9時〜18時にはラジオを聞いていない人たちです。そのうちの半数を占める<b>は平日の18時以降であればラジオを聞いている人たちで、平日6時〜9時接触者全体の13%に相当します。
更に土日の接触者を除くと、<d>の「平日6時〜9時のみラジオを聞いている」人は接触者全体の4%に過ぎません。
この時間帯の接触者は習慣性が高いことを考えると「ラジオを聞く習慣は身についている」けれども、平日の日中は「職場がラジオを聞ける環境ではない」とか、「授業中」という理由でラジオを聞くことができない人が少なくないとは考えられないでしょうか。
「聴取パターン」について考えようとするといくつかの仮説が浮かんできます。仕事をしながら
ラジオを聞いている人はそれこそ「朝から晩まで」聞いているでしょうし、逆にラジオは休日に買い物やドライブに出かけたときくらいにしか聞かないという人もいるでしょう。
また、年代やラジオ局によってもパターンは異なるでしょうから、すぐに結論が出せるものではありません。今後の研究テーマとし、何らかの場でご報告したいと考えております。
◆これからの首都圏ラジオ調査
自宅外聴取の割合は増加しており、自宅外でのラジオ聴取を極力リアルタイムに近い形で記入できる仕組みが今まで以上に必要となってきました。そこで、当社では昨年12月に実施したラジオセミナーでご報告させていただきました「携帯型調査票」の導入を提案しております。
更に調査対象年令の拡大(12才〜69才へ)、新しいスタイルの報告書の検討など首都圏ラジオ調査そのものの改善にも取り組んでおります。
首都圏ラジオ調査 調査概要
調査方法 調査対象者をパネル化、その対象者に調査票を一括して郵送配布、郵送回収する郵送留置調査(日記式)。
調査エリア 東京駅を中心とする半径35km圏
調査対象 12才〜59才の男女個人
標本数 1系列系列1,298人×2系列計2,596人
標本抽出 無作為2段抽出法
メディアマーケティング局 ラジオマーケティング部 原田清実
E-Mail v007212videor.co.jp