テレビCMの残存効果を活かした、最適な出稿プランの考え方のご紹介
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅テレビCMの認知獲得について悩みを抱えている方
✅特定のテレビCMがどのくらい認知を獲得できるかを事前にシミュレーションしたい方
✅CMのクリエイティブ評価を基に出稿配分を検討したい方
✅テレビCMの残存効果(アドストック)を活かした出稿プランを検討したい方
1.はじめに
「限られたGRPでできるだけ多くCM認知率を獲得するにはどう出稿すれば良いのだろう?」
「このCMで認知率●●%を獲得するにはどのような配分で出稿するのが最適か?」
のように、テレビCMによる認知獲得に課題を抱えている方も多くいらっしゃると思います。
ビデオリサーチでは、長年にわたりテレビCMの残存効果(アドストック・Ad Stock)予測モデルの作成に取り組んでまいりました。残存効果(アドストック)とは、テレビCMを出稿した後の持続的な効果のことをGRPという単位で示したものです。
実際の「テレビ広告統計」で取得しているCM投下量「GRP」と、動画のクリエイティブ評価を行う調査パッケージ「クリエイティブカルテ」で取得している「CM認知率」を組み合わせてモデル作成を行っています。モデルのもととなっているのは約2,000素材で、各素材のCM投下量とCM認知率だけではなくCMのクリエイティブ評価を加味したものであることも当社のモデルの特徴です。
このモデルで、当社で蓄積したデータから求めたノーム値(基準値)や、「クリエイティブカルテ」で調査をかけたCM素材を使えば、お客様の自社CMの残存効果も簡単にシミュレーションが可能です。
今回はCM認知率予測モデルを使って、クリエイティブ評価を基に残存効果シミュレーションを行い、CMの認知率獲得について考えていきたいと思います。
2.残存GRPを用いたCM認知率予測モデル(忘却モデル)について
今回ご紹介する「残存GRPを用いたCM認知率予測モデル(忘却モデル)」は、時間経過とともに「忘却」によって低下していくGRPの実効値「残存GRP」を算出し、それをCM認知率予測モデルに組み入れたものになっています。
こちらのモデルでは、ある量のCMを投下すると、その効果は当該週に最大に発揮され時間が経つと徐々に効果は弱まる、つまり、ある週のCM投下量が100GRPの時、
1)その100GRPは当該週には広告効果を発揮する
2)その100GRPのうち何%かは翌週へ効果を繰り越す
という広告の残存効果をモデルに取り込んでいます。広告の残存効果を表現できるとともに、いつからいつまでのCM投下量を対応させたらいいのかという分析者の恣意性にかかる部分を排除しています。また、ある1時点だけの予測ではなく、一定期間にわたる推移シミュレーションを行うことができます。
モデルの概要としては、「べき乗回帰曲線によるノーム値」を「クリエイティブ要因などを用いた重回帰モデル」で補正するという「CM認知率ノーム補正型モデル」で、CM投下量に繰り越し係数λから求められる残存GRPを用います。算出式の考え方としては以下の通りです。
予測CM認知率=関係式によるノーム値(CM投下量とCM認知率の関係から)+残差(CM認知率残差重回帰モデル)
3.【事例紹介】1つのCMが出稿配分によってCM認知率に差が出る結果に
ここからは「残存GRPを用いたCM認知率予測モデル(忘却モデル)」を用いて、当社の「クリエイティブカルテ」で調査をおこなったCM素材を使って、残存効果としてCM認知率の推移をシミュレーションしていきます。
今回は「個人500GRPをどのように配分すれば良いか」について、いくつかシミュレーションを行いたいと思います。尚、CM認知率のデータは、クリエイティブカルテの調査結果のスコアを用いてシミュレーションした結果です。実際の調査結果ではないことを予めご理解ください。
今回取り上げるCM素材は松たか子さん出演の【日産サクラ「電気自動車になった軽」篇 30秒】です。こちらのモデルでは、24週目(≒半年)まで確認することが可能となっています。それでは幾つかのパターンを見ていきましょう。
今回は以下の3パターンで比較を行います。
パターン①:5週連続で100GRPずつ出稿。
パターン②:2週に1回のペースで100GRPずつ出稿。
パターン③:4週(1ヶ月)に1回のペースで100GRPずつ出稿。
尚、図1では、パターン①~③でシミュレーションを行った結果の週別CM認知率を表し、図2ではパターン①~③の週別残存GRPを表しています。また、これ以降の全グラフにおいて、出稿を行った週についてマーカー(●■▲)を付けて表現しています。
※今回は、ターゲットを「男女15~69歳」、業種を「自動車」、出稿パターンを「全日型」としてシミュレーションしています。
【図1】週別出稿状況でみたCM認知率の推移業種:自動車 出稿パターン:全日型
ターゲット: 男女15~69歳(中学生は除く)
【図2】週別出稿状況でみた残存GRPの推移業種:自動車 出稿パターン:全日型
ターゲット: 男女15~69歳(中学生は除く)
パターン①は、毎週出稿を行うことで、3パターンの中で最大のCM認知率(5週目時点の26.2%)を獲得することができています(図1)。CM認知率は緩やかに下降し、13週以降は3パターンの中で最も認知率が低くなりますが、最大CM認知率が高い分、初出稿から6か月が経った時でもパターン②とはさほど差が開いていないことが確認できます。
パターン②は、9週目に認知率のピークがきており、24週目には5%ほど認知率が落ちている状況です。四半期に1回のペースなど定期的な出稿が決まっている場合、認知率の高いヤマを作りつつ次のキャンペーンに認知率を繋げていく場合に効果的な配分かもしれません。
パターン③は、徐々にCM認知率を獲得し、CM認知率のピークは17週目となっています。また、24週目の時点では他2パターンより高いCM認知率を獲得しています。企業認知など長く安定的に認知率を獲得したい場合はこちらのパターンが効果的かもしれません。
今回いくつかのパターンを取り上げましたが、これらはあくまで一例です。出稿配分を少し変えるだけで、異なった結果が見えてきます。目的を達成するためにはどの出稿配分が最適か?について、素材ベースで確認することが可能です。
4.【事例紹介】タレント起用がない場合でも配分次第でCM認知率は高めることが出来る?
ここまではタレント起用のあるCMを取り上げてきましたが、タレントなしのCMではどのような認知率の推移となるのでしょうか。
当社発行の「クリエイティブカルテスペシャルレポート」でご紹介しているCM投下量(個人GRP)に対する標準的なCM認知率を確認いたしますと、以下のようになっています。
【図3】CM投下量(個人GRP)とCM認知率の関係データソース:クリエイティブカルテスペシャルレポート2022
ターゲット: 男女15~69歳(中学生は除く)
*人気度A:テレビタレントイメージで人気度(「非常に好き」+「やや好き」)が30%以上
こちらのグラフだけを見ると、「日本人 人気度A」起用CMを100GRP出稿した時のCM認知率29%を獲得するなら、「タレント・キャラクターなし」CMではもっと多くのGRPで出稿しなければならないということになります。
上記を踏まえた上でシミュレーションを行い、タレント起用ありと同じくらいのCM認知率を獲得する出稿配分を考えていきます。ここでは「タレント起用あり」の場合と「タレント起用なし」の場合で、個人1000GRPの残存効果をシミュレーションしたいと思います。タレント起用ありのCMとしては先ほどの日産の素材を、タレント起用なしのCMとして取り上げる素材は競合他社のCM(以降はA社とします)です。尚、CM認知率のデータは、クリエイティブカルテの調査結果のスコアを用いてシミュレーションした結果です。実際の調査結果ではないことを予めご理解ください。
まずは以下のグラフをご覧ください。2素材とも出稿配分の条件は4週(1ヶ月)に1回のペースで5か月間200GRPずつ出稿した場合で揃えています。その結果、タレントあり・日産のCM認知率の最小値(19.7%)>タレントなし・A社のCM認知率の最大値(19.2%)となっています。
【図4】週別出稿状況でみた残存GRPとCM認知率の推移業種:自動車 出稿パターン:全日型
ターゲット: 男女15~69歳(中学生は除く)
同じ出稿配分では満足のいくCM認知率が獲得できないという状況の場合、どのような対策を取ればよいでしょうか。「自社CMにあった出稿配分を見つける」ことが策の1つになるのではないかと考えます。
タレントなし・A社の出稿を5週連続で200GRPずつの出稿に変えるとCM認知率はどうなるでしょうか。
【図5】週別出稿状況でみたCM認知率の推移業種:自動車 出稿パターン:全日型
ターゲット: 男女15~69歳(中学生は除く)
【図6】週別出稿状況でみた残存GRPの推移業種:自動車 出稿パターン:全日型
ターゲット:個人全体(15~69歳) (中学生は除く)
タレントなし・A社の出稿配分を5週連続で200GRPずつ出稿に変更すると、CM認知率の最大値は21.3%となります。このように出稿の仕方を変えることで、【図4】に比べて【図5】ではCM認知率の最大値を2.1ポイント伸ばすことが可能となります。また、4週目に注目してみると、タレントあり・日産のCM認知率とタレントなし・A社のCM認知率が同程度になっていることが分かります。このように素材ベースでシミュレーションを行うことで、最適な出稿配分について検討を行うことができるのです。
5.最後に
今回ご紹介した内容はあくまで一例です。
冒頭にも述べましたが、「自社CMに合った出稿配分を見つけたい」「出稿前にCM認知率を予測したい」のような課題感をお持ちの方は多くいらっしゃると思います。
「目標は認知率●●%」などを達成するためには、
・自社CMに合った出稿配分を見つけること
・競合CMの現状を知ること
・自社のCMのクリエイティブの強み・弱みを捉えること
が必要だと考えます。
テレビCMは商品やサービスを認知させ、それらの購入や利用を促進するために制作・出稿するものです。「CMを認知させる」ことは最終GOALではなく、CMそのものから商品・サービスの特徴や世界観をいかに理解してもらうかが大切です。自社のCMクリエイティブの評価を捉え、それを基に出稿計画を練っていくことが求められます。
今回、残存GRPを用いたCM認知率予測モデル(忘却モデル)でCM残存効果のシミュレーションを行いましたが、モデルの詳細についてご興味お持ちいただいた方は以下より案内詳細資料をダウンロードいただくか、お問い合わせ下さい。
また、【図3】のグラフの抜粋元である「クリエイティブカルテ スペシャルレポート2022」では、CM投下量(個人GRP)⇔CM認知率の関係性についても性別・年代・タレントタイプ(日本の有名人起用、動物起用、子ども起用‥等)で確認することが可能です。さらに、CM素材のクリエイティブに関しては、クリエイティブカルテにて強み・弱みを把握することが可能です。こちらもご興味があれば是非以下より詳細をご覧ください。
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【本記事で紹介したモデル】
・モデル名:残存GRPを用いたCM認知率予測モデル(忘却モデル)
・業種:自動車
・ターゲット:個人全体(15~69歳)
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