「AVOD、SVODとは?」今さら聞けない!基本の『キ』~動画配信サービスの種類と違いを3分で学ぶ~

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広告・マーケティング
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「AVOD、SVODとは?」今さら聞けない!基本の『キ』~動画配信サービスの種類と違いを3分で学ぶ~
この記事はこんな方にオススメ!
  • 動画マーケティング実践のため、VODの基礎知識をインプットしたい方
  • 動画配信形態別のユーザープロフィールや年齢層が知りたい方
  • 動画マーケティングを実施・検討中の方

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日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。
皆さんも、毎日のように各社から発信されるニュースで最新情報をキャッチアップしたり、実務上デジタルマーケティングに関わることも多いかと思います。
このコーナーでは、皆さんがニュースや業務で触れるデジタルマーケティングに関する多くのサービスで頻繁に目にする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ない「単語」や「仕組み」について、初心者にもわかりやすく説明していきます。

今回のテーマは、「AVOD」「SVOD」です。
動画配信サービスが普及する昨今、耳にする機会が増えたワードです。具体的にどのようなサービスを指していて、どのような違いがあるのでしょうか。
動画マーケティングを行ううえでの必携知識として、動画配信サービスの種類と属性について学んでいきましょう。

本記事でご紹介しているレポート【動画プラットフォームユーザープロフィールレポート】

1. そもそも、VODとは?

AVOD、SVODの前に、その上位概念である「VOD」について確認します。
VODとは、「Video On Demand(ビデオ・オン・デマンド)」の略称で、インターネットを利用した動画配信サービスのことです。
スマートフォンやタブレットがあれば、好きな時間に好きな場所で動画を視聴することができます。最近では、インターネットに繋がったテレビ(CTV=コネクテッドTV)で動画を見る人も増えています。
YouTubeやTVer、ABEMAなど無料で視聴が可能なものから、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、Hulu、DAZNなど会費制のものまで、すべての動画配信サービスの総称が「VOD」です。

2. VOD(動画配信サービス)には主に3つのタイプがある(AVOD、SVOD、PPV)

VOD(動画配信サービス)

VOD(動画配信サービス)は上記のように主に3種類に分けられます。
・「AVOD」...広告を流すことで無料視聴できる動画配信サービス
・「SVOD」...定額で視聴できる動画配信サービス
・「PPV」...作品毎に課金し視聴する動画配信サービス(以下の2つが代表的な形態です)
  └「EST」...PPVの一種で、対象作品を買うことで視聴できる動画配信サービス
  └「TVOD」...PPVの一種で、対象作品をレンタルすることで視聴できる動画配信サービス

それぞれの形態について詳しく説明します。

3.「AVOD」とは?

AVODとは、「Advertising Video On Demand(アドバタイジング・ビデオ・オン・デマンド)」の略称で、「広告掲載型の動画配信サービス」のことを指します。広告を流すことで、無料で視聴することができる動画配信サービスのことで、動画中に流れる広告の掲載費によって運営されているため、利用者は無料で動画を観ることが可能です。この形態を主として提供されているサービスとしては「YouTube」や「TVer」、「ABEMA」などがあります。
※YouTubeやABEMAなどAVODサービスの一部においては、広告掲載の無い有料プランもあります。(2023年3月現在)

4.「SVOD」とは?

SVODとは、「Subscription Video On Demand(サブスクリプション・ビデオ・オン・デマンド)」の略称で、「定額制の動画配信サービス」のことです。利用者が定額の料金を支払うことで、動画を好きなだけ視聴することができます。この形態を主として提供されているサービスとしては「Netflix」や「Hulu」、「DAZN」などがあります。
※NetflixなどSVODサービスの一部においては、広告掲載のあるプランもあります。(2023年3月現在)

5.「PPV」とは?

PPVとは「Pay-Per-View (ペイ・パー・ビュー)」の略称で、「都度課金型の動画サービス」のことをいい、EST(購入型)とTVOD(レンタル型)が代表的な形態です。

5-1. 「EST」とは?

ESTとは「Electric Sell-Through(エレクトリック・セル・スルー)」の略称で、「購入型の動画サービス」のことをいいます。作品毎に料金を支払い、データを購入することで永続的に視聴することができるサービスで、購入したデータを自分のストレージ等に保存し自らで所有するという形態のものと、自分のストレージ上には保存せずに、購入先のサービスの中で無期限視聴することができるという形態の2つが存在します。「U-NEXT」「Amazonプライム・ビデオ」「dTV」などの購入作品などがこれにあたり、SVOD(定額制動画配信サービス)の中で、新作などの一部作品においてEST形態であるというケースが多いです。

5-2. 「TVOD」とは?

TVODとは「Transactional Video On Demand (トランザクショナル・ビデオ・オン・デマンド)」の略称で、「レンタル型の動画配信サービス」のことを言います。作品毎に料金を支払い、レンタルすることで一定期間視聴することができる動画配信サービスのことです。EST(都度購入の動画サービス)との違いは、視聴できる期間に制限があるという部分です。
比較的安価な価格設定になっていますが、その代わり定められた期間を過ぎると視聴することはできません。「U-NEXT」「Amazonプライム・ビデオ」「dTV」などのレンタル作品などがこれにあたり、SVOD(定額制の動画サービス)の中で、新作などの一部作品においてこの形態がとられており、EST(購入型の動画配信サービス)かTVOD(レンタル型の動画配信サービス)か選べるようになっているケースが多いです。

6.「AVOD」「SVOD」の利用率の推移は?

AVOD、SVODの定義がわかったところで、その普及状況を、当社の大規模生活者マーケティングデータ「ACR/ex」を使って見ていきましょう。
*以降のAVOD、SVODのデータは、ACR/exで調査しているサービスを対象とし、それぞれの形態を主として提供されているサービスを振り分けて定義しています。(AVOD=YouTube、GYAO!、TVer、ABEMA/SVOD=Netflix、amazonプライム・ビデオ、Disney+、Hulu)

「AVOD」「SVOD」の利用率の推移(最近1か月の利用有無)データソース:ビデオリサーチ「ACR/ex」
集計対象:東京50km圏 12~69歳男女
調査対象回:2019年~2022年(各年4-6月調査)

「AVOD」の利用率は2018年には67.5%でしたが、コロナ禍が始まった2020年に一気に増え、2022年にさらに増加しています。「SVOD」は2018年には13.2%でしたが、コロナ禍で在宅時間が増えた影響で2020年にAVODと同様に大幅に増加し、2022年には44%まで成長を遂げています。

7.AVOD、SVODを幅広く利用しているユーザーの特徴は?

2022年の4-6月時点では、「SVOD」の利用率は4割、「AVOD」の利用率は8割を超えています。
多くの人が利用しているVODですが、より幅広く活用している人にはどのような人なのでしょうか。
今回は、「AVOD」と「SVOD」どちらも利用しているユーザー(*)の特徴を、「ACR/ex」データで見ていきたいと思います。
*AVOD/SVODどちらも利用者=AVODはYouTube、GYAO!、TVer、ABEMAのいずれか、SVODはNetflix、amazonプライム・ビデオ、Disney+、Huluのいずれかを、調査直近1ヶ月にそれぞれ1つ以上利用した人。

① 性年齢の特徴は?

利用者の性年齢比較データソース:ビデオリサーチ「ACR/ex」
集計対象:東京50km圏 12~69歳男女
調査対象回:2022年4-6月

「AVOD/SVODどちらも利用者」は男性40代が最も多く、次に男性30代。女性では20代が最も多いようです。平均年齢は39歳で、全体と比べると男性、女性ともに20~30代が多く、やや若い年代の利用者が多いことがわかります。

② 職業の特徴は?

利用者の職業データソース:ビデオリサーチ「ACR/ex」
集計対象:東京50km圏 12~69歳男女
調査対象回:2022年4-6月

職業構成においては、全体と比較して「給料事務・研究職」「経営・管理職」「専門職・自由業」「大学生・専門学生等」が多く、「中高生」「主婦・主夫」「無職・その他」が少なくなっています。「AVOD/SVODどちらも利用者」は有職者の割合が多いようです。

③ メディア利用時間の特徴は?

メディア利用時間(1日平均)データソース:ビデオリサーチ「MCR/ex」
集計対象:東京50km圏 12~69歳男女
調査対象回:2022年4-6月

メディア利用時間をみると、全体、「AVOD/SVODどちらも利用者」ともに一番長い利用時間は「テレビ視聴」であることがわかります。ただ「AVOD/SVODどちらも利用者」は、全体と比較して「テレビ視聴」の時間が短く、「インターネット(動画・メール・SNS除く)」「インターネット動画」「SNS(アプリ利用の無料通話除く)」が長いようです。特に休日の「インターネット動画」は1時間23分と全体と比べて23分長く、休日にAVODやSVODの配信動画を楽しんでいる様子がうかがえます。

8. 拡大の兆しが見える「リニア」配信形態

これまで説明してきたVODは、見たい番組を選び視聴するという形態ですが、わざわざ選択しなくても自分の好みに合った番組が次々に流れてくるという配信サービスも存在します。

1番組ずつ見たい番組を選択して最初から再生するのではなく、その時間に放送されている番組をリアルタイムで視聴し、番組が終了すると次の番組が流れ、連続して番組が放送されるテレビのような放送形態を「リニア(リニア放送)といいます。この形態を放送波ではなく、インターネット回線で配信しているのが、「FAST」や「vMVPD」と呼ばれる動画配信サービスです。

①「FAST」「vMVPD」とは?

FASTとは「Free Ad-supported Streaming TV(フリー・アド・サポーテッド・ストリーミング・テレビ)」の略称で、「無料(広告入り)のリニア配信動画サービス」のことです。広告が流れることで、視聴者は無料で視聴することができます。

一方、vMVPDとは「Virtual Multi-channel Video Programming Distributor(バーチャル・マルチチャネル・ビデオ・プログラミング・ディストリビュータ)」の略称で、「有料のリニア配信動画サービス」のことです。契約し料金を払うことで視聴することができる仕組みになっています。

② 米国で急激に拡大する「FAST」市場

昨今、米国(アメリカ)では「FAST」利用世帯率が急速に増加しています。ケーブルテレビやインターネットプロバイダ事業を手掛ける米国の企業が発表したレポートによると、2022年FAST利用世帯はコネクテッドTV(CTV)所有世帯の60%にのぼるそうです。

そもそも米国のテレビ事情は日本とは違い、無料で視聴できるテレビ番組は多くありません。そのためこれまでは多くの世帯がケーブルテレビや衛星放送など有料放送を契約していました。しかし、前述にあるようなVOD(動画配信サービス)の登場により、これまで加入していたケーブルテレビや衛星放送サービスを解約し、代わりにVODを選択する世帯が増え始めました。"ケーブル"の契約を"切る"ことから、この現象を「コードカッティング」と呼びます。

コードカッティングの影響もあり、VODの利用は一気に増加しました。新たなプラットフォームやサービスが次々と登場し、この10年ほどで市場も急速に拡大しています。しかし、近年は少し状況が変化しつつあります。その一つがSVODを代表する大手サービスにおける解約率の増加です。複数の動画サービスを掛け持ちして加入していることで金銭的負担を感じたり、サービスを持て余してしまう(十分に利用できていない)ことから、少しずつですが加入サービスの取捨選択が行われているようです。

そんな中、利用率を伸ばしているのが前述の「FAST」なのです。「FAST」は、無料であることに加えて、視聴者にとって動画を「選ぶ」手間が省けるという点も大きな魅力です。VODが無限にある番組の中から自分の趣味や嗜好に合う番組を探し出さなくてはならないのに対して、「FAST」の配信形態であるリニアはテレビのように自動的に次々と番組が流れてきます。また、チャンネルによって番組のジャンルやタイプを絞れるため、自分の好みに合わせて見たい番組の種類を選ぶこともできます。そのような手軽さも「FAST」が伸びている要因ではないでしょうか。

③ 日本における「FAST」拡大の可能性は?

米国での「FAST」普及の一因は、2021年には82%に達したコネクテッドTV(CTV)の高い保有率にもあります。
(参考:【USAメディアレポート】コネクテッドTVはテレビ業界をどう変えるのか 行き着く先は、「見たいコンテンツ」と 「使いやすさ」

日本でも近年コネクテッドTV(CTV)の普及が進んでおり、2022年の当社の調査ではテレビ端末の6割弱がインターネットに結線していることがわかっており、結線率は毎年右肩上がりに増えています。
(参考:「コネクテッドTV(CTV)とは?」今さら聞けない!基本の『キ』

また、コネクテッドTVをよく利用している層は、テレビ視聴に対する意識として「なんとなくテレビのスイッチを入れてしまう」 という人が全体での割合より多いという特徴もわかっています。
(参考:コネクテッドTV(CTV)利用者はどんな人?―サービス・デバイスを駆使して、視聴ニーズを満たすCTV Heavy利用者―

目的を持ってテレビをつけるのではなく、在宅時に"なんとなくテレビをつけて、そのとき流れてきた番組を見る"というコネクテッドTVでの視聴スタイルに、リニア配信は相性が良いのではないでしょうか。今後コネクテッドTVの普及に伴い「FAST」が日本でも浸透していくかもしれません。

おわりに

本記事では動画配信サービスの中でも最近よく聞く「AVOD」「SVOD」の定義と、そのユーザーの特徴を簡潔にまとめました。

・VODには、主に「AVOD」「SVOD」「PPV(EST・TVODなど)」の3種類がある。
・「AVOD」「SVOD」はコロナ禍を経て利用が増加しており、2022年は「AVOD」が85%、SVODが44%の利用率。
・VODを幅広く利用している「AVOD/SVODどちらも利用者」の特徴は、年齢は20~30代が多く、職業は有職者が多い。動画視聴時間は休日が長め。

日常生活に浸透してきているVODですが、AVODではテレビ放送との同時配信を行ったり、PPVではスポーツイベントや音楽イベントなどで独占ライブ配信を行ったり、SVODのプラットフォームでも広告掲載型(AVOD)のプランを開始したりと、日々変化しています。それらを活用するユーザーも日々変化していると考えられるため、昨今のメディア戦略において欠かせない要素の一つになりつつある動画プラットフォームの活用には、最新の動向把握とともに、利用状況やユーザー特性を継続的に把握することがより重要になるのではないでしょうか。

YouTubeやNetflixなど動画プラットフォームそれぞれのユーザーの属性も知りたい、という方には主要17動画プラットフォームのユーザープロフィールが分かる、ワンパッケージレポート「動画プラットフォームユーザープロフィールレポート」をご用意しております。
対応可能なプラットフォーム(媒体)について知りたい方や、本レポートにご興味をお持ちいただいた方は、以下よりサービス資料をダウンロードいただくか、お気軽にお問合せください。

【本記事で紹介したサービス】

・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex
・調査時期:2022年4~6月
・対象地区:東京50km圏

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