テレビコマーシャルカルテ(TV−CM KARTE)報告書内容紹介
※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
ここでは今まであまり馴染みのなかった方へ、TV−CMカルテの調査項目や内容について報告書に沿って御紹介していきたいと思います。
下図(図1)が、あるテレビCMについての調査結果報告書です。特定の性・年齢毎に集計した各指標の結果と、CMを6コマの写真(モノクロ)と文字に起こしたナレーションで表現したものから成っています。この写真とナレーション部分を調査票として呈示し、出稿されたテレビCMが視聴者にどの程度認知されまた評価されているかを探り、以下の大きな流れに沿って各指標データを報告書に記載しています。次ページでそれらを御紹介していきます。
①CM出稿および②CM到達
この部分はTV−CMカルテの調査結果ではなく、弊社『テレビ広告統計』をもとに調査対象素材の「放送期間」や「出稿量(本数・秒数)」「出稿パターン」「GRP(本数ベース・15秒ベース)」、「Reach」などを集計した結果です。ただし、集計期間は最大、調査開始日から13ヶ月遡った期間までとなっています。
③CM認知率
前述のように、CMの6コマ写真とナレーションを呈示しての再認知名率です。
④C内容評価
以下の指標で様々な角度からテレビCMのクリエイティブチェックができるようになっています。
・内容理解度:CMを認知した人のうち、内容まで理解できた人の割合を示します。
・CM好意度:どのくらいの人が好感をもったかを、調査対象者ベース・CM認知者ベースでみます。
・キャラクター適合度:出演したタレントやキャラクターがCMにふさわしかったかを示します。
・印象に残ったクリエイティブ要素:BGMや音楽、背景画面など具体的に印象に残った要素を確認できます。
・イメージ評価:CMのインパクトや親近性、面白さなどを19のイメージ語から捉えます。
⑤D商品興味
「商品興味関心度」はテレビCMを認知した人が、そのCMで扱っている商品やサービスに対して、興味や関心を抱いたかを示しています。
⑥E購入喚起
実際の商品購入やサービス利用を促すことは、テレビCMの目的のひとつです。視聴者にそのような欲求を喚起させることに、どのくらい貢献したかを「商品購入喚起度」で確認できます。
以上のような指標により、出稿された各テレビCM素材についての認知・評価を出稿の部分も含めてチェックすることができます。しかし、TV−CMカルテの最大の特徴は、今までに蓄積された数多くの調査素材(1982年の調査開始以来、約17,000素材)をもとに、ノーム式とよばれている「出稿量とCM認知率の関係式」を算出し、その標準値と比較できる点にあります。毎号の報告書には、関係式(現在はTV−CMKARTESpecialReport2000で発表したもの)と共に、その回で調査したCMの結果をプロットしていますので、随時、各テレビCM素材についての出稿量に対するCMの認知状況を標準値と比較できるようになっています。(図2参照)
またTV−CMカルテでは、報告書以外に定型フォーマットで調査結果を管理するのに便利な「管理シート」、分析ツールとしてのパソコンパッケージソフト(TV−CM KARTE for Windows)によるデータ提供もしています。更に、CM評価だけでなく企業名認知率やブランド名認知率・商品購入経験率等も調査していますので、CM評価と企業評価・ブランド評価との関係の把握等、多用な特別分析に対応可能です。是非、ご活用頂けたらと思います。
テレビコマーシャルカルテ分析事例TOPICS
〜こんな時に使えます!〜
ここまでは「テレビコマーシャルカルテの概略」をご覧頂きました。では、その調査結果は実際にどの様な形で活用できるのでしょうか。テレビコマーシャルカルテを用いて行うことができる「広告効果分析」の中から「実務面でよく利用される分析事例」を3つ、Q&A形式でご紹介したいと思います。
Q1. A社広告担当「我が社のCMは、B社やC社と比べるとあまり評価が良くないと聞く。どういった点が問題なのか?また、評価の良いCMとはどのようなものなのか?」
A.よく行われる分析は、「コレスポンデンス分析によるCMクリエイティブの考察」です。
コレスポンデンス分析を行うと、分析対象CMを評価タイプ別に分類することができます。そして当該CMの属する評価タイプを把握するとともに成功CMが集まる評価タイプと比較し、今後のクリエイティブの方向性を探ることができます。
このA社の場合ですと、現在の評価は「ビジュアル重視型」CMとなっていますが、成功CM群はB社が属する「タレント主導型」やC社が属する「説明・トーク型」CMとなっています(図3)。今後A社のCMは、そのどちらかの評価タイプに属するクリエイティブに変更していった方がいいのではないでしょうか。
Q2. D社広告会社マーケティング担当「CM出稿量と認知率の関係をCMタイプ別に作成し、CMクリエイティブの違いによる認知効率を研究したい。」
A.この時行われる分析は、「CMタイプ別 出稿量と認知率の関係(Norm式)の作成」です。このNorm式は、先にご説明したように「出稿量に対する標準的な認知率」を表します。この曲線式を比較することにより、CMタイプの違いによる出稿量に対する認知効率を探ることができます。
例えば、タレントタイプ別などがあります(図4)。テレビコマーシャルカルテスペシャルレポート'97−'98によると、「日本人タレント人気度A」を起用したCMの認知効率が最も良く、「子供」や「日本人モデル・一般人」を起用したCMの認知効率は悪くなっています。また、スペシャルレポート'94からは、「シリーズ性のないCM」よりも「CMのタレント・テイストを継続したシリーズCM」の方が認知効率は良いという考察もあります。(図5)。
Q3. E社広告会社テレビ担当「CM出稿前に予想される認知率を知りたい。それも独自の認知率予測モデルを作成し、プランニングにも役立てたい。」
A. よく行われる分析は、「重回帰分析によるCM認知率予測モデル作成」です。重回帰分析は、CM個別のデータさえあれば認知率を予測するのに用いたい項目を任意に選択してモデルを作成することができるので、その広告会社独自の特色あるモデルを簡単に作成することができます。そしてモデルの扱いも単純で、予測したいCMの各項目別の係数を足引していくだけで、予測認知率を求めることができます。
以下に「CM認知率予測モデルの一例」ご紹介します(図6)。このモデルは、CM認知率を「期間別出稿量」「出稿パターン」「出演タレント」「CMのクリエイティブ」「シリーズ性」「ブランド浸透度」の6つから予測するものです。予測認知率を求めるには、当該CMの「過去4週間の出稿GRP」や「出稿パターン」などを代入していきます。これはオーソドックスなモデルですので、もっと特色を出すにはCMクリエイティブに例えば「商品名呈示回数」などというものを追加してみるのも面白いかもしれません。
以上、3つの課題に対する分析事例をご覧頂きましたが、ビデオリサーチでは「テレビコマーシャルカルテスペシャルレポート」として、この様な分析事例を報告書にして発行しております(図7)。ご興味をお持ち頂いた方は、是非そちらもご覧頂きたいと思います。
<<<お知らせ>>>
今秋よりTV−CMカルテの調査回数を増やします!!
2001年度につきましては11月上旬および2002年2月上旬の2回が新たに追加されますので、是非ご利用下さい。調査スケジューソレや速報・報告書の発行予定日などは、後日改めて発表致します。
<<<テレビコマーシャルカルテ(CMカルテ)調査概要>>>
調査地域 :関東地区→束京30km圏 関西地区→京阪神12市
調査対象者 :満13〜59才の男女個人
サンプリング方法:無作為二段抽出法
調査方法 :留置調査法(調査票を対象者宅に調査員を通じて配布、対象者自身に記入を依頼、後日回収
調査標本数 :800サンプルは旨令(有効回収率は約80%)
調査対象CM数 :1回あたり約100CM
(消費者マーケティング局 調査一部 大庫 菜生、長島 英樹)