視聴率実践講座(1)〜機械式個人視聴率調査(機械)スタート、データメリットなど〜
※本記事は1997年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
機械式個人視聴率調査がスタート
'96年10月から半年にわたったデータ使用実験期間を経て、'97年4月度分のデータから、関東地区においては機械式の調査結果が、日記式に代わり個人視聴率のオフィシャルデータということになりました。「機械式の個人調査になることによって、世帯視聴率の測定の方法も変わったのでは?」という質問を最近よく耳にしますが、世帯視聴率の測定方法は従来と全く同じなのです。テレビに映った地上波放送・衛星放送・CS放送・CATV放送を、世帯視聴率の対象として機械的に測定していることに変わりないのです。(ただし、測定方法ではなく、視聴率調査をお願いしている世帯の測定対象となるテレビセットの台数が、従来は3台目までであったのが8台目までに増えました。)個人視聴率が、意識視聴を定義に、調査対象者が視聴登録の個人ボタンを押した結果としてでてくることになったのです。想起式...見た番組名に○印を付ける調査方法・日記式...局別に、見た時間帯に、5分単位で視聴の有無を調査票に記録する方法といった、今までの個人視聴率とは異なる手睦を用いた調査なのです。具体的には、調査対象者がプリセットリモコン(当社が開発した、選局、視聴登録が両方可能な機能を備えたテレビ・リモコン)を使うことにより、視聴記録がリアルタイムで記録できるようになったのです。
PMになったことによるデータメリット
さて、いずれにしても、関東地区においては、速やかに、365日分連続して個人視聴率データが存在することになったわけです。具体的には、ベルト番組以外についても個人レベルでの視聴の習慣性の分析が可能になったということが、最大の特徴でありデータメリットでもあるのです。もちろん特別番組、内容が過替わりタイプの番組についての個人視聴率が得られることになった点については、言うまでもないことでしょう。
本年度ダイジェスト「視聴率実践講座」について
機械式の個人調査方式になり、個人レベルでの視聴の習慣性の分析ができるようになったということを先程報告させていただいたわけですが、分析のテクニックについて、基本的なものからある程度の複合技に至るまで、来月以降シリーズで紹介させていただきたいと考えております。まず来月号は、前提となる視聴率分析用語の解説を含め、分析をするために必要な考え方、決めごと、そして分析結果の数値の扱い方について、つまり視聴率を量のデータと考えた場合、如何にすれば生まれ変わって質のデータとなるのかについて説明させていただきたいと考えております。用語については、テレビ局・広告会社・広告主でそれぞれに独特の視聴率に関する言葉が使われており、仕事のやりとりの中で誤解を招く一因ともなっています。標準語めいた用語を提案させていただくことになると思います。また、特に分析の結果の数値についての視聴率との違い、数値の"高低"ではなく"傾向と形"でみる意義についてもコメントさせていただく予定です。
2回目以降については、視聴率分析に加えて、昨年度のダイジェストに連載されていた番組カルテ、本年度リニュアルして発刊されたMCR(メディア環境調査)、そしてACR等のデータを並行して使用することにより、視聴者別の意識、プロフィール、シチュエーションがより明らかになるということも、合わせてお知らせしたいと考えております。また、出来得れば、昨今議論が沸騰している"視聴質"の問題について、話をわかりやすくするために、制作サイド、広告主サイドに分け、そして新聞、雑誌等で論評されている倫理的、テレビ評論家諸氏の番組に対する可き論的な視聴質と対比させながら、分析事例の中で考え方を述べさせていただければと思っております。
(本社 情報分析部 媒体分析課 加納永一)
≪ 視聴率分析の基本体系図概略 ≫
※最下段の分析手法については基本的なもののみ表示