視聴率実践講座 〜 その4 〜「平均視聴回数の計算方法」リーチ&フリークエンシー分析(2)
※本記事は1997年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
第1章 リーチ&フリークエンシー分析 つづき
D. 分析対象期間の違い
番組を分析した時に、視聴判定のレベル・視聴形態条件・データの有効無効条件の違いにより、到達率・累積到達率・平均視聴回数の数値が変わることを前号で紹介させていただきました。
A. 視聴判定のレベル
B. 視聴形態条件
C. データの有効無効条件
D. 分析対象期間の違い
そこで今回は、前号で記載できなかった項目「D」の、分析対象期間の設定の違いからくる数値の扱いについて説明します。そのため、番組分析ではなくCMキャンペーンのダミーケースを使用しての説明とさせていただきます。
2分以上の長さがある番組については視聴判定条件、3分以上の長さのある番組については視聴形態条件、2日間以上の期間に亘る番組分析についてはデータの有効無効条件の設定が必要となります。CMキャンペーンの場合には、視聴率集計の最も小さな1分単位のデータを使用することになりますので、視聴判定と視聴形態の設定が不要となり、"データの有効無効条件"と"分析対象期間"の設定のみ必要ということになります。ダミーケースについては、「視聴率調査10世帯に10本のスポットを投入した2日間以上に亘るCMキャンペーン」とし、「X」と呼ぶことにします(表1参照)。
この広告キャンペーン「X」のアクチュアル(実際)のGRPは、毎分世帯視聴率を足し上げた500%ということになります。即ち、広告の実績評価の数値です。
さて、次に時点1から10までのR&Fを算出して見ることにしましょう。リーチの母数は、期間内にローテーションの対象となる「J」が除かれるので9サンプルとなります。期間内有効サンプルの「A」〜「I」までの中で、広告キャンペーンを見たことのある世帯は8世帯ですから、
リーチは
となります。GRPは
(iは時点) (Nは標本数)
という数値となり、商取引のGRPとは違う数値となります。意味合いとしては、「アクチュアルのR&Fを算出するため、この分析期間設定における毎分時点の到達率のGRP」ということになります。
Reach × Averaged Frequency = GRP
ですから、この期間内のAveraged Frequencyは
となります。(この様に、最後に平均視聴回数を求めるのが当社の計算方法です)
次に、この広告キャンペーン「X」について、時点No.1から5までというような途中の時点におけるR&Fを集計して見ることにしましょう。すると、今回の場合「J」のサンプルについても有効と設定されるのです。リーチは、Dを除く世帯が到達していることから
ということになり、時点10までのスコア88.9%を上回る結果となってしまうのですが、どちらも数値としては正しいものなのです。
分析対象期間の設定からくる数値の違いについて、ダミースポットキャンペーン事例でご説明させていただきました。長さが1分の2日間以上に亘る複数の番組分析ということでご理解下さい。
尚、当社では、アクチュアルのGRPに対するR&Fを設定するシステムを所有しています。話が関連しますので、下記にご紹介させていただきます。
VSES (Video Research SpotCM Evaluation System)
当社では1976年に、べ−タ2項分布モデルに基づく21パターンのスポットキャンペーンモデルスケジュールのパラメータを作成し、「VSES」というシステムを開発しました。この方法は、極めて簡単な操作でモデル計算し、必要なパラメータの推定が出来、高い精度を確保出来るものでありましたが、さらに現在までのご利用の実態を考慮してこのパラメータを7パターンに集約して、「新VSES」をシステム化しております。これは、R&Fの推定計算に必要なパラメータである平均重複視聴率を推定することに特徴があります。具体的には、スポットCMの投入パターンを曜日と時間帯別の出稿割合で類型化して、7つのパターン別に平均視聴率と重複係数を用いて推定しています。(下図1参照)この図表は、実際に出稿された大量のスポットキャンペーンのデータを基に作成したシステムです。
同システムにおける事後のスポットキャンペーンのGRPについては、CM投入時点の視聴率を基に算出(足しあげ)しています。因って、"このGRPはアクチュアル"なのです。R&Fの数値については"モデルに基づく推定"ということになります。
以上、R&FとGRPのそれぞれのデータを扱うにあたっての必要な知識であることをご理解下さい。
(本社 テレビ調査部 加納永一)