若者(Z世代)はテレビ番組を見逃して後悔している!「若者のテレビ視聴」の実態を世代比較で探る
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅Z世代にテレビを見てもらうためのヒントを求めている方
✅Z世代がどのようなテレビ番組に興味を持っているか知りたい方
✅世代・年代別でテレビの利用状況やテレビへの意識などを知りたい方
はじめに X世代・Y世代・Z世代とは
昨今、マーケティングターゲットとして「Z世代」が注目されていますが、実は、それより上の世代は「X世代」「Y世代」と定義されていることはご存じでしょうか(定義には諸説あります)。「X世代」は、1965年頃〜1980年頃に生まれた層を指し、アナログな環境からデジタル社会への変化を経験している世代といえます。「Y世代」は、1981年頃〜1996年頃に生まれの層を指し、10代の頃からインターネットを利用するようになった世代といえます。そして、「Z世代」とは、1997年頃以降に生まれた層を指し、生まれたときからインターネットが身近にある、いわゆる「デジタルネイティブ」と言われて中心的にイメージされる世代といえます。
Z世代は今、テレビ番組をどのように視聴しているのでしょうか。「若者のテレビ離れ」と言われる時代の中で、X世代・Y世代と比較したZ世代のテレビ視聴の特徴について、当社のマーケティングデータ「ACR/ex」の最新データからみていきたいと思います。
※X/Y/Z世代の定義については諸説ありますが、本記事ではZ世代を「男女12-26才 中学生以上」、Y世代を「男女27-42才」、X世代を「男女43-58才」と定義しています。
1.若者(Z世代)はテレビ番組への関心度が高い
長らく「若者のテレビ離れ」と言われてきていますが、現在の若者(Z世代)は、すっかりテレビ番組への興味・関心が無くなってしまったのでしょうか?Z世代のテレビ視聴の意識を、「ACR/ex」のデータから見ていきたいと思います。
テレビへの意識を各世代で比較すると、「見たい番組がある時は、時間をやりくりする」「家族や友人とテレビ番組のことをよく話題にする」などの項目においてZ世代が最も高くなっています。つまり、実はZ世代はテレビ番組への"関心"が高い世代であることがわかります。(図1 左グラフ)
一方、「家に帰ってくると、何となくテレビのスイッチを入れてしまう」「特に見たい番組がなくてもテレビをつける」などの項目はZ世代が最も低く、上の世代になるほど高くなっています。(図1 右グラフ)
このことから、なんとなくテレビをつけるという「習慣視聴」は若年層ほど少ないことがわかります。習慣的になんとなくテレビをつけてから関心がある番組を探すというX世代に対し、Z世代(およびY世代)は、関心がある番組が無ければテレビを見ないことも比較的多い様子がうかがわれます。
出典:「ACR/ex」東京50km圏/2023年4-6月/Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
ここから推察すると、Z世代のテレビの視聴の仕方は、「習慣視聴」ではなく「目的視聴」である傾向が強いことが考えられます。Z世代は、"見たい"と思った番組はしっかり見ており、むしろ興味のある番組への関心度や熱量はY世代やX世代よりも高いようです。
2.ネット経由での番組情報発信が若者(Z世代)のテレビ視聴喚起のカギに
① 若者(Z世代)はテレビ番組を見逃して後悔している
Z世代は、テレビへの関心度が高いこともあり、「見なかった番組の話を後から聞いたりすると、見逃したことを後悔することがよくある」人がY世代、X世代に比べてやや高くなっています。(図2)
つまり、見てもらえる可能性のある番組の情報が、十分に伝わっていないというケースがZ世代はY世代、X世代よりも多いということがうかがえる結果です。言い換えれば、 "関心のある番組しか見ない"Z世代に対しては、番組情報をしっかり届けることがより一層重要になってきているといえます。
出典:「ACR/ex」東京50km圏/2023年4-6月/Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
② 若者(Z世代)はテレビ番組の情報をどこで仕入れているか?
では、Z世代はテレビ番組の情報をどこで知っているのでしょうか。テレビ・ラジオ番組の情報入手経路についての質問への回答を見ると、最も多いのは「テレビでの番宣(地上波民放テレビ)」で、次いで「ブログやSNSの書き込み」となっています。また、テレビでの番宣はY世代、X世代と比べて低くなっているのに対し、ブログやSNSはZ世代が最も高くなっています。(図3)
つまり、Z世代に対しては、通常の放送を通じた番宣に加えて、SNSなどのインターネット経由での情報発信を活用していくことが重要であるといえます。
【図3】各世代のテレビ番組/ラジオ番組の情報入手経路(Z世代TOP10)
出典:「ACR/ex」東京50km圏/2023年4-6月/Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
③ 若者(Z世代)に情報を届けるためには、どのプラットフォームで発信するべきか?
図4はインターネット経由のプラットフォーム(サービス)を毎日利用する人の割合です。やはりZ世代はY世代、X世代と比較して「YouTube」「Twitter(現X)」「Instagram」「TikTok」を利用する人が多いようです。反対に「Yahoo!JAPAN」「Facebook」などの利用は少なくなっています。
Z世代はX世代やY世代よりも、タイムラインやおすすめで"情報が流れてくる"SNSやYouTubeのようなプラットフォームの利用に特徴があるようです。このようなプラットフォームで番組情報を届けるためには、大量の情報が流れてくる中で、いかに何度も情報を目にする機会を作るかがポイントになってきそうです。
【図4】各世代の毎日利用するインターネットサービス(代表サービスを抜粋)
出典:「ACR/ex」東京50km圏/2023年4-6月/Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
3.若者(Z世代)に人気のテレビ番組ジャンルは?
ここからは、番組の内容について見ていきたいと思います。
Z世代は、どのようなジャンルのテレビ番組に関心を寄せているのでしょうか。Y世代、X世代と合わせて、「テレビ番組嗜好ジャンル」上位15位を見てみます。(図5)
各世代で「国内ドラマ」がTOP3に入る中で、Z世代の1位は「アニメ」です。最近では「SPY×FAMILY」「推しの子」など、定期的にアニメが話題になっており、納得の結果なのではないでしょうか。また、「アニメ」はY世代でも1位、X世代では4位に入っており、「アニメ映画」も各世代でTOP15入りしていることから、世代問わず人気なことがうかがえます。
【図5】各世代のテレビ番組嗜好ジャンルランキング(2023年)
出典:「ACR/ex」東京50km圏/2023年4-6月/Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
ちなみに、以前から「アニメ」は人気だったのでしょうか。過去のランキングを、同じ年齢の区切りで見てみます。現在のACR/ex調査の初回である2014年までさかのぼってみると、男女12-26才では1位が「アニメ」、男女27-42才、男女43-58才では「国内ドラマ」が1位となっており、「アニメ」は男女27-42才で6位、男女43-58才では17位という結果でした。(図6)
2014年と2023年で「アニメ」の結果を比較すると、男女27-42才・男女43-58才では10pt以上スコアが増加しており、「アニメ」が大人も楽しめる、メジャーなコンテンツになってきていることがうかがえます。世代の枠を超えて盛り上がるアニメ作品は、今後も目が離せない存在となりそうです。
【図6】各世代のテレビ番組嗜好ジャンルランキング(2014年)
「ACR/ex」東京50km圏/2014年4-6月/Z世代(n= 870)、Y世代(n= 1501)、X世代(n=1291)
4.まとめ
① Z世代のテレビ視聴は「目的視聴」。テレビ番組への関心度は実は一番高い世代。
Z世代は、見たい番組がなくても"なんとなくテレビをつける"という「習慣視聴」は多くはない。一方で、見たい番組は時間をつくって見たり、テレビ番組について話題にすることが多かったり、テレビへの関心度は最も高い世代でもある。そこには目的性の高いテレビ視聴行動が垣間見える。
② Z世代にはテレビ番組の情報をしっかり届けることが大事。
Z世代は「番組を見逃して後悔したことがある」人が多い世代。目的視聴だからこそ、情報をしっかり届けることで"見たい番組"をいかに逃さず見てもらうかが大切。そのために、番組情報を生活の中で「何度も目にしてもらう」機会をつくることがポイント。
ひと研究所の提唱する<視聴ジャーニー>の考え方のように、番組の「視聴前」「視聴中」「視聴後」それぞれの行動を把握したうえで、情報伝達の方法・タイミングを工夫したり、視聴者によるSNSでの情報拡散を狙ったりなど、番組プロモーション施策や仕掛けが、より一層重要になると考えられる。
③ Z世代に人気のテレビ番組ジャンルである「アニメ」は、今や世代を超えて人気に。
Z世代に人気のコンテンツは「アニメ」。実は、Z世代だけでなく、Y世代、X世代の「アニメ」人気も高まっている傾向がみられる。「アニメ」は、今後より一層、テレビにおいて重要なジャンルになることが予想される。
さいごに
若者(Z世代)は実はテレビ番組への興味・関心が高い傾向にあり、興味のある番組への熱量はY世代、X世代よりも高い様子が垣間見えました。今後、若者にテレビ番組を届けるには、「アニメ」などの関心度の高いコンテンツを中心に、インターネットも活用し、Z世代たちの「関心」の中により積極的に情報を投げ込んでいくことが、一層必要になっていくのではないでしょうか。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」「MCR/ex」
・調査時期:2023年4~6月(春調査回)
・対象地区:東京50km圏
・ターゲット:Z世代(n=962)、Y世代(n=1382)、X世代(n=1641)
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