全国新聞総合調査 「J-READ」調査結果データのご紹介(4)新聞広告プランニングヘの応用〜輸入車の広告媒体の選択など
※本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
新聞のメディアパワーを科学的に示す...
はじめに
『全国新聞総合調査』(データ名は『J-READ』)の結果紹介も、今回で最後となります。
当社でも例のない大規模な調査により収集されたデータは、前回までにご紹介してきた「特定紙ごとの読まれ方」や「エリア・マーケティングデータ」といった側面だけでなく、「出稿計画の立案という観点でも多いに活用できますし、それこそが当調査の大きな目的のひとつと言えるでしょう。
今回は、新聞広告のプランニングにおける和一船山』データ活用事例のいくつかを、Web
版集計システム『@J-READ』のメニューと併せてご紹介いたします。
1.市場規模を把握する
本稿では「輸入乗用車1の出稿を例として取り上げます。
そのための広告ターゲットをどう設定するかについては、いろいろな考え方があり得ますが、ここでは「輸入乗用車広告の関心者」ということにしておきます。
それでは、まず「輸入乗用車広告の関心者」の占める割合を見てみましょう。(図表1参照)
【図表1】「輸入乗用車広告」関心者比率
全国平均で該当広告に関心のある人は全体の約13%ですが、各県においてかなりの差が見られます。
ここから、例えば「奈良県は也県に比べて効率よく輸入車広告関心層をつかまえられる」という詰もできそうですが、さらに踏み込んで、「率」を「人口」に換算してみるとどうなるでしょうか。
(図表2参照)
調査結果から推定される広告関心者は、全国で推定1,192万人であり、地区別に見ると、やはり人口の多い都道府県が上位にあがってきます。
全国規模での広告展開を考えれば、ここで上位となる地区への出稿という考え方も当然成り立つでしょう。
このように、各広告ターゲットの市場規模を描けるという点も『J-READ』の特徴と言えます。
【図表2】「輸入乗用車広告」関心者の推定人口
2.広告ターゲットのプロフィールを観察する
続いて、愉入乗用車広告の関心軌はどのような特性を持っているのか?そのプロフィールを見てみます。
1)性・年代構成
図表3からも分かるように、輸入車広告関心層の約7割は男性であり、特に30〜40代のシェアが高くなっています。
また平均年齢も個人全体に比べ2歳若く、男性の働き盛りが中心となって形成されている層だと言えます。
【図表3】「輸入乗用車広告」関心者の性・年代構成(全国平均)
2)職業構成・平均個人年収
さて、職業別ではどうなっているでしょうか)(図表4参照)
これをみると、輸入末広告関心者では、勤め人の占める害恰が高く、専業主婦や学生のシェアは相対的に低くなっています。それを裏付けるように、平均個人年収も個人全称を120万円以上上回るなど、経済的に余裕のある層であることが分かります。
【図表4】「輸入乗用車広告」関心者の職業構成・平均個人年収(全国平均)
3)新聞に対する関与度
上記のような特性を持った「輸入乗用車広告の関心者」ですが、このターゲットに対するコミュニケーション手段として、新聞は適した媒体と言えるのかどうか確終しておくことも必要でしょう。
そこで、このターゲットが「情報の内容が信頼できる媒体」としてどの媒体を評価しているのかも見ておきます。(図表5参照)
ここでは、性・年代や職業別のプロフィールで明らかになった点を加味して、「輸入乗用車広告の関心軌のうち、「男性有職者」について集計しています。
もともと個人全体レベルで「信頼性」が高く評価されている新聞媒体ですが、輸入車広告に関心のある男性有職者においても、その優位性は何ら変わっていないことが分かります。
媒体自体が内包する「信頼性」の高さは、輸入乗用車という「高額」且つある種のステータス性を兼ね備えた商品の広告媒体を考える上で重要な判断材料のひとつであるはずです。
もちろん、同様の観察が他の商品種類でも、他の評価軸でも可能となっている点も『J-READ』データの特徴と言えます。
【図表5】「情報の内容が信頬できる媒体は?」(全国平均)
続いて、具体的な出稿計画(=ビークル選択)における事例を、『@J-READ』の機能と併せてご紹介します。
1)出稿紙を選択する〜Reach&Frequency MAX分析〜
特定の広告ターゲットに対して最もふさわしい新聞ビークルは、単純に考えれば「そのターゲットが最も読んでいるビークルということになります。
しかし、複数ビークルに出稿することを想定すると、「閲読者率の高い順に5紙」出稿しても各ビークルにおいて重複する閲読者が存在するため、Reach(1回以上媒体や広告に接触する割合)は思ったように伸びないというケースが考えられますこつまり、Reachをより高めるための優先順位5紙」という組み合わせが別に存在するはずです。
『Reach&Frequency MAX』は、それを見つけ出すためのメニューです。
ここでは、以下のような事例でReach MAXをおこなってみますも
● 出稿エリア 全国(47都道府県)
● ターゲット 男性有職者の輸入乗用車広告関心層
● 候補ビークル 全国の全調査対象紙・朝刊(108ビークル)
● 出稿 各紙朝刊に1回ずつ(火口霞目データを使用)
その分析結果が、図表6です。1紙目として、単独で最も閲読者率が高かった「全国紙A(東京本社版)」がまずピックアップされています。
次に、残りの107糸氏の中からどれを2紙目に選択した場合に最もReachが伸びるかを計算します。
その結果、「全国紙B(東京本社版)」がピックアップされました。以下同様に、「より少ないビークル数で、よりReachを高めるビークルの組み合わせを計算したところ、上位20紙で先のターゲットの7割をカバーできるという結果になりました。この中に全国紙だけでなく、地方紙やスポーツ紙なども含まれていることからも分かるように、全国を新聞でカバーするためにはブロック紙・地方紙などもうまく組み合わせて出稿することが重要なようです。
7大都市圏で実施している当社ACRの分析システムにも同様のメニューが搭載されていますが、地方紙も候補ビークルに含めて集計できる、すなわち全都道府県の新聞データが揃っている『J-READ』だからこそ明らかになるポイントだと言えます。
この「R&F MAX分析」は、別の角度から利用することもできます。
先ほどは、「各紙1回ずつ出稿」という前提でしたが、例えば「A新聞とB新聞の2紙に対して合計3回の出稿を計画しているが、それはどの曜日がふさわしいのか?またA・Bのどちらに2回出稿すべきか?」というようなケースを考えてみます。
この場合は、候補ビークルを「A新聞の月〜日曜までの全曜日」と「B新聞の月〜日曜日までの全曜日」、計14データを設定することにより、「1番目にはA新聞の月曜日、続いてB新聞の木曜日、3回目はB新聞の火曜日」というような結果が得られますので、同一紙への複数回出稿の際にも利用可能なメニューと言えます。
【図表6】Reach MAX分析結果(上位20紙まで)
2)調査の実測範囲を超えて到達状況を推定する〜R&F推定〜
「R&F MAX」では、連続7日間の調査データをそのまま用いますので、実態に忠実な計算結果が得られますが、反面、1ビークルあたり8回(8日)以上出稿した際の到達状況を知ることが出来ないという問題があります。
通常の新聞広告の出稿から言えば、1ビークルに同一広告素材を何度も出稿することは考えにくいでしょう。しかし、「年間何百段の出稿契約が既にあり、それを10回に分けて出稿した際の到達度合いをシミュレーションしたい」というような要望には、やはり実測データレベルだけでは応えることはできません)
そこで『@J-READ』では、実測データによる各種R&F集計を補完するために、推定用のメニューを用意しました。(推定モデルの詳細については、『VRダイジェスト2002年1月号』をご参照下さい。)
ここでは、以下のような事例を想定してみます。
● 出稿エリア 下記2紙いずれかの発行エリアに限定(全19都県)
● ターゲット 男性有職者の輸入乗用車広告関心層
● 出稿ビークル 全国紙A(東京本社版)に10回、全国紙B(東京本社版)に5回(計15回)
※広告料金を入力することで、コスト計算も可能ですが、ここでは割愛します。
推定結果は以下の通りです。(図表7参照)
先ほどの2紙・計15回の出稿で、この想定ターゲットの約6割に到達させることができ、到達者の平均閲読回数は6.7回と推定されました。
この事例では、比較として並べた「個人全体」との大きな差はありませんでしたが、ビークルや地区、場合によってはターゲットをさらに具体的に絞り込むなどの変更を加えながら複数パターンの集計をおこなうことで、立案した広告計画の有効性をチェックしていくことができます。
おわりに
・「生活者と新聞」:新聞媒体と生活者の関わり方を一般論として整理(4月号)
・「地方紙における分析事例」:特定地方紙を例にした接触データや読者特性(5月号)
・「エリアマーケティングとしてのデータ活用」:2都県間におけるインターネットユーザー比較(6月号)
【図表7】R&F推定の結果
・「新聞広告プランニングへの応用」:本号
以上、4回にわたって『全国新聞総合調査J-READ』のデータをご紹介してまいりました。
全国全域の生活者、約3万人の方々にご臨力いただいて収集した「新聞」と「日常生活全般」に関するデータベースですので、これ以外にも多種多様な切り口が考えられます。また、機会を見てご紹介したいと思います。
また、当社では既に第2回目調査但002年秋を予定)の準備に着手しており、調査項目の充実もいくつか計画しておりますので、今後とも『J-READ』にご注目いただきますよう、よろしくお願いいたしますも
※『J-READ』データ利用に関するお問い合わせは、当社営業担当者までお気軽にお問い合わせ下さい。
(第一マーケティング局メディアマーケティング部 布川英二)