「秋葉原」と「上野・御徒町」 隣りあうエリアの特性を探る 街利用者のプロフィールを活用する〜「食」「衣」「ライフスタイル」を比較
※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
これまで「SOTO」としてご提供していた屋外データも、「ACR/ex」の調査データをもとに、詳細な意識項目によるプロファイリングが可能となりました。今回は、その中の街データを用いて、街利用者の特性を描いてみようと思います。
「ACR/ex」では、街の利用も特定1週間で日記式に取得、単純な1週間リーチだけでなく、曜日ごとのリーチを出すことができます。
今回は、休日(土日いずれかで利用)の「秋葉原」と「上野・御徒町」利用者のプロフィール特性を描き、両者の違いに注目してみました。隣接するふたつのエリアにおける利用者の違いを見ることで、屋外広告の出稿に相性のいい商品カテゴリーの検討、クリエイティブの参考としてご利用いただけます。特性は以下のようなステップを踏んで描きます。
1.利用者のデモグラフィック特性
2.利用者の意識特性・趣味(「食」「衣」「ライフスタイル」の観点から)
3.利用者の商品関与
1.デモグラフィック特性
「秋葉原」「上野・御徒町」利用者は自由に使えるお金が多い
性年代構成を確認すると、いずれのエリアも男性比率が高くなっていました。「秋葉原」利用者は中でも30代男性が多く、「上野・御徒町」では50代男性が多い傾向があります。若干、「上野・御徒町」の年齢層が高く、それを反映して「秋葉原」では未婚率が高くなっています。職業勤務形態を見ると、どちらのエリアも正社員の割合が50%程度と高いです。一方で、職業構成をみると、「秋葉原」では事務職が多い一方、「上野・御徒町」では作業職の比率の高さが目立つ結果でした。経済状況を見ると、秋葉原では世帯年収が全体に比べて低めの結果になっており、貯蓄額も少なくなっていますが、1ヵ月のお小遣いは「上野・御徒町」と同程度で、一般生活者全体(男女12-69才)よりも高くなっています。
いずれのエリアも、経済状況は平均的かそれを下回るものの、自由に使える金額が全体を大きく上回っています。これは、趣味など自分に使うお金が多いという利用者像を反映する結果であるといえます。
2.意識特性・趣味
「食」「衣」 への関与に違いがくっきり
次に、それぞれの利用者の意識をみると、隣接するエリアではありますが、利用者の特性が大きく異なります【図表1】。
一般生活者全体に比べて違いが最も大きいのが食への関与でした。どちらのエリアでも食に関しては簡便志向が強い結果でしたが、「上野・御徒町」利用者はデパ地下や惣菜の利用が高く、おいしい店をよく知っているなどの外食傾向が強い一方、「秋葉原」利用者ではファーストフードやインスタント関与が高く、両者で食にかけるお金の額に差があることが考えられます。
「衣」に関しては、「上野・御徒町」利用者では高級ブランド志向が強く、このエリアでいいものを安く買いたいという嗜好性が読み取れます。そしておしゃれには自信のある人が多いようです。一方、「秋葉原」では、人の格好が気になる、店員に相談するほうが安心など、おしゃれへの自信はあまりないようです。意識項目で挙がる「高級ブランドのコート」は、店員の強い推しにより"買ってしまった"ものなのかもしれません。
「ライフスタイル」に関して興味深い点は、「秋葉原」利用者の行動と意識の違いについてです。 好きなことを追求し今の生活を楽しむためにお金を使う傾向が強いため、結果貯蓄が少ないという現象が起きている可能性が考えられます。ただ、彼らがそういったライフスタイルを完全に肯定しているのか疑問が残ります。それは「今までとは違った生きかたをしたい」の項目であり、本当にこのライフスタイルを好んでいるわけではないような、ある種のモラトリアムを感じさせる意識が浮き彫りになっています。彼らは、本当はどんなライフスタイルを望んでいるのでしょうか??
「広告」の観点では、どちらの利用者も「情報収集に熱心な方」と自己評価しており、広告関与度は高く、情報収集には熱心という結果でした。情報を受動的ではなく能動的に探す傾向が強いと思われ、嗜好性が反映される商品群に関しては関与が高いと言えます。
その他、違いの目立つところで、「趣味」をみてみます。秋葉原らしく、「コミック」「アニメ」「室内ゲーム」とともに「模型づくり」が目立って高く、この街の特徴が色濃く出る結果となっています。一方、「上野・御徒町」利用者はデモグラフィック特性の影響が出ており、旅行や温泉など、シニア要素が強い点が特徴的です。
それぞれの街利用者の「趣味」の特徴
<秋葉原>
・卓球や釣りなどのスポーツが高スコア
・スポーツ以外ではアニメやゲーム、模型に関連する趣味が目立って高い
<上野・御徒町>
・秋葉原同様、卓球や釣りが高スコア。登山は年齢層を反映する結果といえる
・スポーツ以外では温泉や食べ歩き・街歩き、旅行や美術など、万人に受けるものが中心
3.商品関与
「ACR/ex」では、商品に関してはカテゴリー別、ブランド別にその関与を取得しており、特にブランドに関しては約120カテゴリーで4500程度のブランドの認知・利用・欲求を取得しております。今回は、シンプルにその商品カテゴリーとの関わりを見るという観点から、「関心のある商品種類」のデータを用いて、各エリア利用者がどのような商品カテゴリーに関心があるのかを、消費財、耐久財、サービス財それぞれで確認しました。
結果をみると、消費財の関与には大きな差は見られず、どちらも「お菓子」などをはじめとする食品への関与が高いことが分かりました。
耐久財では、どちらもトップが「スマートフォン」 でしたが、スコアは圧倒的に「秋葉原」のほうが高い結果でした。「秋葉原」では、そこに加えて「タブレット端末」も高スコアでした。「秋葉原」に関して、「音楽・映像ソフト」の関与が高い点はそのエリア特性をよく表す結果だったと言えるでしょう。同様に「眼鏡・コンタクトレンズ」もそうであると言えます。そのエリアの特性が、商品の関与までに影響する結果です。
サービス財に関しては、「上野・御徒町」では趣味であったとおり、旅行やレジャー活動に関する関心が高いことが伺える結果でした。「秋葉原」でも同様で、趣味を反映しているであろう「書籍・雑誌」「映画・演劇などの案内」「イベント情報(コンサートなど)」への関心が高くなっています。
今回は「秋葉原」と「上野・御徒町」という、徒歩圏内で隣接するふたつのエリアの休日利用者特性を見ることで、隣りあうエリアであっても利用者の特性、意識が全く異なるという例をご紹介しました。
恐らく皆さまの肌感覚にあった結果になっていると思います。個人的に関心を持ったのは、「秋葉原」利用者が実は「今までと違った生きかたをしたい」と感じている割合が高かった点です。好きなことを追求しているという一方で、「実はもっと好きな、大事なことがあるのでは?」と自分に問いかけている苦悩する30代像が見えたような気がします。彼らが今後どのように変わっていくのか、一人のリサーチコンサルタントとして気になるところです。
今回ご紹介したデータは、「ACR/ex」のかんたんメニューにある「ターゲットプロフィールシート」を用いて、ターゲットを設定するだけで簡単に集計することができます。「ACR/ex」では、内容の拡充だけに留まらず、より操作性を向上させ皆様の作業のお時間を短縮するお手伝いもさせていただけるよう努めております。次回以降もデータや操作性の面なども含めて事例をご紹介いたします。
ターゲットプロフィールシートの出力例(関心のある商品種類)