2016年のテレビを振り返る〜「逃げ恥」がタイムシフト視聴率トップ
※本記事は2017年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。著者の所属部署は当時。
2017年の幕開けからひと月が経とうとしていますが、昨年は国内外で歴史に残る出来事がいくつも起こりました。海外からは英国のEU離脱決定(6月)、米国大統領選でのトランプ氏勝利(11月)のニュースが大きく報じられました。そして国内では、初の女性都知事に就任(7月)した小池氏に注目が集まり、天皇の生前退位の意向表明(8月)は日本中に驚きをもたらしました。一方、エンタメ業界では年始早々のSMAP解散報道&謝罪騒動に始まり、年末をもってのグループ解散へと至りました。そんな「まさか」が多発した一年を、テレビを取りまく話題、そして視聴率とともに改めて振り返ります。
はじめに2016年の高視聴率番組をおさらいしましょう【図表1】。1位はNHKの「紅白歌合戦」でした。出演歌手の世代交代が話題となりましたが、第2部が2年ぶりに40%を超えるなど今回も強さを見せつけました。「紅白」の次には、惜しまれつつ終了したフジテレビ「SMAP×SMAP」、春風亭昇太が初司会を務めた日本テレビ「笑点」と、いずれも節目を迎えた長寿番組がランクイン。さらには毎年高位の「箱根駅伝」に加えて、上位30位内には「FIFAクラブワールドカップ」「プロ野球日本シリーズ」「リオデジャネイロオリンピック」が並ぶなど、スポーツにも沸いた一年でした。
(上位30は当社のwebサイトで紹介しています)
TOPIC1 リオオリンピック
2016年のスポーツイベントでまず思い出されるのは8月の「リオデジャネイロオリンピック」です。柔道ニッポンの復活や卓球・テニス・陸上男子リレーでの大躍進、そして女子アスリートで史上初となるレスリング・伊調馨選手の大会4連覇など、今大会も数々のドラマが生まれ、日本選手団のメダル獲得数は史上最多の41個(金12、銀8、銅21)と大いに健闘しました。そんなリオ大会がどのように見られたかというと、12時間という現地との時差の影響を受け、テレビ視聴そのもの(大会平均7.7%)は前回ロンドン大会(同8.4%)に及びませんでした。しかし、民放テレビ局による「gorin.jp」やNHKのサイト・アプリの利用率がロンドン大会の2倍に伸び、こうしたサービスが時差による中継番組の見づらさを補完する役割として浸透してきていることは、昨年9月発行の本誌記事(「リオ五輪 テレビ!動画!SNS!日本人選手大活躍はどう見られた?」)でも紹介しました。2020年東京大会に向け早くも各競技に熱視線が注がれていますが、次回はぜひ自国開催による視聴率の"大爆発"と共に、テレビ以外のチャネルを通じたオリンピックコンテンツの盛り上がりにも期待したいところです。
TOPIC2 プロ野球
高視聴率を記録したスポーツとしてもうひとつ見逃せないのが、10月に行われた「プロ野球日本シリーズ」です【図表2】。2016年の流行語大賞にも選ばれた「神ってる」広島東洋カープが25年ぶりにリーグ優勝を果たし、メディアでも大きく取り上げられました。惜しくも日本一を日本ハムファイターズに譲った日本シリーズ・最終第6戦は関東地区で25.1%を記録しました。
今大会は、カープのお膝元・広島県の熱狂ぶりが特に注目されました。楽天が東日本大震災を乗り越えての初優勝を飾り、やはり地元の盛り上がりが話題となった2013年大会と比べてもその熱の入り様は明らかで、広島地区の大会平均視聴率は52.4%と過半数に達します。このように、関東地区の視聴率ランキングからだけではうかがい知れない局地的な大フィーバーをもたらしたのが2016年の日本シリーズでした【図表3】。
スポーツ中継ではさらに、年末にも高視聴率が飛び出しました。「FIFAクラブワールドカップ(FCWC)決勝」(26.8%)です。世界的スーパースターばかりを擁する強豪レアル・マドリードに鹿島アントラーズが善戦。夢のような対戦カードにワクワクしながらテレビの前に座っていた方も多いのではないでしょうか。後半7分に柴崎選手が勝ち越し点を上げると、毎分視聴率もうなぎ上りに上昇しました。直後にC.ロナウド選手によって同点に追いつかれた後も延長戦にかけて毎分視聴率は上昇傾向を続け、最高で36.8%を記録。終盤まで視聴者が鹿島の奇跡の勝利を信じていたことがうかがえます。
TOPIC3 ドラマ
続いてドラマはというと、2016年は10月クールが活況でした【図表4】。
安定した人気のテレビ朝日「ドクターX」「相棒」に、恋ダンスがテレビを超えてYouTubeでも盛り上がり社会現象となったTBS「逃げるは恥だが役に立つ」、日本テレビ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」と話題作が目白押しでした。
そんな中、NHK総合の大河ドラマ「真田丸」も過去5年間で最高の期間平均視聴率(16.6%)を記録。主役以外の登場人物にも視聴者の共感を呼ぶ魅力的なキャラクターが多く、各キャラクターの出番が終了する毎にネットでは「◯◯ロス」が度々話題に。また最終回放送後には、ちょうど裏で放送していた先述のFCWC決勝の様子を真田(赤=鹿島)と徳川(白=レアル)の戦いに重ねたツイートも続発し、これには「うまい!」と唸らされました。高齢層中心の印象を持たれがちな大河ドラマですが、「真田丸」は若者中心のSNSでも盛り上がれる作品となったようです。
タイムシフト視聴では「逃げ恥」が。
さて、初回から一度も視聴率を下げずに推移し一大ブームとなった「逃げ恥」。ここで、気になる『タイムシフト視聴率』、リアルタイムとタイムシフトのいずれかでの視聴を示す『総合視聴率』を紹介します(P8参照)。リアルタイム視聴だけの数値である視聴率では「ドクターX」(期間平均21.5%)に及ばなかった「逃げ恥」(同14.6%)ですが、『総合視聴率』では最終回が33.1%をマークし、「ドクターX」の最終回(32.0%)を上回りました。また、『タイムシフト視聴率』も全ての回で「ドクターX」より高く、録画してでも追いつきたいという話題性の高さを物語っています。このように、タイムシフト視聴率・総合視聴率の動向もあわせて押さえることで、番組ごとの見られ方の違いをさらに立体的にとらえることができます。
TOPIC4 SMAP×SMAP
最後にバラエティからは、冒頭でも紹介した2016年ベストの中でも特に昨年を象徴する番組、フジテレビ「SMAP×SMAP」について触れたいと思います。1996年4月15日の放送開始から実に20年間・953回にわたって放送されてきましたが、2016年12月26日をもってその歴史に幕を閉じました。2016年を振り返ると、1月初旬の解散報道に始まり、8月の正式解散発表を経て、年末のグループ解散を迎えるまで、メンバー全員が集う場として常に注目されてきたのが「SMAP×SMAP」でした。今一度、日本のエンタメ界をつねにリードしてきた国民的アイドルの代表番組の足跡を視聴率とともに振り返ってみます【図表5】。
記念すべき初回放送の視聴率は22.4%。ちなみに同じ日の前枠の「月9」では木村拓哉主演の大ヒットドラマ「ロングバケーション」がスタートしています。全放送回で最も高い視聴率を記録したのは2002年1月14日の34.2%で、稲垣吾郎が7ヵ月ぶりに番組復帰し5人が生放送に臨んだ回でした。そして、昨年「紅白」に次ぐ高視聴率(31.2%)を獲得した2016年1月18日は、年初の解散報道を受けメンバーによる謝罪メッセージが放送された回で、番組歴代4位を記録しました。12月26日に放送された最終回は23.1%(第3部)で、番組史上最長となる288分の拡大版で幕を下ろしました。
メンバーの手料理を食べたような気分になれるBISTRO SMAPや大物芸能人とコラボしたパフォーマンスなど、「SMAP×SMAP」ならではの企画をもう見ることができないと思うと寂しい限りですが、元メンバー一人ひとりがこれからも日本のテレビ界を牽引し活躍し続けてくれることを期待しています。
さいごに
いかがでしたでしょうか。こうして2016年のテレビを取りまく話題を振り返ってみると、テレビコンテンツがSNS上でも話題になったり、逆にネット上での盛り上がりをきっかけにテレビ視聴につながったり、タイムシフトやWeb動画配信などテレビコンテンツが多様な見られ方をするといったことが、すっかり当たり前の世の中になっているのだと実感します。さらには、民放公式テレビポータル『TVer』や『Hulu』『Netflix』といったVODサービスの普及が進んだのに加え、インターネットテレビ『AbemaTV』が4月の開局から半年余りの間に視聴アプリのダウンロード数を飛躍的に伸ばしたのも2016年のことでした。今年、こうした動きがさらに加速する1年となることは間違いなさそうです。動画コンテンツの拡がりは、しばしばテレビ視聴を目減りさせるものだと指摘されますが、これは裏を返せばテレビコンテンツに触れる機会の拡がりでもあります。こうして振り返ることで、1年を盛り上げたといえるスポーツ、エンタメコンテンツが"テレビをハブに"拡散しているということを改めて感じました。
2017年は、テレビから一体どんな話題が生まれるでしょうか。人々の背中を押してくれるような、明るい話題が尽きないことを祈ってやみません。
関東地区タイムシフト視聴動向
2016年10月より関東地区における視聴率調査世帯数を拡張し、900世帯でのタイムシフト視聴の測定も開始しました。今回、2016年10月クール(10/3〜1/1)のタイムシフト視聴率、総合視聴率上位30番組を紹介します。